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相続した実家の売却の決断ができない兄弟姉妹への説得ポイント
相続した実家の売却の決断ができない兄弟姉妹への説得ポイント
両親が死亡し実家の住宅がある場合、子供たちは実家に愛着もあり簡単には売却を決断できない場合があります。また、親とその家に同居していた子にとっては相続の問題は自分の住まいでもあり真剣な課題です。子供に複数の兄弟姉妹がいて、特定の人が実家に愛着があり売却の決断ができない場合で、相続で現金化が必要な場合、他の相続人である兄弟姉妹が売却を説得する必要があります。その場合の説得のポイントについて説明します。
目次
1. 遺産の分割方法とそれぞれのメリット・デメリット
(1) 現物分割
(2) 代償分割
(3) 換価分割
(4) 共有分割
2. 特定の相続人が実家に愛着があり、売却の決断ができない場合の説得ポイント
(1) 相続財産の兄弟姉妹間で確認
(2) 現物分割では解決できないことの確認
(3) 共有分割はできないことの確認
(4) 代償分割はできるのか?
(5) 換価分割して物件は売るしかないと説得する。
(6) 換価分割のメリットを重ねて説明する。
まとめ
1.遺産の分割方法とそれぞれのメリット・デメリット
遺産分割の方法には、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割の4つの主な方法があります。
(1) 現物分割
①現物分割とは
現物分割とは、「土地は相続人Aに、建物は相続人Bに、預金は相続人Cに分配する」といったように、個々の遺産を現物のまま分配していくという方法です。下記のようなケースでは、現物分割が有効であるといえます。
・均等に分配しやすい遺産(例:現預金)が多いケース
・遺産ごとの価値の差が小さいケース
・不動産等が複数あり、一定の金融資産もあり金額の調整が可能なケース
・その他当事者間での調整や合意の取りつけが容易なケース
②メリット
・遺産をそのまま残すことができる。
・分割の内容がわかりやすい。
・現預金が多額にあり資産の中心である場合では、遺産の評価の手間が少なく手続が簡単である。
③デメリット
・遺産ごとの価値に差異があると、平等に分配することが難しく、公平性に欠ける。
(2) 代償分割
①代償分割とは
代償分割とは、分割しにくい不動産等の遺産を、ある相続人が現物のまま引き継ぐことで、法定相続分以上の遺産を得る代わりに、他の相続人に対して代償金を支払うという方法です。下記のようなケースでは、代償分割が有効であるといえます。
・現物分割を行うと相続人間で不公平が生じるケース
・不動産を利用し続ける相続人がいるケース
・被相続人の事業を承継する相続人(=後継者)がいるケース
・代償金を支払う人に資金的な余裕や目当てがあるケース
・代償金を支払う人が被相続人の生命保険金の受取人になっていて、保険金額が代償金相当額になるケース
②メリット
・不動産遺産をそのまま残すことができる。
・不動産を承継する相続人においては今までの住宅に住み続けることができる。
・他の相続人は金銭を得ることができる。
③デメリット
・現物のまま引き継ぎたいという相続人への負担が重くなる。
・現物のまま引き継ぐ相続人の資力によっては代償金が支払われないおそれがある。
・不動産の評価方法について相続人間でもめるおそれがある。
④代償分割での配慮点
a. 他の相続人が認めれば分割払いの方法もある。
代償金の分割払いについては、余り長期に渡るものではなく、他の相続人が納得できる条件であれば分割払いも可能となります。
b. 代償財産は現金以外でも可
代償財産は現金が中心ですが、株式などでも可能です。譲渡所得が生じ得る財産の場合、代償財産を渡した者は、これらを時価で売却したものとみなされ、その結果、差益が出る場合には、その利益に対して、譲渡所得税及び住民税が課せられる場合もあります。
(3) 換価分割
①換価分割とは
換価分割とは、現預金以外の不動産や株式等の遺産を売却して現金化し、分配していくという方法です。したがって、下記のようなケースでは、換価分割が有効であるといえます。
・不動産を利用し続ける相続人がいない等、遺産を現物のまま引き継ぎたいと望む相続人がいないケース
・代償金の支払いができないため代償分割が難しいケース
・遺産の大部分が不動産であり、各不動産間での価値の差が大きく調整が困難なケース
②メリット
・平等に分配することができる。
・不動産を売却することで維持管理を行う必要がなくなる。
③デメリット
・遺産をそのまま残すことができない。
・売却するため、処分費用や譲渡所得税等がかかる。
・売却するまでに時間や手間がかかる。
(4) 共有分割
①共有分割とは
共有分割とは、分割しにくい不動産等の遺産を、複数の相続人で、各相続人の相続分に応じて共同で所有するという方法です。共有分割は、相続人間の話し合いがまとまらず、これまで説明してきた他の方法で遺産分割を行うことができない場合に、とりあえずの遺産分割の方法として用いられることが多いといえます。しかし、後に共有者間で争いが生じるおそれがあるため、もし共有分割を行った場合にはできる限り早期に共有状態を解消することが望ましいといえます。
②メリット
・遺産をそのまま残すことができる。
・平等に分配することができる。
③デメリット
・売却や取り壊しといった処分をしたい場合に共有者全員の合意が必要になり、自由度が低い。
・共有者のなかで亡くなった者がいる(=新たな相続が発生する)度に共有者が増えて、権利関係が複雑になる。
2.特定の相続人が実家に愛着があり、売却の決断ができない場合の説得ポイント
相続財産は不動産では自宅だけであり、金融資産も富裕層には該当しない程度の一般の方を対象に考えてみます。
(1) 相続財産の兄弟姉妹間で確認
・金融資産はどれだけあるのか
・不動産は自宅だけなのか
相続する財産の内容、おおよその総額を把握します。
自宅の不動産が分割するほど大きくはないことを確認します。
金融資産が自宅不動産にある程度見合うほどあれば、不動産と現金預金で分け合うことが可能です。
(2) 現物分割では解決できないことの確認
現金預金が不動産価格に見合うほどなく、不動産も分割するほど大きくないならば現物分割以外の方法を考えなければならないことを確認します。
(3) 共有分割はできないことの確認
住まいの不動産を継承して住み続けたい特定の相続人以外の他の相続人にとっては、共有しても登記だけの問題で、使うこともできず、お金に変えることもできず、まったく意味がないことを確認します。
(4) 代償分割はできるのか?
代償分割を行うには、代償金を渡す側の相続人に、取得する遺産の価額に見合うだけの金銭や財産がなければできません。遺産が自宅の不動産しかない場合で、そのまま自宅に住み続けたい相続人が、その不動産を単独で相続し、他の共同相続人に対して金銭を引き渡す場合などがこれに該当します。
相続した実家に愛着がありその家に住み続けたい人に、それだけのお金を要求します。
お金が払えるのかどうかを確認します。
お金があれば代償分割が可能です。しかし、多くの場合それだけのお金は持っていない場合が多いでしょう。
(5) 換価分割して物件は売るしかないと説得する。
現物分割や代償分割では、財産がそのままの形で相続されるため、相続人の間で不平等となる可能性があります。現金化して分配する換価分割ではそのようなリスクが生じる可能性は低くなります。
(6) 換価分割のメリットを重ねて説明する。
①納税資金を用意できること
換価分割により現金化することで、相続税の納税資金を用意できるというメリットもあります。
②相続する不動産の評価額は、時価よりも低く相続税の節税になること
相続税の計算をするときは相続財産の評価額を算出しますが、一般に土地は時価の8割程度、建物は時価の6~7割程度で評価されます。評価額が低ければ、その分相続税も低くなります。
その他相続した物件の売却に伴い税制上の控除があります。
まとめ