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不動産売却の時期はいつが良いのか?
不動産売却の時期はいつが良いのか?
不動産も金融と同様に市況や金利などの動向に左右されます。また、金融とは異なる不動産特有の要素もあります。しかし、基本的には投資家でない以上、売却の必要性は個人の事情によるものでしょう。また、対象の物件も住宅中心でしょう。では、個人向けの住宅を中心とした不動産を売却する場合に、時期はいつが良いのかについてですが、市況やローン金利、税制の優遇措置などの変動により市場環境が大きく変わる場合もあり損得が発生します。知っておくべきこれらの要因を6つに分け説明します。
目次
1.市況、不動産の相場による時期の判断
(1) 市況
(2) 不動産の相場
2.物件の動きやすい季節
3.建築物の築年数による時期の判断
4.住宅ローン金利による時期の判断
5.税制の優遇措置による時期の判断
6.個人の事情による時期
まとめ
1.市況、相場による時期の判断
(1) 市況
市況では、好景気の時には不動産価格も上昇する傾向があり、不景気の時には不動産価格も下落する傾向が生まれます。好景気であれば不動産においても市場の流通は活発化します。現在はコロナ禍で短期的な影響はありますが、ワクチンの普及や有効な治療法が生まれれば市況に反映します。過去大幅に下落したのは2008年に起こったリーマンショック以降数年間などがあり、不動産に限らずすべての商品で売却は困難な時期がありました。
いずれにしても好景気であれば売却には良く、不動産であれば金融のような大きな変動は少ないので不景気でなければ売却には適した時期です。
また、不動産についての市場性では、コロナによるリモートワークの普及により住宅では郊外物件への関心が高まるなどの変化も生まれています。
(2) 不動産の相場
不動産価格のデータでは、国土交通省が発表している不動産取引価格指数というものがあります。また、公的な公示価格や路線価なども参考になります。
不動産を売る時期についての相場の点では次のような点があります。
・相場が右肩上がりか
相場が右肩上がりではより価格が上がる時まで待つ方法があります。どこまで上がるか、いつまで上がるかの判断は難しいですが、株式ではないので大まかな流れでつかみます。
・相場が右肩下がりか
相場が右肩下がりなら早く売ったほうが良いです。
・相場が横ばいか
相場が横ばいならいつ売っても同じで売る時と言えます。右肩上がりであったのが横ばいになれば売る時と言えます。
これらを参考にして自分自身の物件の売るのに良い時期は、買ったときより相場が上がっていれば売り時です。
2.物件の動きやすい季節
住宅物件では異動の影響で季節の時期の影響があります。
家の売却の成約件数が増える時期は3月です。4月からの転勤や進学に合わせて引っ越しする人が多いためです。4月直前の2月、3月は住み替え需要が大きくなるので、好条件で売却しやすくなります。
家の購入希望者が増える3月のタイミングを逃さないためには、遅くとも前年の12月末までには売却することを決めて不動産業者を探し、年明け早々の1月から売却をスタートし2月〜3月での成約を目指します。
3.建築物の築年数による時期の判断
建築物の市場価値は、当然古くなり築年数が増えるほど減少します。特に戸建て住宅とマンションでは戸建て住宅の築年数の評価は厳しく下落率が大きくなります。
(1) 戸建て住宅
戸建住宅では、築5年で資産価値約7割、築10年で約5割、築15年で約3割まで下落していき、その後は約2割から1割となり横ばいとなります。築15年までの戸建をできるだけ高値で売却するためには、とにかく早く売るのが良く、逆に、築20年以降になれば木造建築の一戸建ては、耐用年数が22年と定められているため、評価は極めて低くなり、売る時期は重要ではなくなり、むしろ、更地の方が売りやすくなる場合が多くあります。
(2) マンション
戸建てに比較してマンション相場の下落は築年数に比例して比較的緩やかです。
特に、築5年以内であれば新築同様の物件として流通性が高い特徴があります。
一般的には資産価値は、築10年で約8割ですが、築15年以後は設備の劣化で補修工事の必要性が出てきます。その後築20年で約4割程度となります。
検討要素としては、マンション管理組合の積立金の状況なども大規模な修繕工事が必要となる場合は重要な要素となります。築15年以降では大規模修繕工事が済んでいるかどうかが評価の対象となります。大規模修繕工事が済んでいれば価格評価は高くなります。
4.住宅ローン金利による時期の判断
買主から見れば、住宅ローンの金利が低ければ低いほど利息が少なくなり、総返済額を抑えることができるため、低金利なほどお得で結果的に売主にとっても家が売りやすくなります。
現在の住宅ローンの状況は、「超低金利時代」といわれるほど金利が低い状態が続いており当面日銀の低金利政策は変わりそうにもありません。そのため、買主にとっては買い時で、売主にとっても売り時です。
ただし注意点として、金利が低いメリットは大きいのですが、コロナの影響もあり景気も良くない面もあり、業界によっては収入が落ちているので購買意欲も高くない場合があります。
5.税制の優遇措置による時期の判断
住宅を売る時期として考慮しなければならないのは、税制の優遇措置が利用できるかどうかです。税金の金額は大きいため重要な要素です。知っておかなければならない不動産の売却の時期に関する税制の優遇措置には次のようなものがあります。
(1) 譲渡所得の3000万円特別控除
3,000万円の特別控除とは、居住用の自宅を売ったときに、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から3,000万円まで控除ができる特例です。譲渡所得とは、自宅を買った費用より売った金額が多かった場合の差額です。
金額が大きいだけに所得税と住民税の税金を大幅に減らせます。譲渡所得が3,000万円以下であれば譲渡所得に課税されません。
3,000万円の特別控除を利用するためには、居住中の家を売るのであれば期限はありません。空き家を売るのであれば、空き家になって3年が経過する年の12月31日までに売る必要があります。
適用要件としては、自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ることなどです。
(2) 長期所有の譲渡所得税・住民税優遇
家を売ると譲渡所得に応じて所得税と住民税が課税されます。
譲渡所得に掛ける所得税と住民税の税率は、家の所有期間が5年を超えるか、5年以下かによって異なりますので注意が必要です。
家を売った年の1月1日現在でその家の所有期間が5年を超える場合は「長期所有」、5年以下の場合は「短期所有」になります。
つまり所有して5年以下の家を売ると、5年を超えて売る場合に比較して、所得税・住民税がおよそ倍になります。
所得税の計算は、譲渡所得に対して税率をかけて算出されます。課税譲渡所得金額の計算方法は、
課税譲渡所得金額=譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額
となります。
重要な点は不動産の所有期間によって課される税率が異なることです。
①長期所有
長期所有とは所有期間が5年超しの場合で、所得税率は15.315%(復興特別所得税2.1%含む)、住民税率は5%です。
②短期所有
短期所有とは所有期間が5年以下の場合で所得税率は30.63%(復興特別所得税2.1%含む)、住民税率は9%です。
上記から短期所有の不動産の所得税率に比べて長期所有の所得税率は半分で大きく異なり、
所得税、住民税を少しでも抑えるためには、購入時から5年を超えた後に売却するのが良い時期です。
(3) 居住用財産の軽減税率の特例
居住用財産(マイホーム)を売った年の1月1日現在で、所有期間が10年を超えている場合は、先ほど解説した3,000万円の特別控除を適用したあとの譲渡所得に対して、以下のとおり軽減された税率で計算されます。
・6,000万円までの部分 所得税10.21%(復興特別所得税2.1%含む) 住民税4%
・6,000万円を超える部分 所得税15.315%(復興特別所得税2.1%含む) 住民税5%
結果として、マイホームの所有期間が10年を超えてから売却したほうが税金は抑えられます。
(4) 相続税の優遇措置
相続した家を売る場合には、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日(相続してから3年10カ月)までに売却すると「相続税が取得費に加算される特例」を利用できます。
「取得費加算の特例」を適用することにより、相続した不動産を売却して利益が生じた場合に、取得費に相続税の一部を計上できるため、課される所得税を軽減できます。
6.個人の事情による時期
居住用の住宅は投資対象ではないので多くの場合、市況や相場によって買っているのでもなく売るのでもない点があります。売らなければならない時期と言っても良いでしょう。
住み替え理由では、家庭の事情と職場の変動などが大きなものです。また、使いやすさや綺麗さ、性能、生活の利便性や定年後の住みやすさの追求などもあります。主な点は次のようなものです。
(1) 家庭の事情
①結婚、子育て、教育のためなど
②親との同居のため、介護のためなど
③離婚のため
などです。
(2) 職場の変動の事情
仕事の転勤、転職のためなどです。
(3) その他
①使いやすさや綺麗さ、性能、生活の利便性のため
②老後の生活の都合のため
子供が独立して家を出ていくと、夫婦ふたりだけになり住み方を変える場合があります。郊外圏から大都市への移動や、医療に不安のない地域への住み替えなどがあります
個人的事情はそれを優先しなければならないため、売るのに適したその他の要因を考え少しでも有利にするよう可能な範囲で検討するものです。
まとめ
・市況による時期の判断
市況では、好景気の時には不動産価格も上昇する傾向があり、不景気の時には不動産価格も下落する傾向が生まれます。好景気であれば売却には良く、不動産であれば金融のような大きな変動はないので不景気でなければ売却には適した時期です。
・不動産相場による時期の判断
相場が右肩下がりなら早く売ったほうが良いです。相場が横ばいならいつ売っても同じで売る時と言えます。右肩上がりであった場合は状況を見て横ばいになれば売る時と言えます。
・物件の動きやすい季節は4月からの転勤や進学に合わせて2月、3月です。
・建築物の築年数による時期の判断では、戸建て住宅の築年数の評価は厳しく下落率が大きくなります。
・住宅ローン金利による時期の判断では、現在は「超低金利時代」といわれるほど金利が低く、買主にとっては買い時で、売主にとっても売り時です。
・税制の優遇措置による時期の判断の対象には、譲渡所得の3000万円特別控除、長期所有の譲渡所得税・住民税優遇、居住用財産の軽減税率の特例、相続税の優遇措置などがあります。