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セカンドハウス目的の住宅売却の可能性と予備知識
セカンドハウス目的の住宅売却の可能性と予備知識
コロナ禍によるリモートワークの普及で、大都市周辺の郊外物件などの住宅市場の伸びが期待されています。社会動向としても、ワーケーションという、自然豊かな場所やリゾート地などで、リモートワークで仕事をする働き方が注目を集めています。また、デュアルライフという二拠点生活に憧れをもっている層も拡大しています。デュアルライフは新しいセカンドハウスのスタイルでしょう。都市郊外圏、都市近隣地域でのセカンドハウス需要の住宅売却について、通常の住宅とは異なる点について知り、住宅売却拡大のために参考になる点を紹介します。
目次
1. ワーケーション、セカンドハウス市場の拡大
(1) 田舎暮らしに憧れる人が増えている。
(2) デュアルライフ(二拠点生活)が拡大している。
(3) ワーケーションの場として自然豊かな場所やリゾート地が注目されている。
2. 不動産物件としてのセカウンドハウスと別荘の違い
(1) セカンドハウスとは
(2) 別荘とは
3. 一般住宅と同様の税の優遇措置を受けられるセカンドハウス
(1) 固定資産税
(2) 不動産取得税
(3) 都市計画税
4. セカンドハウスにおける住民税支払いの必要性
5. セカンドハウスの購入に使える住宅ローン
まとめ
1.ワーケーション、セカンドハウス市場の拡大
(1) 田舎暮らしに憧れる人が増えている。
都会に住み田舎暮らしに憧れる人が増えてきています。人間としての本来の自然志向もあると言えます。テレビでもシニア層を中心に田舎暮らしの番組は人気があり、若年層でもインスタグラムやツイッターなどのSNSで、田舎暮らしの様子や情報などの発信が数多く見受けられることからも、田舎暮らしに憧れる人の年代層の拡大もあるでしょう。現役世代でそれを可能にしているのは、リモートワークの普及定着化でしょう。
(2) デュアルライフ(二拠点生活)が拡大している。
田舎暮らしに憧れてはいるものの、完全に居住地を移すことに抵抗がある人や、様々な場所での生活を楽しみたい人の間で、デュアルライフが拡大しています。デュアルライフという2拠点生活では、普段は都心部に暮らし仕事をし、週末に田舎暮らしやリゾートライフを楽しむ生活や、逆に、普段は郊外やリゾート地に住み、仕事の打ち合わせなどがある時だけ、都市部に借りているワンルームなどの賃貸住宅で生活をするなどの生活の仕方があります。
また、先進的な企業ではリゾートオフィスでの二拠点ワークや、パソナなどのように本社を淡路島に移転し、希望者は淡路島に移住し、希望しない人は在来の場所やリモートで仕事をするなど、多様な仕事と生活の場の選択が可能としている企業も出てきました。ITによる仕事が可能な企業では、企業の魅力づくりの点からも、デュアルライフ型の働き方を取り入れてきています。
(3) ワーケーションの場として自然豊かな場所やリゾート地が注目されている。
ワーケーションとは、都会にある通常の勤務地から離れて、自然豊かな場所やリゾート地などで長期休暇を取りつつ、リモートワークなどで仕事をする働き方のことです。
テレワークや在宅勤務とは異なり、「休暇を取りながら働く」という点が特徴のワーケーションは、これからの新しい働き方として注目されています。
2019年11月には全国の自治体が集まり「ワーケーション自治体協議会」が設立され、すでにいくつかの別荘地では地域全体で古い別荘や民家などをリノベーションして、オンラインオフィスやコワーキングスペースなど、ワーケーション用の設備や体制を整えつつあります。
2.不動産物件としてのセカウンドハウスと別荘の違い
セカンドハウスと似たものとして「別荘」がありますが、税制上では使用目的と使用頻度によって、セカンドハウスと別荘は異なるものとして定義されます。
(1) セカンドハウスとは
税制上のセカンドハウスの定義は、「別荘以外の家屋で、週末に居住するため郊外などに取得するもの、遠距離通勤者が平日に居住するために職場の近くに取得するもの等で、毎月1日以上居住の用に供するもの」とされています。
立地は海辺や山間などどこでもよく、別荘地にあっても問題ありません。また、戸建て、マンションいずれでもかまいません。
セカンドハウスとして認められるには、「自宅からの通勤に相当の時間がかかるため、職場近くの平日の生活拠点として」「週末に過ごす拠点として」といった「定期的に使用する」ことが求められます。これらに共通する要件は、「自宅から一定程度離れている」ということです。
したがって、自宅近くでは、税制上のセカンドハウスとしては認められにくいといえます。
また、最低でも月1回以上の居住実態があることを証明するため、水道光熱費の請求書以外の郵便物や、近隣の商店などでの買い物のレシートなどの提出が求められることがあります。
(2) 別荘とは
別荘とは、「日常生活の用に供しない家屋又はその部分のうち、専ら保養の用に供するもの」と定義されています。つまり、日常の利用ではなく、避暑や保養のためのぜいたく品としての住居という解釈です。月1日未満の使用量であれば別荘に位置付けられます。
3.一般住宅と同様の税の優遇措置を受けられるセカンドハウス
セカンドハウスは生活を目的とした住居であるため居住用財産に含まれますが、別荘は含まれません。そのため、セカンドハウスと認められれば、一般住宅と同様に税制上の優遇措置を受けられます。
セカンドハウスとして認められた場合は、どのような税制上の優遇措置を受けられるのか、見てみましょう。
(1) 固定資産税
セカンドハウスには、固定資産税の優遇(軽減)措置があります。固定資産税とは、所有している土地・建物に対して毎年かかる市区町村の税金です。通常の固定資産税額は、自治体が決める不動産の「課税標準額」に自治体が定める税率を掛けたものになります。一般的に税率は、1.4%のところが多くなっています。
セカンドハウスの場合、その土地は「住宅用地」と判断されるため、土地面積に応じて適用された減額率を掛けた「課税標準額」をもとに固定資産税額が算出されます。そのため、税制上の住宅とみなされない別荘よりも税額が低くなります。住宅用地の固定資産税は次のようになります。
➀小規模住宅用地
土地面積のうち200平方メートル以下の部分について「課税標準額×1/6」
②一般住宅用地
土地面積のうち200平方メートル超の部分について「課税標準額×1/3」
(2) 不動産取得税
セカンドハウスの場合、不動産取得税も軽減措置の対象となります。不動産取得税とは、不動産を購入したときに建物と土地、それぞれに一度だけかかる税金です。
住宅を取得した場合の税額は、「固定資産税評価額(課税標準額)✕4%(標準税率)」(2024年3月31日までは標準税率を3%)とされていますが、一般住宅の場合の特例は以下の通りです。
➀建物(新築住宅または一定の条件に当てはまる中古住宅)の場合
(固定資産税評価額−控除額)✕3%
ここでの控除額は、床面積50平方メートル以上240平方メートル以下の場合1,200万円になります。
②建物(中古)の場合
(固定資産税評価額−自治体や築年数に応じた控除額)✕3%
中古住宅の要件は、以下の2つです。なお、控除額は築年が古くなるにつれて低くなり、100万円から1,200万円です。
・床面積50平方メートル以上240平方メートル以下であること
・1982年1月1日以降に建築されたものであること、または新耐震基準に適合している証明があるもの、あるいは入居前に新耐震基準に適合するための改修を実施する一定の住宅のいずれかであること
③土地の場合
(固定資産税評価額✕1/2✕3%)―控除額
控除額については、次のうちいずれかの多い金額となります。
(土地1平方メートル当たりの固定資産税評価額×1/2)×(課税床面積×2(200平方メートル限度)×3%の数値、もしくは、45,000円
(3) 都市計画税
一般住宅は、都市計画税にも土地の評価上の優遇(軽減)があります。都市計画税とは、都市計画法によって「市街化区域」と指定された地域の土地・建物に対して毎年かかる市区町村税です。
また、税額は「課税標準額✕税率」で計算されますが、税率は最高で0.3%とされていて、税率を0.3%としている市区町村が多くなっています。
セカンドハウスの場合、その土地は固定資産税と同じように「住宅用地」として減額された課税標準額をもとに都市計画税額が算出されます。課税標準額の軽減率は次の通りです。
➀小規模住宅用地
土地面積のうち200平方メートル以下の部分について「課税標準額×1/3」
②一般住宅用地
土地面積のうち200平方メートル超の部分について「課税標準額×2/3」
以上の軽減措置の適用を受けるには、各自治体で手続きが必要です。ただし、セカンドハウスの優遇措置を受けるには申請期限があり、取得後60日以内に、所在する都道府県税事務所へ申請する必要があります。手続きの内容は自治体によって異なります。
4.セカンドハウスにおける住民税支払いの必要性
軽減される税金がある一方、定住していない場合でも支払わなければならないのが「住民税」です。住民税は、前年の所得金額に応じて支払う「所得割」と、住民が全員同額を負担する「均等割」を合計した税額となりますが、セカンドハウスの場合は、住民票の登録はしないものの「均等割」のみ負担することになります。
均等割として支払う金額は、標準税率としては、市区町村民税が3,500円、都道府県民税が1,500円となっています。
ただし、自治体によって標準税率以上のところもあります。
5.セカンドハウスの購入に使える住宅ローン
都市部に住宅をすでに持ち、郊外圏やリゾート地にセカウンドハウスを持とうという人は資金的には一定の余裕のある層と考えられます。しかし、場合によりセカウンドハウス購入にローンを活用する人もいる可能性があります。
ローンでは、一般的な住宅ローンは、メインの生活拠点とする住宅の新築や購入を対象としているため、セカンドハウスの購入には利用することができませんが、セカンドハウスにも利用できる「セカンドハウスローン」があります。
一部の金融機関がセカンドハウス購入のために用意している住宅ローンです。
一般的な住宅ローンとは以下のような違いがあります。
➀審査が厳しい。
通常の住宅ローンも支払いながら利用する場合、ローンが上乗せになり月々の支払い総額が大きな金額になり、収入に対する返済比率が高くなるため、セカンドハウスローンの審査はそれだけ厳しくなります。返済に耐えられる十分な年収額が審査上必要です。
②金利が高い。
セカンドハウスローンは一般の住宅ローンと比べて、金利が高くなる傾向があります。各金融機関によってセカンドハウスへの融資に対するリスクの捉え方が異なるため、金利の差もあります。
③住宅ローン控除は受けられない。
税制の住宅ローン控除はメインの住宅が対象となります。セカンドハウスローンの場合は、メインの生活拠点ではないため、この制度の対象外となっているため住宅ローン控除を受けることができません。
まとめ
・田舎暮らしに憧れる人が増え、リモートワークの拡大もあり、ワーケーション・セカンドハウス市場が拡大し、郊外圏やリゾート地の土地、住宅の売却には好機です。
・税制上のセカンドハウスの定義は、「別荘以外の家屋で週末に居住するため郊外などに取得するもの、遠距離通勤者が平日に居住するために職場の近くに取得するもの等で、毎月1日以上居住の用に供するもの」とされています。
・別荘とは、「日常生活の用に供しない家屋又はその部分のうち、専ら保養の用に供するもの」と定義されています。月1日未満の使用量であれば別荘に位置付けられます。
・セカンドハウスと認められれば、一般住宅と同様に税制上の優遇措置を受けられます。