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抵当権の内容、優先順位、末梢登記など
抵当権の内容、優先順位、末梢登記など
不動産においては融資を受ける場合が多く、その場合には金融機関が抵当権を設定します。
不動産の売買においては抵当権のついた不動産ついての理解が必要です。抵当権とは法的にはどのようなものか、抵当権が設定された物件で債務が返済されない場合はどうなるのか、抵当権の実行や、抵当権の順位、抵当権の抹消などにつき説明します。
目次
1. 抵当権について
(1) 抵当権とは
(2) 担保と弁済とは
(3) 抵当権者と抵当権設定者とは
2. 質権と抵当権との違い
3. 抵当権の実行について
(1) 抵当権の実行とは
(2) 抵当権設定登記
4. 優先弁済と抵当権の順位
5. 根抵当権とは
6. 抵当権の抹消
まとめ
1.抵当権について
(1) 抵当権とは
抵当権とは、住宅ローンなどでお金を借りた人(債務者)が返済できなくなった場合(債務不履行)に、債権者が担保とした土地や建物をもって弁済を受ける権利のことです。
抵当権を設定した不動産については、返済のためにその不動産が競売などにかけられた場合、抵当権者は他の債権者に優先して弁済が受けられます。
(2) 担保と弁済とは
➀担保とは
担保とは、債務不履行の際に、債務の弁済を確保する手段として、あらかじめ債権者に提供しておくものという意味です。
担保には、抵当権などの「物的担保」と、保証人などの「人的担保」があります。
人的担保における保証人は、借りた本人の返済を保証する役割を果たし、本人が返済しない場合は、代わって返済しなければなりません。
不動産の場合は債権回収をより確実にするために、物的担保として該当の不動産を担保にします。
②弁済とは
弁済とは、債務(代金の支払いや不動産の提供義務)を履行して、債権(代金や不動産を受け取る権利)を消滅させるという意味の法律用語です。
(3) 抵当権者と抵当権設定者とは
抵当権をつけた者を抵当権者(お金を貸した側、債権者)、所有している不動産を担保に入れた者を抵当権設定者(お金を借りた側、債務者)といいます。
2.質権と抵当権との違い
抵当権と質権は非常によく似た性質を持っており、担保物権としての一般的な性質である「付従性」「不可分性」「随伴性」「物上代位性」も共通してもっています。
質権と抵当権の大きな違いは、債権者が目的物を占有するか否か、つまり債権の弁済を受けるまで目的物を預かっておくか否かです。
質権の場合は、契約時にその対象物を債権者に引き渡さなければ契約が成立せず、債権が弁済されるまで債権者がこれを預かり占有するものです。
抵当権の場合には、債権者は目的物の引き渡しを受けることはなく、債務者、あるいは目的物を提供する物上保証人が、設定契約後も引き続き占有し、使い続けることができるものです。
また、抵当権は、一つの不動産の上に複数設定することができ、優先順位はその登記の順番によって決まります。
不動産には、質権を設定することも、抵当権を設定することもできますが、実際には、権利を設定した後でも引き続きその不動産を利用することができる点で抵当権の方が、設定者に好都合であり、かつ、債権者にとっても、その不動産を管理しておく必要がない点で好都合と言えます。
3.抵当権の実行について
(1) 抵当権の実行とは
抵当権が設定された物件では、借金(債務)が返済されない場合は、裁判所に申し立てて不動産を競売にかけ売却し、その代金から抵当権者は他の債権者に優先して弁済を受けます。このことを「抵当権の実行」といいます。
(2) 抵当権設定登記
抵当権者は、抵当権設定登記をし、一般債権者(抵当権や根抵当権などの担保権を持たない債権者)と自己の抵当権に後れる担保権者(担保権を持っている債権者)に対して、優先的に弁済を受けることができます。
破産などの法的手続が開始された場合、抵当権や根抵当権を持たない無担保の債権者(一般債権者)はすべて平等に扱われ、債権額にもとづく按分(比例配分)による弁済を受けます。このことを「債権者平等の原則」といいます。
競売で強制売却しても、貸したお金をそのまま回収できることは少ないため、按分による弁済額は、本来の債権額より少なくなって債権者は損害を受けます。そこで、より有効な弁済を受けるためには、抵当権などの担保権を設定して、優先的に弁済を受ける権利を確保する必要があります。
4.優先弁済と抵当権の順位
優先弁済は次の2つの意味を持っています。
➀債権者平等の原則と異なる権利
担保権を持つ債権者が、債権者平等の原則を破って、一般債権者より優先的に弁済を受けることです。
一般債権者は、担保権者が回収した残りを平等に按分しますが、抵当権だけで回収した債権がなくなった場合は、全く弁済を受けることができません。
②抵当権の優先順位
自己の抵当権に劣後する抵当権者に対して優先的に弁済を受けることです。
抵当権の優先関係は登記の順位で決まります。1番抵当権者(先順位抵当権者)は2番抵当権者(後順位抵当権者)に優先し、2番抵当権者(先順位抵当権者)は3番抵当権者(後順位抵当権者)に優先して弁済を受けます。
先順位抵当権者だけで回収した債権がなくなった場合、後順位抵当権者は全く弁済を受けることができません。
5.根抵当権とは
抵当権とは別に、根抵当権と呼ばれるものもあります。
根抵当権は、不動産の担保としての価値を計算し、「極度額」と呼ばれる貸し出せる上限額の範囲内で、何度でもお金の貸し借りができる抵当権の種類のことを言います。
抵当権との大きな違いは、
・根抵当権、多くの場合、企業が融資を受けた場合や、企業が所有する不動産に設定される。
・根抵当権の借入額は、極度額内であれば何度でも借り入れできる。
・根抵当権は、当事者の合意がないかぎり消滅しない。
などです。
6.抵当権の抹消
抵当権は自動的に抹消されるものではありません。そのため、住宅ローンをすべて完済した段階で抵当権抹消の手続きを行わなければなりません。
不動産を売却する際には、抵当権を抹消していないと現実的にはできません。また、新たに住宅ローンの借り入れるときや借り換えをするときにも、抵当権が設定されたままだと、審査に通らないことがあります。
抵当権を抹消する方法では次のようなものがあります。
➀売主が全額返済し抵当権を抹消する。
売主が手持ち資金でローンを全額返済し、抵当権抹消手続きをします。
②抵当権の抹消と所有権の移転登記を同時に行う。
買主が代金を全額支払い、売主がローン返済し抵当権抹消手続きを行うことと、売主から買主へ不動産の所有権移転登記を行うことを同時に行うことです。
③売主が全額返済できない場合には、売主が不足分を別途用意し支払うか、別の物件を担保にするなどをして行う。
買主が支払う代金をローンにあててもなお売主が全額返済できない場合には、売主が不足分を別途用意し支払うか、他の物件に担保を設定するなどにより、金融機関の了解を得られることもあります。
まとめ