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今後の住宅ローン金利はどうなるのか?
今後の住宅ローン金利はどうなるのか?
低金利が続いていますが、欧米ではインフレ対策から金利のアップが行われたり検討されています。金利は景気や物価、為替レート、海外金利などさまざまな要因で変動しますが、現時点の日本においては、住宅ローンの金利の動向を決定する上では、中央銀行である日銀の金融政策があります。そのため日銀の金利政策と住宅ローン金利の関連性を理解することが大切です。売主としては、金利が低ければ買い手の融資が付きやすく、物件の売却がしやすいため、住宅ローンの金利がどのような仕組みで決まるのか、また、今後住宅ローン金利が上がるのかなどについて説明します。
目次
1. 住宅ローン金利には変動と固定の2種類がある。
(1) 変動金利とは?
(2) 固定金利とは?
2. 金融機関が定める「基準金利」、「金利の優遇幅」
(1) 基準金利と借入金利の関係
(2) 各銀行の金利の優遇幅
3. 日銀の政策金利(短期金利)は上がるのか?
4. 債券金利(長期金利)は上がるのか?
5. 借入金利の優遇幅は続くのか?
6. 米国のインフレ懸念で金利が上昇すれば日本の金利にも影響するのか?
まとめ
1.住宅ローン金利には変動と固定の2種類がある。
住宅ローンの金利は大きく分けて変動金利と固定金利の2種類に分けられます。
(1) 変動金利とは?
変動金利とは、一定期間ごとに適用金利が見直され、借入期間中に金利が変動するタイプのものです。一般的には金利タイプの中では金利が一番低く設定されています。
変動金利型で住宅ローンに適用される金利は、通常半年ごとに見直されていますが、見直された結果が毎月の返済額にすぐに影響するわけでありません。ここでは、変動金利独特の2つのルールについて解説します。
①5年ルール
5年ルールとは、半年ごとの金利の見直しごとに返済額が変わるわけではなく、一般的には返済額の変更は5年ごとに行われます。返済額の見直しから5年間は、例え適用金利が上がったとしても月々の返済額は変動しないというものです。5年に1度の更新であれば、返済額アップに対する猶予が生まれます。
②125%ルール
125%ルールとは、見直し後の返済額は、見直し前の返済額の125%を上限とし、例え、大きな金利上昇があったとしても、見直し後の返済額については見直し前の25%までしか上がらないというものです。
③変動金利のメリット
a. 変動金利の最大のメリットは、金利タイプの中で一番金利が低いということ
b. 仮に金利が見直されたとしても、5年ルールや125%ルールが適用されることで、毎月の返済額にすぐ反映されないこと
④変動金利のデメリット
a. 金利が変動することによって将来の返済計画が立てにくいということ
b. 金利が上昇する局面が続いた場合は、最終的に返済額の負担も大きくなり、当初予定していた額よりも利息支払分と総返済額が大きくなってしまうということ
⑤変動金利に向いた人
a. 夫婦共働きで余裕資金がある場合
金利の変化に対応できる余裕資金がある家庭であれば変動金利に向いています。余裕資金があれば、万一金利が上昇しても返済額が変わる前に余裕資金で繰上げ返済できれば、借入額を減らすことができ金利の上昇にも対応できます。
b. 借入額がわずかであれば、金利上昇で受ける影響は少ない。
(2) 固定金利とは?
固定金利とは、ローンを借り入れた時からあらかじめ決められた期間において、借入当初の金利が固定され続くタイプのものです。
固定金利選択型であれば契約時に3年、5年、10年などといった固定金利期間を選びます。例えば当初固定金利10年で毎月の返済額が10万円だった場合、10年間は金利が固定されているので返済額は10万円のまま変わりません。最初に定めた固定金利期間が終わったら次の金利タイプを選択します。引き続き固定金利を選択することも可能です。
全期間固定金利型の商品として代表的なものに、住宅金融支援機構が提供している「フラット35」があります。「フラット35」は多くの金融機関でも取り扱っており、借入期間は最長で35年です。そして、一般的に全期間固定金利型は、他の金利プランと比べて金利が高い傾向にあります。
①「全期間固定金利型」と「固定金利期間選択型」
全期間固定金利型以外にも、固定金利期間選択型というものがあります。固定金利期間選択型とは、選択した一定期間の金利が固定されるタイプで、3年固定、5年固定、10年固定などがあります。そして固定期間が終了すると、変動金利に移行するタイプが一般的ですが、中には固定期間を再度設定することができるものもあります。適用される金利は全期間固定型よりは低いものの、選択した固定期間が長ければ長いほど高くなることが特徴です。
②固定金利のメリット
a. 金利が固定されている安心感があること
b. 返済額が変わらないので収支計画が立てやすいこと
返済額が借入当初から完済まで一定なので、将来にわたって返済計画が立てやすいことです。例え、返済期間中に市場金利が上昇したとしても、影響を受けることはありません。
③固定金利のデメリット
a. 変動金利より金利が高めに設定されていること
固定金利のデメリットは、低金利時代の恩恵を十分に受けることができないことでしょう。今後、今よりもさらに金利が低くなったとしても、借入当初の金利のままで返済を続けていかなければなりません。
b. 今後低金利で推移すれば変動金利より返済額は多めになること
④固定金利に向いた人
今後10年間、教育費が大きくかかる人などは、教育費は想定以上にかかるケースが多く見受けられ、公立・国立と私立では大きく異なる場合があります。支出に変動性がある場合は固定金利型や中でも「固定金利期間選択型」が向いています。大学進学中は金利が固定されているので金利の上昇の不安もなく収支計画が立てやすいためです。
2.金融機関が定める「基準金利」、「金利の優遇幅」
一般的な住宅ローンの場合、住宅ローンの利用者が実際に借りる時に適用される「借入金利」は、各金融機関が定める「基準金利」から、同じく各金融機関が定める「金利の優遇幅」を引いた金利です。
大半の銀行では、公式サイトなどで、基準金利と金利の優遇幅、借入金利を掲載していますので、それぞれの関係性を確認しておきます。
まず、住宅ローンの今後の金利を予想するには、借入金利を決定する基準金利と金利の優遇幅が何に影響を受けているのかを理解しておきます。
(1) 基準金利と借入金利の関係
①変動金利の基準金利
一般的に変動金利の基準金利は、日銀の政策金利の影響を受けます。日本は1999年に実施されたゼロ金利政策以降、政策金利はほぼゼロの状態が続いているので、変動金利の基準金利は、長期に渡り低い水準で安定しています。
変動金利は、借り入れ時に決定した優遇幅が完済するまで適用されます。今後日銀が政策金利を引き上げた場合、基準金利が上昇し、借入金利も上がる可能性があります。
②固定金利の基準金利
一般的に固定金利の基準金利は、債券市場の金利に影響を受けるといわれています。したがって、日銀が決定する政策金利とは異なり、市場活動によって自然と決まってくるものと認識されています。しかし、実態としては、市場原理に任されてばかりいるわけではなく、日銀の国債買い入れ政策行動が、債券金利の調整につながるとも考えられます。
なお、完済までの金利が最初に確定する固定金利は、借りた後に基準金利が上がっても、返済期間の途中から借入金利が上がることはありません。
(2) 各銀行の金利の優遇幅
上記の基準金利に関しては、政策金利や債券金利の影響を受けるため、銀行が自由に決定することはできません。しかし、基準金利からどれだけ金利を引き下げるかという「優遇幅」は、銀行が独自で決めることができます。各銀行は、銀行同士の競争原理が働いて顧客獲得のため優遇幅を高めて借入金利を引き下げてきました。
3.日銀の政策金利(短期金利)は上がるのか?
住宅ローンの金利を決定づける日銀の金融政策ですが、日銀が決定している政策金利は、今後、上がるのでしょうか。
それを考えるには政策金利の動向を見ていく必要があります。
政策金利とは、民間の金融機関の預金金利や貸出金利を日銀が誘導する金利のことです。この金利が、間接的に民間銀行の預金金利や貸出金利に影響を与えています。
普通預金金利がほぼゼロに近いことや、住宅ローンの金利の基準金利が低位で安定しているのは、政策金利がほぼゼロ状態の状況が続いていることが影響しているというわけです。
日銀は2013年1月から消費者物価の前年比上昇率2%という物価安定目標を定め、その目標を達成するために、2016年から政策金利をマイナスにする、マイナス金利政策を開始しました。
日銀の政策は、「金利を下げると企業や消費者がお金を借りやすくなるため経済の動きが活発化し物価が上がる」、というロジックに基づいていますので、物価上昇率前年比2%の目標を達成できるまでは、政策金利を大きく引き上げる可能性は少ないと考えることができます。
現状では総務省統計局発表の消費者物価指数は、コロナ前を含めても前年比上昇率2%には届いていません。
4.債券金利(長期金利)は上がるのか?
長期金利が上がると住宅ローンの固定金利が上がってしまいます。実は、2021年に入ってから固定金利型の住宅ローンである「フラット35」の借入金利は上昇しています。金利の上昇はフラット35だけではありません。いくつもの金融機関の固定金利も上昇しています。
ただし、日銀による国債の金利が上がらないよう抑え込みもありますので今後は流動的です。
5.借入金利の優遇幅は続くのか?
1999年のゼロ金利政策以降の約20年間、変動金利の基準金利は下げ止まっているのに、各銀行の借入金利が下がり続けていたのは、優遇幅が広がってきたと考えられます。
銀行同士の競争原理が働いている点で一定の優遇幅は続く可能性があります。しかし、金利の絶対値がゼロ%に近づいているので、さらなる金利の引き下げは大きくは期待できないのではないでしょうか。
6.米国のインフレ懸念で金利が上昇すれば日本の金利にも影響するのか?
米国では景気回復や財政出動に伴うインフレ懸念が広がり、長期金利が上昇しやすい状態です。米国の消費者物価上昇率は高水準になっており、コロナを経て経済活動の再開に伴う在庫不足や人手不足でインフレ圧力が強まっている現状が浮き彫りになっています。ヨーロッパでも同様にインフレ傾向は強まっています。日本ではコロナによる経済活動の停滞が長引くとの見方が多く、長期金利が反転上昇する動きは今のところ見られません。
ただし、米国で金利が上昇すればやがて日本の長期金利も影響を受けることも予想されます。
まとめ
・住宅ローンの金利は大きく分けて変動金利と固定金利の2種類に分けられます。
・変動金利とは、一定期間ごとに適用金利が見直され、借入期間中に金利が変動するタイプのものです。
・固定金利とは、ローンを借り入れた時からあらかじめ決められた期間において借入当初の金利が固定され続くタイプのものです。
・一般的な住宅ローンの場合、住宅ローンの利用者が実際に借りる時の適用される「借入金利」は、各金融機関が定める「基準金利」から、同じく、各金融機関が定める「金利の優遇幅」を引いた金利です。
・変動金利の基準金利は日銀の政策金利の影響を受けます。日銀の低金利政策により金利は、長期に渡り低い水準で安定しています。
・日銀は消費者物価の前年比上昇率2%という物価安定目標を定め、政策金利をマイナスにするマイナス金利政策を開始しているため短期的には低金利政策は続くと考えられます。
・ただし、海外ではアメリカ、ヨーロッパでのインフレ影響から金利の上昇の流れがあります。