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老人ホーム、介護施設などへの土地売却の可能性
老人ホーム、介護施設などへの土地売却の可能性
高齢社会を迎えてさらに団塊の世代の後期高齢者化を迎えて、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など介護施設の展開が活発です。そのため、多くの運営事業者が新規出棟の用地を募集しています。
土地の売却においては個人の宅地用が中心ですが、かなり広い土地である場合は老人ホーム等に向いており、また、宅地の場合は重要な要素で駅からの距離などがありますが、介護施設を利用している人は、施設内で生活がほぼ完結してしまうので、外出の機会は少ないと考えられ、交通の便や施設周辺の街の利便性はさほど重要ではないと言えます。そのため、宅地にふさわしくない立地でも有効な場合があります。介護施設での土地利用について紹介します。
目次
1. 高齢化の状況
2. 介護施設の種類
3. 土地や建物についての条件
4. 土地を売却するか、土地だけ貸すか、建て貸しするか?
(1) 土地を売る。
(2) 土地だけ貸す。
(3) 土地建物を建て貸しする。
5. 介護事業者の用地募集例
6. 土地の営業
まとめ
1.高齢化の状況
内閣府の2018年版高齢社会白書によると、2017年時点の日本の総人口は1億2,671万人で、そのうち65歳以上人口は3,515万人、総人口に占める65歳以上の人口の割合は27.7%となっています。
将来推計を見てみると総人口が減少していく中で高齢化率は上昇していくことが想定されており、2040年の高齢化率は35.3%、2065年には38.4%で国民約2.6人に1人が65歳以上になると予想されています。
2.介護施設の種類
介護施設、高齢者施設には次のような種類があります。
①特別養護老人ホーム
②有料老人ホーム(介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホーム)
③サービス付き高齢者向け住宅
④グループホーム
⑤デイサービス
など
①は行政や社会福祉法人でのみ開設可能ですが、②③④⑤は一般民間事業者でも参入可能です。
3.土地や建物についての条件
介護施設にはある程度の規模が必要なので、大きな土地でないと建設ができません(老人ホームでは土地400坪以上、建物延べ床面積800坪以上が目安)。介護施設はある程度のスペースが必要な施設であり、賃貸住宅には大きすぎるような土地の活用法として有効とも言えます。
4.土地を売却するか、土地だけ貸すか、建て貸しするか?
介護施設等への土地の提供形態には次のようなものがあります。
(1) 土地を売る。
通常の土地の売却です。
(2) 土地だけ貸す。
事業用定期借地権を利用して、介護事業者に土地を貸す方法です。
事業用定期借地権の借地期間は10年以上50年未満で、期間が満了になると借地人(介護事業者)は土地を更地にしてオーナーに返還しなければなりません。初期費用がかからないため、低リスクで土地を活用できます。オーナーにとっては従来の普通の借地権と異なり、期間経過をすれば確実に土地が戻ってくることが安心材料です。
(3) 土地建物を建て貸しする。
オーナーが所有地に建てた介護施設を、介護事業者が一括で借り上げる方法です。
テナント(介護事業所)から建設協力金を預かるリースバック方式を利用すれば、初期投資の負担を抑えることもできます。預かった建設協力金は毎月の賃料から相殺されますが、土地と建物分の賃料でより大きな収益が見込めます。
5.介護事業者の用地募集例
①SOMPOケア株式会社
・土地建物要件
土地・建物賃貸借(オーナー建て貸し)、借地(SOMPOケアにて建物建築)、土地購入(SOMPOケアにて土地購入・建物建築)
・契約期間:土地・建物賃貸借の場合は、原則20年間の賃貸借契約
・立地:最寄り駅から概ね徒歩10分圏内の住宅地(住環境として適地)、バス等の公共交通機関により利便性が確保されている場合、駅からの距離は応相談
・土地面積:約1,650㎡(500坪)~約3,300㎡(1,000坪)※東京都心部 1,157.02㎡(350坪)~
・建物:RC造(S造も検討可能)、居室数(25㎡~30㎡程度)50~60室前後延床面積 約3,640㎡(1,100坪)前後
②スターツケアサービス株式会社
・土地建物要件
建物の一括借り上げ方式
立地:最寄り駅より徒歩15分以内、バス停から徒歩5分以内(バス便 平日昼間で4本以上)
用途地域:市街化区域内
敷地面積:グループホームの場合140坪(角地)~200坪程度、特定施設(介護付き有料老人ホーム)の場合:400坪以上、保育園の場合:100坪以上
③ハーフ・センチュリー・モア
・土地建物要件:基本は有効活用(売却も有り)
・立地:関東、関西、名古屋(通勤圏内)の良好な敷地(工場付近は除く)
・土地面積:郊外はおおむね3,000坪から10,000坪程度、都心は容積率に依る。
・建物延床面積:12,000坪以上
・土地:更地状態のもの
④ソニー・ライフケアグループ プライドライフ
・土地建物要件:土地売買、借地、有効活用
・立地:東京都、神奈川県
・法定延床面積:600坪以上の建物が建設可能な用地
6.土地の営業
土地を売却する場合は、売却を依頼する不動産会社と相談し不動産会社へ営業を依頼します。
貸す場合や建て貸しする場合は、用地募集をしている介護施設運営業者から資料を取り寄せたりし検討します。
まとめ
・宅地の場合は重要な要素で駅からの距離などがありますが、介護施設では、交通の便や施設周辺の街の利便性はさほど重要ではないと言え、宅地にふさわしくない立地でも有効な場合があります。
・介護施設はある程度大きな土地が対象となります(土地400坪以上、建物延べ床面積800坪以上が目安)。
・介護施設、高齢者施設には、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームなどがあります。
・介護施設への土地の提供方法には、次のようなものがあります。
①土地を売る。
②土地だけ貸す。
③土地建物を建て貸しする。