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不動産売却は相続前、相続後のどちらが良い?
不動産売却は相続前、相続後のどちらが良い?
親が持っている不動産をやがては相続する場合などでは、相続前に売却して現金を相続するのと、相続後に売却をするのとどっちが良いのでしょうか?不動産を売却したときの譲渡所得税と、相続時の相続税のどちらが良いのかの問題があります。それぞれのメリット、デメリットを比較し検討してみましょう。また、子供などの相続人が自分のメリットだけ考えるのも問題があるでしょう。まず、所有者である親の意思も考慮してお互いに検討することが必要でしょう。
目次
1.不動産を「相続前」に売却する場合のメリット・デメリットは?
(1) 「相続前」に売却する場合のメリット
(2) 「相続前」に売却する場合のデメリット
2.不動産を「相続後」に売却する場合のメリット・デメリットは?
(1) 「相続後」に売却するメリット
(2) 「相続後」に売却するデメリット
3.不動産売却は所有期間が重要!
4.不動産売却は相続前、相続後のどちらが良い?
(1) 税金から考えた損得
(2) 遺産分割が難しく遺言書を書いてもトラブルがあると所有者本人が考えた場合
(3) 不動産の所有者本人が売却に気がすすまない場合
まとめ
1.不動産を「相続前」に売却する場合のメリット・デメリットは?
不動産の所有者が、生前に不動産を売却し、相続人が現金で相続をするケースです。
(1) 「相続前」に売却する場合のメリット
①相続前に不動産を売却すると、相続人が複数の場合に遺産分割がスムーズになる。
相続人が複数いる場合、分割しづらい不動産を相続するには遺産分割が大変です。誰が不動産を相続するのか、共有名義にするのか、相続人の1人が不動産をもらう代わりに他の相続人に現金を支払うのかなど、相続人同士で話し合って決めなくてはならずトラブルの元になりやすいためです。
そのため、生前に不動産を売却して現金にしておけば、公平な現金による遺産分割が行えます。
②所有者の老後資金が不足している場合、老人ホーム入居金や介護資金に充てられる。
所有者が老人ホームに入居し、家族などで自宅に住む人がいなくなる場合は、自宅を売却し老人ホーム入居資金や介護資金などの老後資金にあてられます。
③3,000万円特別控除の特例を使って譲渡所得税をゼロにしたり低くできる。
生前に自宅不動産を売却した場合、3,000万円の特別控除の特例という節税策を使えます。
親族間売却では利用できないといったいくつかの条件はありますが、3,000万円の控除は節税効果が大きいです。
不動産の売却時に発生する譲渡所得税の課税対象額は売却金額ではなく、売却額から取得時の経費である取得費と、売却時の経費である譲渡費用を引いた黒字部分の売却利益に対してかかります。マイホームとして住んでいた物件の売却なら、譲渡所得から3,000万円を控除することで譲渡所得税がかからないケースがほとんどではないでしょうか。
④10年超の長期所有の軽減税率の適用
マイホームに住んでいた所有者本人が売却する場合は、10年超の長期所有の場合の優遇制度があります。「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」です。
10年超の所有ほか一定の要件に当てはまれば、6,000万円までは14.21%(所得税10.21%・住民税4%)、6,000万円を超える部分に関しては20.315%(所得税15.315%・住民税5%)の税率となります。
この特例は、相続人が売却する場合には適用されません。10年超住んでいる家で、売却利益が大きくなりそうな場合は、生前に本人が売却するのも節税の方法のひとつです。
(2) 「相続前」に売却する場合のデメリット
①不動産売却で利益が出た場合には、その利益(譲渡所得)に対して譲渡所得税がかかる。
通常の不動産売却と同様譲渡所得税がかかる場合があります。
②不動産が高く売れると相続税が高くなる。
遺産として現金が増えると相続税が高くなってしまうことがあります。相続税額の計算だと、不動産は現金よりも評価額が小さくなりおおよそ8割程度になります。現金であればその額がそのまま評価額になります。
③本人が自宅を売却した後、住むところが無い場合は家賃が新たにかかる。
子供の家に同居するのではなく他に住むところがない場合は、新たに賃貸で家を借りなければならず家賃がかかります。また、死ぬまでにいくら家賃の合計がかかるかわかりません。
2.不動産を「相続後」に売却する場合のメリット・デメリットは?
不動産として相続をしてから、相続後不動産を売却して現金化するケースです。
(1) 「相続後」に売却するメリット
①現金で相続するよりもかかる税金を抑えられる。
不動産評価の土地であれば路線価、建物であれば固定資産税評価額は、売却金額の「時価」よりも安くなります。
不動産のまま相続をすれば、相続税が安くなるケースが多いです。
②「相続税の取得費加算の特例」の制度が使える。
相続税の申告期限である相続開始から10カ月後の翌日から3年以内にその不動産を売却した場合は、譲渡所得の計算において、支払った相続税のうちその不動産にかかる部分の相続税を「取得費」として加算できるという特例制度があります。これを「相続税の取得費加算の特例」の制度と言います。
そのため、相続した不動産をこの期間内に売却すれば、それによって発生する譲渡所得税を節税することができます。
*不動産の売却益=不動産の売却価格ー不動産の取得費(実際の取得費+不動産にかかった相続税)
③「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円の特別控除の特例」の制度が使える。
親が住んでいた家を空き家として相続してから売却する場合、一定の要件に当てはまれば「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」を受けることができます。譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができるという特例です。
ただし、昭和56年5月31日以前に建築された建物であること、一定の耐震基準を満たしていることなどの要件があります。
(2) 「相続後」に売却するデメリット
①相続人が複数の場合、売却手続きが複雑になりまとまらない場合もある。
相続不動産は原則として、遺産分割協議が合意に達し、相続する相続人、遺産の配分が確定してからでなければ売買手続きに入れません。
そのため、仮に不動産が自宅だったりすると、売却に反対する相続人が出てくる可能性があるため、結果として足並みが揃わず、売却して納税資金に充てること自体ができないというケースもあります。
また、相続人全員で共有財産として相続したなら、売却に関しても相続人全員の同意が必要となります。一人でも反対意見の人がいれば話がまとまらず、不動産の売却が進められない事態に陥ってしまう可能性もあります。
②不動産を売却して納税資金に充てる場合、相場よりも安く売却させられるリスクがある。
相続税の納税資金が十分ではなく、相続不動産を売却して得た現金によって相続税を納税するというケースでは、相場よりも安く売却させられるリスクがあります。相続税の申告納税期限である、相続開始後10カ月以内のタイムリミットがあるため、売買における価格交渉は不利に働き、相場よりも安く売らざるを得ない場合があります。
3.不動産売却は所有期間が重要!
相続前でも後でも、不動産売却でかかる譲渡所得税は、不動産の所有期間によって税率が変わります。
➀短期所有(5年以内):譲渡所得税率39.63%(所得税30.63%、住民税9%)
②長期所有(5年超) :譲渡所得税率20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
となります。
※所得税には復興特別所得税含む。
相続で取得した不動産の場合は、被相続人が所有していた期間がそのまま引き継がれます。
4.不動産売却は相続前、相続後のどちらが良い?
(1) 税金から考えた損得
①相続税の課税関係は、現金よりも不動産の評価額が低いため、相続後の方が基本的に得です。
②相続税には基礎控除があり、相続後の方が得です。
相続税の基礎控除は、3,000万円+相続人の数×600万円です。
仮に地価の大幅な変動がなく、不動産相続によって相続人の間で争わないのであれば、不動産は相続人が相続後に、相続税の申告期限から3年以内に売却することが、課税関係上はベストと言えるでしょう。
③相続前の売却でも3,000万円特別控除の特例を使い課税されないならば、相続後でも課税されず、売却は相続前でも後でも構わないと言えます。
(2) 遺産分割が難しく遺言書を書いてもトラブルがあると所有者本人が考えた場合
いつ売るかではなく、「何のために売るのか」を考えた時には、遺産分割をスムーズに進めるための相続前売却が適切な場合があります。
(3) 不動産の所有者本人が売却に気がすすまない場合
本人の思い入れのある自宅物件などの場合で、本人が売却に気がすすまない場合は相続後の売却が適切です。相続する特定の相続人のエゴの方が強く、親を無理して説得している場合などです。
まとめ
・「相続前」に売却する場合のメリット
①相続前に不動産を売却すると、相続人が複数の場合に遺産分割がスムーズになる。
②所有者の老後資金が不足している場合、老人ホーム入居金や介護資金に充てられる。
③3,000万円特別控除の特例を使って譲渡所得税をゼロにしたり低くできる。
・「相続前」に売却する場合のデメリット
①不動産売却で利益が出た場合には、その利益(譲渡所得)に対して譲渡所得税がかかる。
②不動産が高く売れると相続税が高くなる。
③本人が自宅を売却した後、住むところが無い場合は家賃が新たにかかる。
・「相続後」に売却するメリット
①現金で相続するよりもかかる税金を抑えられる。
②「相続税の取得費加算の特例」の制度が使える。
③「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円の特別控除の特例」の制度が使える場合がある。
・「相続後」に売却するデメリット
①相続人が複数の場合、売却手続きが複雑になりまとまらない場合もある。
②不動産を売却して納税資金に充てる場合、相場よりも安く売却させられるリスクがある。
・不動産売却は相続前、相続後のどちらが良いかを税金から考えた損得
①相続税の課税関係は、現金よりも不動産の評価額が低いため、相続後の方が基本的に得です。
②相続税には基礎控除があり、相続後の方が得です。
③相続前の売却でも3,000万円特別控除の特例を使い課税されないならば、相続後でも課税されず、売却は相続前でも後でも構わないと言えます。