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相続した空き家の売却―「空き家特例」の使える時・使えない時 PART2
相続した空き家の売却―「空き家特例」の使える時・使えない時 PART2
(PART1より続く)
目次
1. 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(以下、空き家特例)
(1) 空き家特例の対象
(2) 空き家特例の適用を受けるための要件
2. 空き家特例の使える時・使えない時
(1) 土地と建物
(2) 建物の取り壊し費用
(3) 建物の取り壊しの時期
(4) 建物の取り壊しの範囲
まとめ
2. 空き家特例の使える時・使えない時
(1)土地と建物
(問3)
父が先に亡くなり、相続人は母と子の2人で、土地は母が引き継ぎ、家屋は子が引き継ぎました。その後、母も亡くなり子は土地も母から相続しました。そのため、土地家屋をすべて所有することになりました。子が不動産全体を売却する場合、空き家特例を使えるでしょうか?
(答3)
空き家特例を使うことが出来ません。なぜなら、子は母から土地と建物をセットで相続していないからです。
空き家特例の要件では、「売った人が、相続又は遺贈により被相続人の居住用家屋及び被相続人居住用の家屋の敷地等を取得したこと」の規定があり、土地と建物をセットで相続していなければならないからです。
(2) 建物の取り壊し費用
(問)
土地建物一体の価格が1億円の物件を、取り壊し費用600万円を相殺し9,400万円で売却した場合、空き家特例は使えるでしょうか?
(答)
この場合、売却額が9,400万円で1億円以下なので要件をクリアしているように見えますが、取り壊し費用は売却額に含めて計算しなければなりませんので1億600万円となり1億円を超え、特例は受けられません。取り壊し費用は本来売主が負担すべきという考え方にのっとってこのような取扱いになっています。
(3) 建物の取り壊しの時期
(問1)
相続により取得した被相続人の自宅家屋とその敷地を譲渡するため、1月に売買契約を締結し、契約締結にあたり、買主の要望で「当該土地上の建物を3月までに売主において取り壊し、更地にして引き渡す」旨の特約条項を売買契約書に記載して譲渡する場合、空き家特例は使えるでしょうか?
(答1)
契約通り売主が自宅家屋を取り壊し、引渡日ベースで申告する場合には、空き家特例の適用可能です。
資産の譲渡の時期は、原則として資産の引渡日とされ、引渡日の属する年分の譲渡として申告する場合には、引渡時までに被相続人の自宅家屋が取り壊されていれば、空き家特例の適用要件を満たすことになります。
(問2)
相続により取得した被相続人の自宅家屋の敷地を譲渡するため、本年11月に売買契約締結をし、売買契約の締結にあたり、「当該土地上の建物を来年1月20日までに売主において取り壊し、更地にして引き渡す。」旨の特約条項を売買契約書に記載して譲渡し、確定申告は、契約日ベースで本年中に行う場合、空き家特例は使えるでしょうか?
(答2)
空き家特例の適用はできません。
建物の取り壊しは、引渡し前までに完了させる必要があります。
空き家特例の適用にあたっては、納税者が選択した譲渡時期において、適用要件が充足されているかを判定します。そのため、契約日ベースで申告する場合、契約締結時までに建物の取壊しを行う必要があります。
(4) 建物の取り壊しの範囲
(問)
相続人が被相続人の自宅家屋とその敷地のほか、被相続人所有の車庫・倉庫を取得し、当該敷地の譲渡をする場合に、自宅家屋は取り壊し、車庫と倉庫は取り壊さずに譲渡する旨の売買契約の場合、空き家特例は使えるでしょうか?
(答)
自宅家屋、車庫及び倉庫の床面積の合計のうち、自宅家屋の床面積の占める割合に相当する部分について、空き家特例の適用可能です。
空き家特例の対象となる家屋とは居住の用に供していたと認められる母屋部分であるため、事例においては、自宅家屋の全部取り壊しを行えば、既存の車庫や倉庫などが存在していたとしても、特例適用可能となります。なお自宅の取り壊しは特例の前提として必要です。
ただし、上記のとおり、敷地のうち自宅家屋の床面積の占める割合に相当する部分のみが空き家特例適用対象です。
まとめ