TOP > 不動産売却の基礎知識 > 不動産の売却 > 3,000万円特別控除と買換え特例はどちらが得か?
3,000万円特別控除と買換え特例はどちらが得か?
3,000万円特別控除と買換え特例はどちらが得か?
不動産を売却して譲渡所得(利益)が発生した時には、得られた利益額に応じて所得税と住民税がかかります。額が大きいほど納める税金も上がるため、税金を安く抑える特例制度を使わない手はありません。一定の要件を満たしていれば、譲渡所得には、3,000万円特別控除や特定居住用財産の買換え特例が適用されますが、併用は認められていません。3,000万円特別控除と特定居住用財産の買換え特例は、どちらを利用した方が得なのかをみていきましょう。
目次
1. 3,000万円特別控除と特定居住用財産の買換え特例とは
(1) 3,000万円特別控除とは
(2) 特定居住用財産の買換え特例とは
(3) 3,000万円特別控除と特定居住用財産の買換え特例は併用できない。
2. 3,000万円特別控除と特定居住用財産の買換え特例の比較
3. 3,000万円特別控除と特定居住用財産の買換え特例のメリット・デメリット
(1) 3,000万円特別控除
(2) 買換え特例
4. 3,000万円の特別控除と買換え特例の計算式
まとめ
1.3,000万円特別控除と特定居住用財産の買換え特例とは
(1) 3,000万円特別控除とは
3,000万円特別控除とは、居住用の不動産を売却した場合に、所有期間に関係なく譲渡所得から特別控除として、最大3,000万円を差し引くことができるという特例です。
そのため譲渡所得が3,000万円以下なら税金がかからず、それを超える部分にのみ課税されます。
(2) 特定居住用財産の買換え特例とは
特定居住用財産の買換え特例とは、居住用の不動産の所有期間が10年を超え、居住期間が10年以上の場合に、居住用の不動産を売却した金額より買い換えたマイホームの購入金額の方が大きければ、買い替えの際、売却益に対する譲渡所得税等は課税されず将来に繰り延べできる制度です。課税のタイミングを将来に先送りするため、税金の支払いを免除される訳ではないので注意してください。
〇居住期間10年以上の要件
買換え特例の適用要件になっている「居住期間10年以上」とは、必ずしも継続していなくてもよいことになっています。従って途中で、転勤などさまざまな理由で適用対象の住宅に住んでいない期間があったとしても、合計で居住期間が10年以上になれば、この要件を満たすことになります。
(3) 3,000万円特別控除と特定居住用財産の買換え特例は併用できない。
➀3,000万円特別控除と特定居住用財産の買換え特例とは選択制になっています。
売却した年、その前年及び前々年にどちらかの適用を受けていると利用することができません。
②居住用財産買換えの特例を受けるため申告し、取得期限内に取得できなかった場合、災害等、その者の責めに帰せられないやむを得ない事情がある場合を除き3,000万円の特例控除および、軽減税率の特例は受けられません。
2.3,000万円特別控除と特定居住用財産の買換え特例の比較
3,000万円特別控除と特定居住用財産の買換え特例の比較をすると次のような表にまとめたものになります。
項目 | 3,000万円特別控除 | 特定居住用財産の買換え特例 |
居住用不動産の所有期間 | 不問 | 10年超 |
居住期間 | 不問(ただし、生活の本拠として住むこと) | 10年以上 |
特例内容 | 譲渡益から3,000万円を控除 | 買換えに際して譲渡益の課税を先送り |
買換えした資産の売却時の取得額 | 新たに取得した住宅の取得価額 | 買換えで売却した住宅の取得価額を引き継ぐ。 |
買換えた住宅を翌年、翌々年売る際の譲渡所得税 | 新たに出た譲渡所得に対して短期譲渡所得 | 引き継いだ取得価額を超える譲渡所得に対して短期譲渡所得 |
3.3,000万円特別控除と特定居住用財産の買換え特例のメリット・デメリット
3,000万円の特別控除と買換え特例と、どちらが得かはケースバイケースです。それぞれのメリット・デメリットを比較します。
(1) 3,000万円特別控除
➀メリット
・3,000万円以上の利益が出るケースは珍しいため、この特例を使えばほぼ非課税になり、節税効果が大きい。
・共有名義のマイホームを売却した場合は、それぞれ特例を使って6,000万円まで控除することが可能
②デメリット
・国民健康保険に加入している場合、売却した翌年の国民健康保険料は、3,000万円が控除される前の所得を基礎として算出されるため、1年間保険料が値上がりしてしまう場合がある。
(2) 買換え特例
➀メリット
・買い替えた不動産を売却しない限り、課税されるタイミングは来ない。
・売却益が3,000万円を超える場合でも課税を回避できる。
・課税を繰り延べるので、国民健康保険は値上がりしない。
②デメリット
・課税が免除されるわけではないので、将来売却したときに課税される。
・長期的にみると節税効果があるとも言い切れない。
買換え特例は「売却益が3,000万円を超えていて、買い替えた家をずっと売らない」場合なら、利用するメリットは大きいというのがポイントです。
買換え特例は課税されるタイミングを先送りにするだけで、非課税になる制度ではなく、将来的なことを考えると得にならない可能性もあります。
基本的には、売利益が3,000万円を超えることは稀であり、保有期間が10年超の場合、3,000万円の特別控除を利用した方が節税効果は大きいと言えます。
4.3,000万円の特別控除と買換え特例の計算式
居住用の不動産の譲渡所得が3,000万円以下の場合は、「3,000万円特別控除」を使えば税金は発生しません。
3,000万円を超えた場合は、買換え資産の価格により「3,000万円特別控除」か「特定居住用財産の買換え特例」のどちらを利用するとその時点で良いのかの計算式は次のようなものです。
- 3,000万円特別控除を適用した場合
A:譲渡所得を求める。譲渡収入−(取得費+譲渡費)
B:「3,000万円特別控除」を適用する
計算式
譲渡所得―3,000万円=課税額
10年超所有しているので「10年超所有軽減税率の特例」を適用することができます。
課税額×14.21%=所得税・住民税
- 特定居住用財産の買換え特例を適用した場合
譲渡所得は、譲渡収入(譲渡代金―買換え代金)―譲渡費用です。
譲渡費用は、(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×譲渡収入金額÷譲渡代金です。
「譲渡代金>買換え代金」の場合には、その差額について長期譲渡所得の税率(20.315%)で課税されます。
ただし、この取得費は将来売却した時に引き継がれることに注意が必要です。
まとめ