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譲渡所得の確定申告をしなかった場合などの罰則とは
譲渡所得の確定申告をしなかった場合などの罰則とは
不動産売却によって利益があった場合、翌年の2月16日から3月15日までの間に、税務署に確定申告をしなければなりません。しかし、税金を払いたくないと思う気持ちもあり確定申告をしなかった場合、もしくは、譲渡所得を少なく申告した場合、どのような罰則がかかるのかを知っておくことが必要です。罰則ですから当然正しく申告していたよりは打撃の大きいものとなります。譲渡所得の確定申告をしなかった場合の罰則の種類、内容、加算税率などについて紹介します。
目次
1. 譲渡所得の申告をしなければならない人とは
2. 譲渡所得をしなかった場合の罰則―無申告加算税
(1) 無申告加算税とは
(2) 無申告加算税の金額
(3) 軽減措置
(4) 要件を満たせば無申告加算税が課されないこともある。
3. 譲渡所得の修正申告と過少申告加算税
(1) 過少申告加算税とは
(2) 過少申告加算税の金額
(3) 軽減措置
4. 故意に譲渡所得の確定申告をしなかった場合の罰則―重加算税
(1) 重加算税とは
(2) 重加算税の金額
5. 譲渡所得をしなかった場合の罰則―延滞税
(1) 延滞税とは
(2) 延滞税の税率
(3) 課税対象
(4) 延滞税の計算期間の特例
まとめ
1.譲渡所得の申告をしなければならない人とは
譲渡所得の申告をしなければならないのは、次のような人です。
・不動産を売却して譲渡所得を得た人
・資産の売却などで所得を得た人で、給与所得、退職所得以外に20万円超の所得がある人
・一般口座または源泉徴収のない特定口座で株式等を取引して利益(譲渡所得)を得た人
・一時所得(懸賞賞金・競馬・競輪の払戻金、保険の満期保険金など)を受け取った人(収入金額から収入を得るために要した費用を差し引いた金額が、年間50万円以下であれば確定申告は不要です。)
不動産譲渡の場合は、登記の名義変更をするため必ず税務署には察知されます。
2.譲渡所得をしなかった場合の罰則―無申告加算税
(1) 無申告加算税とは
無申告加算税とは、対象となる取引があったにもかかわらず、確定申告をしなかった場合に、通常の申告で発生する税額に加えて加算される税金です。
(2) 無申告加算税の金額
無申告加算税の金額は、原則として納付すべき税額が、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の税率をかけて計算されます。
(3) 軽減措置
申告期限までに申告しなかった場合でも、税務署による調査を受ける前に、自主的に期限後申告すれば税率が軽減されます。
無申告加算税の金額は、税務調査の事前通知前であれば5%、事前通知後は50万円以下までは10%、50万円超は15%となります。
・無申告加算税の計算例
例えば、納付すべき税額が80万円であり、税務調査の指摘を受けて期限後申告を行った場合には、13.5万円の無申告加算税が課されます。
[無申告加算課税額=50万円×15%+(80万円ー50万円)×20%=13.5万円]。
これに対し、税務調査前の事前通知前に自主的に期限後申告を行えば、無申告加算税は4万円(無申告加算課税額=80万円×5%=4万円)に軽減されます。
(4) 要件を満たせば無申告加算税が課されないこともある。
申告期限に間に合わなかった場合でも、1カ月以内に申告すれば無申告加算税が課されないこともあります。このためには次の2つの要件を満たすことが必要です。
➀期限後申告により、納付すべき税額の全額を法定納期限までに納付していること。
②期限後申告書を提出した日から起算し過去5年間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、無申告加算税の不適用を受けていないこと。
この措置は、あくまでやむを得ない事情で申告期限に間に合わなかった人を救済するものであり、過去5年以内に無申告や悪質な申告があった人は救済されない仕組みになっています。
期限後申告によって納める税金は、申告書の提出日が納付期限となります。そのため、無申告加算税の不適用を受けるには、申告書を提出したその日のうちに納付を済ませないといけません。
3.譲渡所得の修正申告と過少申告加算税
(1) 過少申告加算税とは
本来より税額を少なく申告していた場合、「修正申告」により誤った内容を訂正し、不足している税金を納める義務があります。
過少申告加算税とは、税務調査で指摘されて修正申告をした場合や、税務署から申告税額の更正を受けた場合に、不足していた税金に加え、ペナルティとして課される税金です。
(2) 過少申告加算税の金額
過少申告加算税の金額は、新たに納めることになった税額の10%です。新たに納める税額が、当初の申告納税額と50万円のいずれか多い額を超える場合、超える部分の税率は15%となります。
(3) 軽減措置
税務調査を受ける前かつ事前通知前に、自主的に修正申告をすれば過少申告加算税はかかりません。
・過少申告加算税の計算例
例えば、本来納付すべき税額が120万円のところ、50万円しか申告しておらず、税務調査の指摘を受けて修正申告を行ったとします。その場合は、新たに納付する70万円の税金に加え、8万円の過小申告加算税が課されます
不足していた税額の修正申告後税額=120万円―50万円=70万円
当初の申告納税額と50万円のいずれか多い額を超える場合、超える部分の税率は15%となるため、50万円以上なので税率は15%となり過小申告加算税額は次のようになります。
過小申告加算税額=50万円×10%+(70万円ー50万円)×15%=8万円
4.故意に譲渡所得の確定申告をしなかった場合の罰則―重加算税
(1) 重加算税とは
重加算税とは、対象となる取引があったにもかかわらず隠ぺいしようとした場合など、悪質なものと判断されるときに適用される、通常の申告で発生する税額に加えて加算される税金です。
(2) 重加算税の金額
重加算税の金額は、故意に確定申告をしなかった場合には納付すべき税額の40%、故意に税金を過少申告した場合には納付すべき税額の35%です。仮装等がない場合に比べてかなり重い罰則となっています。
5.譲渡所得をしなかった場合の罰則―延滞税
(1) 延滞税とは
延滞税とは、無申告や過少申告などによって納期限までに納税していない場合は、加算税に加え、納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて加算される税金です。
(2) 延滞税の税率
➀延滞期間2カ月以内の場合
納期限の翌日から2カ月を経過する日まで年7.3%と、特例基準割合(※)+1%のいずれか低い割合
②延滞期間2カ月を超える場合
納期限の翌日から2カ月を経過する日以後年14.6%と、特例基準割合(※)+7.3%のいずれか低い割合
(※)特例基準割合=「国内銀行の新規短期貸出約定平均金利の前々年10月~前年9月における平均」+1%
(3) 課税対象
延滞税が課されるのは、本来納税すべき税額(本税)のみであり、加算税に対しては課されません。
(4) 延滞税の計算期間の特例
不正などにより課税を免れた場合などを除き、次のいずれかに該当する場合には、一定期間延滞税を課さない特例があります。
➀法定申告期限内に申告書が提出され、期限後1年を経過してから修正申告または更正があった場合
・延滞税が課されない期間
法定申告期限から1年を経過する日の翌日〜修正申告または更正があった日まで
②法定申告期限後に申告書が提出され、期限後1年を経過してから修正申告または更正があった場合
・延滞税が課されない期間
期限後申告書の提出日の翌日から1年を経過する日の翌日〜修正申告または更正があった日まで
③確定申告書を提出後に減額更正がされ、その後さらに修正申告または更正があったとき
・延滞税が課されない期間
【職権により減額更正された場合】
当初の申告における納付日の翌日〜修正申告または更正があった日まで
【更正の請求により減額更正された場合】
「当初の申告における納付日の翌日〜減額更正まで」と、「減額更正の翌日から1年を経過する日の翌日〜修正申告または更正があった日まで」
まとめ