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隣地との間の塀はどちらのものか、境界線は塀のどこか?
隣地との間の塀はどちらのものか、境界線は塀のどこか?
不動産の売買では、売主は買主から塀の所有権について聞かれる可能性もあります。塀は、隣接地所有者との関係で共有なのか、どちらかの所有となっているのか確認しておく必要があります。塀はあっても古く汚れている場合は、買主がきれいなものに塀を建て替えたい場合もあります。また、所有権については、時間が経ち土地の所有者が変わり分からなくなっている場合もあります。さらに、新たに塀を設置する場合はどうするのか、すでに塀やフェンスが設置されている場合で建て替えたい時はどうするか、塀は境界線の位置との関係でどの場所にするのか、費用はどちらが負担するかなどについて紹介します。
目次
1. 新たに塀やフェンスを設置する場合
(1) 境界上に塀を設置する場合
(2) 自分の敷地内に塀を設置する場合
2. 既に設置されている塀やフェンスがある場合
(1) 塀の所有者の確認
(2) 既に設置されている塀があるものの、新しく塀を設置したい場合の対応
まとめ
1.新たに塀やフェンスを設置する場合
塀やフェンスと隣地境界線に関するルールがあります。
これから新たに塀やフェンスを設置する場合には、以下のルールを守る必要があります。
(1) 境界上に塀を設置する場合
隣接地との間に空き地がある場合、所有者はそれぞれ他の所有者と費用を分担して、境界に塀、フェンス、ブロック塀などを設けることができるとされています(民法第225条1項)。
ただし、一方の所有者の独断で設置できるということではなく、隣接地の所有者と話し合って設置するのが基本となります。
隣接地の所有者との話し合いがまとまらない場合には、板塀、竹垣その他これらと似た材料のもので、高さ2メートル以内のものであれば、設けることができるとされています(民法第225条2項)。この場合、隣接地の所有者が塀の設置に反対している場合でも、設置することは可能です。
塀の所有権は、費用を負担した者が持ちます。共同で負担した場合は、共有になります。
どちらが負担したか分からなくなってしまった場合も共有になります。
*民法 第229条 (境界標等の共有の推定)
「境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。」
塀の修理費や取壊しの費用は、塀の所有者が負担することになります。
(2) 自分の敷地内に塀を設置する場合
自分の敷地内に塀を設置することは自由です。高さについても2メートルという制限はありません。
自分の敷地内に塀を設置する場合には、塀の所有者は自分自身ということになり、塀の修理費用や取壊し費用は自分自身で負担することになります。
2.既に設置されている塀やフェンスがある場合
(1) 塀の所有者の確認
既に塀が設置されている塀がある場合、まず確認しなければならないのは、その塀の所有者は誰かということです。
まず境界の確認では、隣接地との間に境界標があるかどうかの確認が必要です。ある場合は境界標の位置が塀の中心にあるか塀のどちらかの側になるかを確認します。境界標が塀の中心にある場合、境界は塀の中心の位置で、塀も共有になっている可能性が高いと推定されます。自分から見て塀の外側(隣接地側)に境界標がある場合は、自分の敷地に塀が建てられているわけですから、塀の所有権は自分で、費用も自分の側が負担したと考えられます。
境界標の位置が塀からずれている場合や境界標が見当たらない場合は、法務局にある地積測量図で確認する必要があります。地積測量図での確認や境界標が失われている場合は第3者の専門家である土地家屋調査士に立ち会ってもらい、確認と境界標の復元を依頼することが適切です。
(2) 既に設置されている塀があるものの、新しく塀を設置したい場合の対応
既に設置されている塀があるものの新しく塀を設置したい場合には、次の方法があります。
➀古い塀を壊して新しい塀を設置する場合
既にある塀を壊して新しい塀を設置する場合に特に問題となるのは、一方が建て替えに反対している場合はどうなるのか、誰の負担で取り壊し、新しい塀を立てるのかという点です。
a. 一方が建て替えに反対している場合
境界上にあっても、自分が所有している塀であれば、自分の費用負担で自由に取り壊すことができますが、共有であれば、隣接地所有者は塀に対する所有権を持っているので、同意なしに取壊しはできません。
b. 共有する塀の取り壊しについてお互いに同意している場合
費用は、基本的に折半することになります。
ただ、費用の負担割合は話し合いで自由に変更できますので、相手方が費用負担を嫌って取り壊しに同意しない場合は、相手の費用負担割合を少なくしたり、場合によっては費用負担を求めない場合もあるでしょう。
②既にある塀はそのままにして、新たに塀を設置する場合
既にある境界塀はそのままにしておいて、新たに自分の敷地内に塀を設置する場合は、自分の敷地内に塀を設置する場合と同様です。
最近では、塀やフェンスを設置するときには、設置場所についても自己所有土地の内側になるように設計し全額自己負担で行うことが多くなっています。撤去をするときにも自己の意思のみで撤去することができるためです。
③既にある隣接地所有者の塀が自分の敷地にはみ出している場合
共有の塀ではなく、隣接地所有者の所有物である塀がこちらの敷地にはみ出している場合には、放置すれば、その部分の土地を隣接地所有者に時効取得されてしまうおそれがあります。時効取得までの期間は、塀の設置時に相手方がはみ出していることを知っていたかどうかによって変わります。
対処法として最も望ましいのは、塀を取り壊して建てなおすことです。
取壊し費用は、隣接地所有者の負担であることを前提に交渉します。費用負担の交渉がまとまらない場合は、塀がはみ出していること、正しい隣地境界線の位置の確認の文書を取り交わし、自分で費用を負担して塀を取り壊すなどの対応を検討します。
まとめ
・隣接地との間に空き地がある場合、所有者はそれぞれ、他の所有者と費用を分担して、境界に塀、フェンス、ブロック塀などを設けることができるとされています(民法第225条1項)。
・塀の所有権は、費用を負担した者が持ちます。共同で負担した場合は、共有になります。
どちらが負担したか分からなくなってしまった場合も共有になります。