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「家庭菜園付き」をアピールする住宅売却方法
「家庭菜園付き」をアピールする住宅売却方法
住宅の売却営業では、地域、土地面積、物件内容、価格などのハード的な情報が中心に、買主側の不動産会社がレインズでの情報検索をしてマッチングさせます。しかし、売主側としては他の情報との差別化のために、ソフト的な物件の魅力を伝えてマッチングさせるマーケッティング的な手法も必要ではないでしょうか。東京近郊の地域の魅力では、自然環境に恵まれた地域性に加えて、コロナの影響で巣ごもり需要も拡大し、注目されるもののひとつに家庭菜園があります。家庭菜園ができる住宅、家庭菜園付き住宅、としてアピールするのも有力な販売方法です。
目次
1. ステイホームで拡大する家庭菜園市場
2. 種苗メーカーによる家庭菜園市場調査
3. 新しいライフスタイル「ファーム・トゥー・テーブル」
4. 「家庭菜園」をコンセプトにした住宅づくり
5. 「家庭菜園付き」をアピールする住宅売却方法
まとめ
1.ステイホームで拡大する家庭菜園市場
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や、ステイホームのライフスタイルの影響により、自宅で過ごす時間が増えたことで、家庭菜園に取り組む人が増えています。
2010年頃から家庭菜園市場は拡大傾向にありましたが、コロナの影響での巣ごもり需要の影響から、家庭菜園での野菜作りと手作り家庭料理のへの関心が増えていると思われます。
都心部でも、土地は狭くても自宅の庭での家庭菜園や、マンションではベランダ菜園が人気です。作るものでは、野菜、ハーブ類中でもトマトやレタスなど毎日食べるものが長続きしています。郊外で広い庭がある人は、本格的に野菜を作り経済的にも食材費が減りメリットがあると言われています。経済評論家の森永卓郎さんは埼玉県所沢に家を建て家庭菜園をしていると言いますが、郊外圏の魅力は物価が安いことと、庭で家庭菜園ができ野菜が自分で作れる経済的メリットがあると言います。
「レジャー白書2019」(公益財団法人 日本生産性本部)によると、2018年における「農園・市民農園」の参加人口は360万人となっていますが、コロナ禍では市場はさらに拡大していると思われます。参加人口を見ると男女共に60~70歳代が占める割合が大きく、約6割をシニア層が占める状況にありましたが、外出自粛、テレワークの定着などステイホームが増えたことで、40~50歳代の裾野が拡大している状況にあると思われます。
また、都市部で自宅の庭以上に広い場所で家庭菜園をしたい人は、市民農園や貸し農園などを利用することになりますが、市民農園の開設数は、農林水産省の調査によると2018年3月末時点で、全国で4,165農園が開設されています。
ビジネスとして貸し農園事業に参入している企業も増えてきており、民間企業運営の貸し農園は、地方自治体が運営する貸し農園に比べ利用料金は割高ですが、道具のレンタル、栽培指導などサービスを付加して初心者市場を開拓しています。顧客層は幅広く、子供と一緒に野菜作りを楽しむ30~40歳代家庭や、定年後のシニア層を中心に利用者が増えています。
2.種苗メーカーによる家庭菜園市場調査
種苗メーカーのタキイ種苗株式会社(所在地:京都市)は、継続的に「家庭菜園に関する全国調査」を実施しています。
家庭菜園は若年層からシニア層まで幅広く人気を集める成長市場です。タキイ種苗は、これまでなかった家庭菜園の全国の市場がみえる調査を実施することで、より多くの人に家庭菜園を楽しんでもらえるために情報発信をしています。
2021年調査では、全国の20歳以上の男女600人(農業関連従事者、食料・飲料の卸売・小売業従事者除く)を対象に、「2021年度 野菜と家庭菜園に関する調査」を行い、野菜作り(家庭菜園・ベランダ菜園)への関心度、実践状況、コロナ禍での野菜にまつわる項目等について調査しました(インターネット調査・期間:2021.7.3~7.5)。
結果として次のような傾向が発表されました。
・家庭菜園現在実施者のうち27.7%は、コロナ禍2年目以降に家庭菜園を始めた。
・現在の家庭菜園実施者のうち94.6%とほとんどの人が「今後も続けたい」と高い継続意向を示した。
・家庭菜園経験者のうち、77.5%が「野菜を育てることは想像以上に大変だった」と回答した。その一方で「家庭菜園について勉強したい・知識を増やしたいと思った」人も74.7%いることがわかった。
その前の2017年調査では、調査規模も大きくし20~60代の9,605名を対象に調査を実施し、より正確に日本全体の市場性を導き出し、次のような内容が発表されています。
① 日本人の約半数が「家庭菜園」の経験者!
調査の結果、約17.5%が「現在、家庭菜園を実施」していて、「現在は作っていないが過去に作ったことがある」(30.9%)と合わせると48.4%と、約半数が「家庭菜園の経験がある」ことがわかった。
②現在家庭菜園を実施していない人も、約4割が意欲的!
現在、家庭菜園を行っていない人のうち、9.3%が「今年はやってみよう(再開しよう)」と思っており、「今年かどうかはわからないがやってみよう(再開しよう)」と回答した29.0%と合わせると、約4割がスタートする意向を持っており、家庭菜園の今後の広がりを予感させる結果となった。
③年代・性別で異なる「始めたい理由」。1位は「自分で食べる野菜を作るのが面白そう」!
「家庭菜園を始めてみたい(再開したい)」理由では、
1位は、全年代・性別で回答が多かったのは、「自分で食べる野菜を自分で作るのが面白そうだから」(58.5%)だった。
2位は、「趣味のひとつとして野菜づくりは適していると思ったから」(36.2%)で60代男性の値が高く出た。
3位は、「家計節約のためには(少しでも)自分で野菜を作るのが良いと思ったから」(34.8%)で20~30代女性の値が高く出た。
また、性・年代的な傾向では、
20~30代女性は、「子どもの教育のためにも良いと思ったから」(39.6%)が高い値が出たことから、家計や子どもの教育のために家庭菜園に取り組む意識が高いことがわかった。
50~60代女性は、「安全・安心のためには(少しでも)手作りの野菜が良いと思ったから」の値が高く、食の安全への関心の高さが窺えるなど、性・年代で理由が異なる結果となった。
④ 家庭菜園のやりがい、約6割が「育てる喜びを知ることができた」
家庭菜園で「やっていてよかったと思うこと」を尋ねたところ、1位は、57.3%が「育てる喜びを知ることができた」と回答した。2位は、「季節や自然に関心が深まった」(36.3%)が続き、野菜を育てることで自然に触れ、育てる喜びにやりがいを感じる人が多いようだ。
⑤家庭菜園については86%の高い満足度!
家庭菜園の満足度では、「とても満足している」(22%)、「やや満足している」(64%)で、合わせると86%となり、満足度が高いことがわかった。
3.新しいライフスタイル「ファーム・トゥー・テーブル」
都市住民たちの食を中心としたライフスタイルでは、自宅にある菜園で野菜やハーブを育て、それをそのまま食卓に出す「ファーム・トゥー・テーブル」(farm to table)という食のスタイルが注目されています。これは洋食レストランのシェフにもその動向はあります。
庭で育てた旬で安全な野菜を、採れたその日のうちに料理して、あるいは生のまま、食卓に並べるというものです。鮮度と無農薬の安心性が背景にあります。
4.「家庭菜園」をコンセプトにした住宅づくり
・屋上菜園の付いた賃貸住宅事業
大田区西蒲田を本拠地として不動産事業を展開するミノラス不動産が大田区に移り住んでもらえることを目指して開発したものに「菜園長屋」があります。
「菜園長屋」は、多摩川に近い大田区東六郷という地域に建てられた3階建ての木造アパートで、屋上菜園付きテラスハウスという新しいコンセプトを打ち出して入居者を募集し話題を集めました。
今後もディベロッパーによって、家庭菜園をコンセプトにした住宅開発が行われる可能性があります。
5.「家庭菜園付き」をアピールする住宅売却方法
マーケティング的な売り方として、「家庭菜園向きの広い庭」「家庭菜園付き」などのキャッチフレーズをつくり、セールスポイントを明確にすることが考えられます。「家庭菜園付き」と表示した場合は、すぐにでも耕作できる土の状態まで用意しておく必要があります。できない場合は、「家庭菜園向き」と表示すれば良いでしょう。
日当たりや庭の広さなどがアピールポイントになります。
前述したように、家庭菜園に関心を持つ層が潜在的にはかなり拡大していることから、単なるハードの物件データだけでなく、ソフトの魅力をアピールすることが重要です。
売主としては、売却依頼する不動産会社と相談して、適切な広告媒体への出稿と内容のアピールを依頼していったらよいと思います。
まとめ
・新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛やステイホームなどの影響により、自宅で過ごす時間が増えたことで、家庭菜園に取り組む人が増えています。
・家庭菜園に取り組む理由では、20~30代の女性は「家計や家族のため」に、50~60代女性は「安全・安心のため」手作りの野菜が良いと思ったからなどが特徴的です。
・住宅の売り方でもユーザーの家庭菜園ニーズをとらえて、「家庭菜園」はキャチフレーズとして有力でしょう。