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隣地との境界を示す「境界標」はありますか?
隣地との境界を示す「境界標」はありますか?
土地や戸建て住宅の売却では、境界が確定していることが条件となります。境界確定のためには測量して作成した地積測量図があり、地積測量図は法務局に添付資料として届けてあるのが一般的です。また、地積測量にともない、現地では、境界標(きょうかいひょう)が打たれます。土地や戸建て住宅を売却する際には境界の位置確認が必要となり、境界標があるかどうか、あればどの位置になっているかの確認が必要です。境界標がない場合は地積測量図の確認が必要となります。売却時に重要な境界線と境界標などについて紹介します。
目次
1. 境界線の種類
(1) 敷地境界線
(2) 隣地境界線
(3) 道路境界線
2. 境界標について
(1) 境界標とは
(2) 境界標の役割
(3) 境界標の素材の種類
(4) 境界標設置のポイント
3. 隣地との境を示す境界標の管理と境界標がない場合の確認
(1) 境界標の存在の確認
(2) 地積測量図があるかどうかの確認
(3) 登記面積と現況面積を確認
まとめ
1.境界線の種類
境界線とは、一筆の土地の外周で示される土地と土地との境目の線をいいます。土地は、一筆、二筆と数えることから「筆界」と呼ばれることもあります。
土地における境界線は、土地と土地の間や、土地と道路の角に、「境界標」や「境界杭」が埋め込まれており、その境界標や境界杭を結んだ線となります。
境界標や境界杭を上から見ると「矢印」や「十字」の形が表示されており、矢印の先端、もしくは十字の交差部分が境界点となります。
また、境界標は金属製や石製のもの上に赤ペンキが塗られている場合があります。
また、境界線には、どの境界を示しているかによって、敷地境界線、隣地境界線、道路境界線の3つがあります。
(1) 敷地境界線
敷地の外周を結んだ線が敷地境界線です。
敷地境界線は、次に説明する隣地境界線と道路境界線を含めた総称です。
(2) 隣地境界線
隣地境界線とは、敷地境界線のうち、隣接する土地の境界線のことをいいます。
ブロック塀やフェンス、生垣などが境界線に沿って設置されていることで境界線が外観上明示されていることもありますが、その設置物が正確な境界線を示しているかどうかについては確認が必要です。また、設置物のどの位置(真ん中か、左右どちらかの側か)についても確認が必要です。
(3) 道路境界線
道路境界線とは、私有地と道路との境界線です。
土地の角と道路の境目近辺に設置されています。
道路と私有地との間には、道路境界標が埋め込まれている場合が多くあります。四角い杭のようなものもあれば、赤丸のビスのようなものが打ち込まれていることもあります。
道路境界標には道路の所有者にしたがって「〇〇市」「〇〇町」あるいは「国土交通省」と刻印されていたり、自治体のマークが刻印されていたりします。
2.境界標について
(1) 境界標とは
境界標とは、連続している土地を区分するもので、境界点を現地で示す標識です。
標識は、石、コンクリート、プラスチック、金属などの材質でできている杭の頭部に、十字や矢印(上、下、ななめ)で境界点を示したものです。
・境界標写真例
「隣地との境界紛争を防ぐ!境界標を設置するメリットと方法」
https://sell.yeay.jp/reading/knowledge/10094/
「境界標とは?種類と見方」
https://re-gardens.com/archives/2723/
境界標に関しては法律でも下記の通り定められています。
(境界標の設置)
民法第223条「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。」
(境界標の設置及び保存の費用)
民法第224条「境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。」
(境界標等の共有の推定)
民法第229条「境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。」
(境界標損壊)
刑法第262条の2「境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
(2) 境界標の役割
境界標の役割とは、現地において境界(筆界)がどこなのかを視認できることです。
境界標があれば隣地との境が明確になり次のような意味があります。
①境界トラブルを予防する。
境界標によって境界(筆界)が明確であれば、不要な境界問題は起こりません。
②財産の侵害防止になる。
境界標によって第三者に土地の範囲を公示することにより、侵害の予防になります。
③売買や相続を迅速に行う。
境界標によって土地の形状や面積が明確であれば、売買や相続を迅速に行うことができます。
(3) 境界標の素材の種類
境界標の素材には、さまざまな種類があります。場所によって入れるものが違ってきます。主に下記の種類があります。
➀コンクリート杭
一般的に永続性のある境界標として最も多く使用されています。地面に入れて固定します。
②石杭
御影石や花崗岩などでできた境界標で堅く最も優れた永続性があります。地面に入れて固定します。
③プラスチック杭
加工が簡単なため様々な形状のものがあります。軽くて安易に設置することができますが、コンクリート杭や石杭のような永続性はありません。地面に入れて固定します。
④金属標
真鍮(しんちゅう)、ステンレス又はアルミなどでできたプレート上の標識でアンカーピンを設置することで堅牢に設置することができます。L型側溝やコンクリート地面に貼り付けセメントなどで固定します。
⑤金属鋲
金属性の境界標でコンクリート面、アスファルト面などにドリルで穴をあけ、金属鋲を打ち込み固定します。
⑥木杭
サイズは様々ですが1〜2年程度で腐食しますので耐久性に欠けます。仮杭又は一時的な杭として使用します。
(4) 境界標設置のポイント
境界標は土地家屋調査士や行政によって設置されますが、設置するときは次のようなポイントがあります。
①不動性
簡単に移動しないよう堅牢に設置します。
②永続性
耐久性のある堅牢な境界標を設置します。
③視認性
境界標が誰にでもわかるように、赤ペンキを塗るなどして明瞭にしておきます。
④特定性
土地の境界標は、設置状況が位置を特定できるようにします。
⑤証拠性
境界標を設置した場合は、境界を確認した経緯がわかるように、関係者間で筆界確認書などを保管しておきます。
⑥管理性
現地の状況(地目・地積など)と登記されている記録とに異なる点がある場合には、現況と登記記録を一致させるよう努力します。
上記ポイントに気をつけていても、境界標が正しい位置ではなく工事や天災などにより異なることもありえます。
また、境界標を正しい位置に打ちたくても、下地の関係で打てない場合には多少ずれた位置に境界標を打たざるを得ない場合も考えられます。そのため、境界標は境界の目印ではありますが完全に正確な位置を示しているとは言い切れません。地積測量図との確認が最終的に必要です。
3.隣地との境を示す境界標の管理と境界標がない場合の確認
(1) 境界標の存在の確認
➀境界標の存在の確認
隣地との間に境界標が設置されているかを確認します。ない場合、なくなってしまった場合もあります。
土地の売却を予定していても、所有する土地の範囲が明確であることが必要です。境界標で第三者に境界(筆界)を明示することで事前にトラブルを防止できます。
②境界標がない場合
天災や道路工事、塀の築造や移動などで、亡失してしまって境界標がない場合もありますが、まず以下の方法で探してみます。
・塀の上、横に金属標がないか確認する。
・地面を掘って確認する。
・盛り土されている場合は土を削って確認する。
・古い風化した石の場合もあるので、四角形の石などがないか、あればその表面の汚れを取り、矢印などの痕跡がないかを確認する。
(2) 地積測量図があるかどうかの確認
境界標の管理には法務局にある地積測量図が有効です。土地の地積測量図が法務局にあるかを確認してみましょう。地積測量図は最寄りの法務局で取得することができます。2005(平成17)年以降に作成された地積測量図には原則、座標値や辺長が記載されていて、境界標が移動・亡失・破損されていても地積測量図を基に位置を復元できます。
地積測量図がない場合や、2005(平成17)年以前の地積測量図しかない土地もあります。
(3) 登記面積と現況面積を確認
地積測量図が法務局にあったとしても何十年も前に作成されたものである場合、当時の測量技術は大分未熟であったため、実際とは大きく違っている場合があるほか境界標の表示がないものがほとんどです。
また、現況と道界の境界標が不一致の場合もあります。例えば境界が曲線状で工事の際のコンクリート材や建材が直線状の場合は、境界の部分的に不一致が生まれたりします。また、工事の際に境界標がなく地積測量図との確認が不十分なまま工事をし、後から正確な測量がされ境界標が打たれ、現況と不一致でも現況をすぐ変えるためにいかず、現況とずれた位置に境界標がある場合などもあります。
地積測量図が無い場合は測量が必要となる場合が多くあります。
まとめ