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不動産売却では、いつ・どのような資料・書類が必要か?
大都市圏の土地価格の下落は避けられるか?生産緑地の2022年問題とは
不動産市場の混乱・土地価格の下落が起こるおそれがあるものとして生産緑地の2022年問題があります。多くの生産緑地の指定が解除されるのが2022年で、指定が延長申請されずに解除されれば3大都市の郊外圏を中心に宅地がすすみ、結果として土地の過剰供給がされ、土地価格の下落が起きるのではとの不安があります。この2022年を迎え、生産緑地の延長申請の動向が注目されています。生産緑地の2022年問題とはどのようなもので、どのような見込かを探ります。
目次
1.生産緑地の2022年問題とは
2.2022年問題、生産緑地の延長、約8割が申請へ
3.改めて生産緑地とは?
4.生産緑地の該当面積・地域
5.特定生産緑地制度とは
6.延長の期限は10年、10年後も同様の問題に直面する。
まとめ
1.生産緑地の2022年問題とは
生産緑地の2022年問題とは、1992(平成4)年に生産緑地法が改正されたときに指定を受けた生産緑地が、30年を経過する2022年に一斉に指定を解除されることによって、不動産市場の混乱と宅地化した土地が大量に供給されることによる、郊外土地価格の下落が起こるおそれがあるとされることです。
三大都市圏の特定市の生産緑地の約8割が、1992年の生産緑地法改正時に指定を受けたものであるといわれており、これらが一斉に買取り申出がされ指定の解除が行われることになれば、三大都市圏において大規模な宅地の開発や供給が増加する可能性の問題です。
生産緑地は指定から30年が経過すれば、市町村に対して時価で買い取ることを申し出ることができ、市町村が買い取らず、また、他の農業希望者へのあっせんも不調の場合に、生産緑地法による制限が解除され、開発や売買が可能になります。
しかし、市町村の財政難などの理由から、買取りがなされた実績はほとんどなく、買取り申出がされた場合には、その大部分は生産緑地法の制限の解除がされると予想されていました。
2.2022年問題、生産緑地の延長、約8割が申請へ
国土交通省が2021年9月に三大都市圏に対して行った調査では、指定済み・指定が見込まれる生産緑地は全体の81%となっており、指定の意向がない生産緑地は7%、残りの13%は現時点で意向が未定です。
2021年5月20日の日本経済新聞・東京首都圏経済面の記事では、首都圏1都3県で多くの生産緑地を抱える自治体では、2022年に優遇措置の期限が切れる面積の「8割近くの所有者が延長を申請」していることがわかりました。
自治体側も環境維持や防災のため、生産緑地の確保、維持を目指しており、延長申請を後押ししています。
後述の特定生産緑地制度により、更に10年の猶予を得られるため、生産緑地が一気に売却される可能性は低くなったと思われます。
生産緑地が大量放出されるといった問題はかなり限定的になり、三大都市圏において大規模な宅地の開発や供給が増加する可能性は低くなったと思われます。そのため、地価が大きく下落するということは少ないと思われます。ただし、農業の後継者不足など構造的な農業問題はあります。
3.改めて生産緑地とは?
生産緑地とは、1992年の改正生産緑地法により指定された市街化区域内の農地として保全することを主目的とした土地のことであり、「一定の条件」を満たす土地に相続税の納税猶予や固定資産税などの税制優遇を受けられる代わりに30年間の営農義務が課せられるというものです。生産緑地とは、都市圏の市街化区域内の農地のうち、生産緑地法で指定された農地です。
「一定の条件」とは、「農林漁業の生産活動ができるか(日当たりなどが適しているか)」や、「面積が500㎡以上であること」、「当該農地の所有者とその他の権利者全員が同意していること」などです。
生産緑地に指定された土地は30年間売却や転用はできませんが、30年経つと市区町村に時価で買い取りの申し込みができます。
4.生産緑地の該当面積・地域
生産緑地は2018(平成30)年3月31日時点で59,671地区、12,525ヘクタール存在しています。
生産緑地の該当地域は東京都を中心に、神奈川、埼玉、千葉、愛知、大阪府が全体の約8割を占めており、東京都だけでも全体の面積の4分の1である3,000ヘクタールを占めています。首都圏1都3県では約57%が所在しています。
5.特定生産緑地制度とは
「特定生産緑地制度」とは、生産緑地の30年間の営農義務が解除されても売却が一度にされないために、2018年に生産緑地法が改正され、新たに、特定生産緑地の指定が受けられるようになり、指定を受けられると、更に10年間の税制優遇受けられるものです。
また、これまで生産緑地の必須条件として農地の面積は500平方メートル必要でしたが、都市部にしては広すぎることから300平方メートルに変更となり、更にこれまで生産緑地内には何も建設できなったルールが緩和され、第三者に農地を貸し出すことや、収益を得られるレストランや施設も併設すること、獲れた作物を製造・販売・加工することが可能になりました。
6.延長の期限は10年、10年後も同様の問題に直面する。
特定生産緑地制度は10年の期限があるため、10年後にも同様の問題に直面することになります。2022年問題の次は、2032年問題が待っていることになります。
10年後は、農業も後継者問題から厳しいかもしれませんが、宅地化も今よりもさらに人口減少が進んでいる可能性があり、賃貸住宅経営は厳しくなっているかもしれません。それを踏まえたうえで宅地化するかどうかを吟味するべきでしょう。
まとめ
・生産緑地の2022年問題とは、1992年に生産緑地法が改正されたときに指定を受けた生産緑地が、30年を経過する2022年に一斉に指定を解除されることによって、宅地化した土地が大量に供給されることによる郊外土地価格の下落などが起こるおそれがあるとされることです。
・生産緑地の30年間の営農義務が解除されても売却が一度にされないために、2018年に生産緑地法が改正され、「特定生産緑地制度」が生まれました。特定生産緑地の指定が受けられると、更に10年間の税制優遇受けられる制度です。
・この制度により、現状では、生産緑地の延長を約8割が申請するとの見込で大きな混乱はないと思えます。
・ただし、延長の期限は10年で、10年後も同様の問題に直面します。