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売却する土地に地中埋設物があった場合には
売却する土地に地中埋設物があった場合には
地中埋設物とは、地中に埋まった廃棄物のことです。土地売却後に地中埋設物が見つかった場合、売主は買主から損害賠償請求や契約不適合責任による契約解除を求められるおそれがあります。売主が契約不適合責任を問われる場合や、予防策としてのどのようなものがあるかなどを紹介します。
目次
1. 地中埋設物とは?
2. 地中埋設物に関する売主の法的責任
(1) 履行の追完請求(民法第562条)
(2) 代金減額請求(民法第563条)
(3) 損害賠償請求(民法第564条、第415条1項)
(4) 売買契約の解除(民法第564条、第541条または第542条)
3. 地中埋設物に関する不動産業者の法的責任
(1) 信義則上の調査義務
(2) 宅地建物取引業法上の説明義務
4. 契約不適合責任に関するトラブルを防ぐ方法
(1) あらかじめ重要事項説明で事実を告知しておく方法
(2) 売却前の土地調査と埋設物の撤去
まとめ
1.地中埋設物とは?
地中埋設物とは、土地の地下に埋まっている物全般を意味します。多くの場合は廃棄物が該当します。
地中埋設物の種類や大きさはさまざまであり、主な地中埋設物としては以下のものが挙げられます。
・以前建っていた建物の基礎部分
・コンクリート片や屋根瓦などの建築資材
・使われていない水道管
・使われていない埋められた浄化槽
・使われていない井戸
・大きな石(転石) など
地中埋設物の中には、土地の利用に支障がないものも存在し、その場合は特に撤去工事などをせずに放置するのが一般的です。しかし、地中埋設物の大きさなどによっては、予定していた建物の建築に支障をきたすなどの影響が生じて問題となるケースがあります。また、井戸は地下に水路があると地盤の上から嫌がる人もいます。また、浄化槽などは不快なものとして嫌がられるでしょう。
建設に支障が生じる場合には、埋設物の除去には費用がかかるため、買主が売主に対して訴えや損害賠償請求を起こす可能性もあります。
2.地中埋設物に関する売主の法的責任
地中埋設物の存在が土地の利用に悪影響を及ぼしている場合、買主は売主に対して法的責任を追及することが考えられます。
民法では、売買の目的物が、種類・品質・数量のいずれかの点で売買契約の内容と適合しない場合には、売主が「契約不適合責任」を負うものと定められています(民法第562条以下)。
土地の地下に地中埋設物が存在することが原因で、契約上予定していた方法による土地の利用ができなくなった場合、土地の「品質」に関する契約不適合が存在すると評価されます。
この場合、買主は以下のいずれかの方法により、売主の契約不適合責任を追及することが可能です。
(1) 履行の追完請求(民法第562条)
契約の内容に適合する完全な目的物を引き渡すように請求できます。
地中埋設物の場合、売主側で撤去工事を実施したうえで改めて引渡しを行うことになります。
(2) 代金減額請求(民法第563条)
買主は相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に売主が履行の追完をしない場合は、契約不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます。
地中埋設物の場合、撤去工事費用相当額の代金減額が認められる可能性が高いです。
(3) 損害賠償請求(民法第564条、第415条1項)
契約不適合が原因となって、買主が損害を負った場合買主はその損害の賠償を請求できます。
地中埋設物の撤去工事を買主側で行った場合、撤去工事の費用などが損害賠償請求の対象となります。
(4) 売買契約の解除(民法第564条、第541条または第542条)
売主が売買契約上の債務を完全に履行することが不能である場合などには、買主は売買契約自体を解除することが認められます。
地中埋設物が存在するケースでは、撤去工事が事実上不可能であり、かつ地中埋設物の存在によって土地の利用に具体的な悪影響が生じている場合に限り、買主による売買契約の解除が認められると考えられます。
売主の契約不適合責任を追及できる期間は、原則として買主が不適合(地中埋設物の存在)を知った日から1年間です(民法第566条本文)。
ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかった場合には、期間無制限で売主の契約不適合責任を追及できます(同条但し書き)。
3.地中埋設物に関する不動産業者の法的責任
不動産業者が土地の売買を仲介する場合や、不動産業者が自ら売主となって土地を売却する場合には、宅地建物取引業法の規定が適用されます。
宅地建物取引業法との関係では、不動産業者は買主に対して、以下の法的義務を負担します。
(1) 信義則上の調査義務
宅地建物取引業者は、買主を含む取引関係者に対して、信義を旨とし誠実に業務を行う義務を負っています(宅地建物取引業法第31条1項)。これを取引上の「信義則」といいます。
信義則の中には、買主が不測の損害を被らないように、売買の対象物を十分に調査する義務が含まれていると解されます。たがって、不動産業者は買主に対し、土地について合理的に実施可能な調査を尽くしたうえで、土地の利用上支障を生じる地中埋設物が存在しないことを確認する義務を負います。
(2) 宅地建物取引業法上の説明義務
宅地建物取引業者は、宅地の売買またはその仲介などを行う際、買主の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項を説明する義務を負います(宅地建物取引業法第47条1号ニ)。
仮に地中埋設物が存在する可能性がある場合、土地の利用に支障をきたすおそれがあることから、不動産業者はその事実を買主に説明しなければなりません。
4.契約不適合責任に関するトラブルを防ぐ方法
契約不適合責任に関するトラブルを防ぐ方法には次のようなものがあります。
(1) あらかじめ重要事項説明で事実を告知しておく方法
売却前から地中埋設物の存在を把握している場合、あらかじめ重要事項説明で事実を告知しておく方法があります。
裁判における判例でも、買主が購入前から存在を認識していたと判断されると、契約不適合責任を問われない可能性が高いと言えます。
(2) 売却前の土地調査と埋設物の撤去
売却前に土地を調査、撤去しておくことで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
①地中埋設物の調査方法
地中埋設物を調査する主な方法は、以下の通りです。
a. 土地の利用履歴を調査する「地歴調査」
登記簿や古地図、地形図などを確認して、過去どのように土地が利用されていたかを確認します。現在は住宅地として利用されていても、過去の資料を確認してガソリンスタンドやクリーニング店、工場などに利用されていたことがあるなら、埋設物があったり、薬品などで土壌が汚染されたりしている可能性があります。
b. 専用の探査機で埋設物を探し出す「地中レーダー調査」
地中レーダー探査は、地歴調査の結果、地中埋設物が存在する可能性がある場合に行われる非破壊検査です。地面をアンテナ走査し、レーダーチャートと呼ばれる反射波形から、地中埋設物や空洞の有無、地盤の緩みを読み取ることができます。
c. サンプル採取や打撃による強度調査をおこなう「ボーリング調査」
地歴調査、地中レーダー探査を経て、地中埋設物がある可能性が高い場合に行われるのがボーリング調査です。ボーリング調査は土地にボーリングマシンで地面に円筒形状の孔をあけて行います。
②調査にかかる費用・相場
一般的に、地歴調査で5〜10万円、地中レーダー調査で10〜15万円、ボーリング調査で30万円程度が相場です。
③撤去にかかる費用・相場
撤去は問題の解決に直結します。撤去にかかる費用は、作業する業者、地中埋設物の種類や大きさによって異なります。
一般的な住宅地に多い地中埋設物は、瓦やコンクリートガラなどで、重機でそれらを掘り起こした後、トラックで産業廃棄物処理場に持って行き廃棄します。コンクリート、レンガなどの埋設物により異なりますが、費用の目安は個人住宅では一般的には20~30万円かかる場合があります。
まとめ