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一人暮らしの親を、介護施設に入れる時期は?
一人暮らしの親を、介護施設に入れる時期は?
高齢者の一人暮らしが大きく増加しています。なお、推計では2040年には高齢者の一人暮らし率が男性20.8%・女性24.5%になると予測されており、より大きな社会問題になる恐れがあります。同時に、親の一人暮らしをどうするかは、離れて暮らす子供の問題でもあります。高齢の親の一人暮らしはやはり心配です。介護施設に入れる時期について早めに考えておくことが必要です。また、不動産としての実家をどうするかも問題です。
目次
1. 一人暮らしの高齢者が抱える生活の問題点
(1) 健康や病気への不安
(2) 詐欺・犯罪に巻き込まれる危険性
(3) 介護が必要な状態になること
(4) 認知症の発症・進行の危険性
(5) 自然災害への対応の不安
(6) 独居老人の孤独死問題
(7) 火の不始末と火災の危険性
(8) ゴミ出しが正しくできない、ゴミ屋敷の危険性
(9) その他、生活管理の問題
2. 介護の認定の判断
(1) 要介護2程度から施設入所を検討する必要が
(2) 要介護3から「特別養護老人ホームへの入居」が可能に
3. 施設入所を嫌がる親の説得
まとめ
1.一人暮らしの高齢者が抱える生活の問題点
高齢者が一人暮らしをすることで起こりやすい問題には、主に下記のようなものが挙げられます。離れて暮らす子供などの家族ではできるだけ正確に状況を把握しておくべきでしょう。
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健康や病気への不安
加齢とともに病気にかかりやすくなったり、症状が慢性化しやすくなったりするなど、老化に伴う身体の変化は誰もが避けられません。頼れる家族が同居していない一人暮らしでは、病気やケガなど異常事態が起こったとき、自力で対処できるかどうかの不安があります。
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詐欺・犯罪に巻き込まれる危険性
振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺や、悪質な手口で商品を売りつける悪質商法など、高齢者を狙った犯罪は年々増加傾向にあるといわれています。特に被害者の約8割を65歳以上の高齢者が占めています。また、特殊詐欺や悪質商法などの高齢者を狙った犯罪に一人で対応できない恐れがあります。
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介護が必要な状態になること
これまで、一人暮らしで自立した生活を送ってきた高齢者にとって、人のサポートや介護費用が必要になる生活は、肉体的・精神的に大きな負担となります。また、要介護状態になって家の中に引きこもりがちになると、人との交流機会が減り、生きがいの低下にもつながってしまいます。
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認知症の発症・進行の危険性
認知症が発症しても、高齢者本人には自覚がないケースが多くあります。家族と同居していれば、日常の言動の変化から周りが認知症に気づくかもしれませんが、一人暮らしの場合は自覚のないまま症状が進行してしまうおそれがあります。
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自然災害への対応の不安
日本は、地震や豪雨、台風、洪水といった自然災害の多い国です。「災害時に自分の力で対応できるだろうか」と不安に感じる高齢者も多いようです。
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独居老人の孤独死問題
一人暮らしをしている老人が最も気を付けなければならないのは、孤独死です。発見が遅れると近隣住民や、借家の場合は大家さんにも迷惑がかかります。なお、東京都監察医務院が公表している東京23区内の孤立死者数は、2003年は1,451人でしたが2015年には3,127人に倍増しています。
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火の不始末と火災の危険性
認知症とも関連しますが高齢になると料理での火災や、たばこの不始末による火災の危険性が増します。命にもかかわり近隣への危険性もあります。消火器もうまく操作できない可能性があります。
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ゴミ出しが正しくできない、ゴミ屋敷の危険性
ゴミの分別ができない、回収日とは異なるゴミ出しをするなど近隣トラブルになる可能性があります。また、中にはごみを貯めすぎゴミ屋敷化する危険性がある場合もあります。
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その他、生活管理の問題
服薬管理ができず、薬を飲まなかったりし病気が改善しないなどの問題があります。また、戸締りが不十分で泥棒や空き巣に入られる可能性も出てきます。
2.介護の認定の判断
本人の健康の度合を把握するには、病気以外では基本的に介護の度合いの把握が重要です。
まず、高齢者になれば行政の介護認定を受ける必要があります。
介護の認定をする担当者が自宅を訪問し、身体や精神などの具合をチェックします。
疾病や外傷等による心身の状態、認知機能や思考・感情等の状態など「介護の手間に係る審査判定」「状態の維持・改善可能性に係る審査判定」を通して、要介護状態の区分を決定します。結果は「要支援1、2」「要介護1~5」の7段階です。
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要介護2程度から施設入所を検討する必要が
要介護1では、基本的な日常生活でのサポートがあまり必要ありません。しかし、要介護2になると排泄・入浴など日常的な介護が必要になることがあります。立ち上がりや歩行といった動作にも支えを必要とするケースが多く、転倒の危険性も高まるため注意が必要です。
要介護2で利用できる介護は、在宅介護に関する居宅介護サービスがあります。また、施設サービスもあります。
➀居宅介護サービス
居宅介護サービスでは、訪問サービスがあり、代表的なものとして「訪問介護」「訪問看護」「訪問リハビリテーション」などがあります。
また、通所サービスがあり、通所サービスでは、日帰りで介護施設などの施設に行きサービスを受けられます。「通所介護(デイサービス)」「通所リハビリテーション(デイケア)」などがあります。
短期入所サービスもあり、代表例は「短期入所生活介護(ショートステイ)」です。
また、訪問・通所・短期入所を組み合わせた複合サービスとして「小規模多機能型居宅介護」があります。複数タイプのサービスを組み合わせられるため、ニーズに合ったサービスを利用できるのが利点です。
②施設サービス
施設サービスでは、次のようなものがあります。
- 介護付き有料老人ホーム
民間施設で最も代表的なものが「介護付き有料老人ホーム」です。人員体制や設備面の基準をクリアして「特定施設入居者生活介護」に指定されており、ホームの介護スタッフから24時間体制で介護を受けられます。介護サービスにかかる費用は、要介護度に応じた月額の一定料金です。定額であらゆるサービスを受けられます。「看護師24時間常駐で医療体制が充実」「レクリエーションが豊富」など、施設によって多様な特徴があります。
- 住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームには、基本的にホーム自体では介護サービスが含まれず、介護が必要な場合は、外部の介護サービスとの別途契約が必要な場合があります。なかには、併設する訪問介護やデイサービスを利用できる施設もあります。在宅で利用していたサービスを継続することも可能です。
介護サービスの料金は一定ではなく、利用した分だけ必要になります。そのため、介護の頻度が高まると利用料金も高額になることが懸念点です。その反面、生活の自由度は比較的高いので「決められたスケジュールで生活したくない」「外出も楽しみたい」という方にとってはメリットといえます。
- グループホーム
グループホームは、軽度の認知症の方が共同生活を送るための施設です。あくまでも「共同生活」の場としての特色を持ち、介護の必要度や医療的ニーズによっては対応できない段階があります。また、認知症の診断が入居条件の1つですので、診断を受けていない方は入居できません。
- サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、住宅型有料老人ホームと非常に似ています。介護が必要な場合は外部サービスを利用し、料金もその分発生する仕組みです。
- 要介護3から「特別養護老人ホームへの入居」が可能に
要介護3になると、日常動作を自力でおこなうことが困難になる方が多くなり、常に介護が必要な状態になります。要介護3段階から特別養護老人ホームへの入居申請が可能になります。要介護3から本格的に介護が必要になるのが一般的です。
3.施設入所を嫌がる親の説得
栄養状態の悪化や認知症の発症、歩行困難などによって自立した生活ができなくなってきたら施設入所の時期と言えます。要介護度も含めて総合的に判断します。
しかし、重要なことは本人の意思です。必要性は感じていても自由が奪われるなどの理由から集団的な生活を送る施設入所を嫌がる場合があります。
施設入所を嫌がる親の説得では、明らかに一人暮らしが困難な状態がはっきりしている場合は、医療ケア、介護サポートが受けられる施設への入所で不安が少なることを何度も説明する必要があります。
また、集団生活をしたことがない人は理屈抜きに施設を拒否する場合もあります。
そのような場合は、施設の見学が第1に必要です。行ってみて見てみて、施設の担当者から施設での生活の説明を聞くことが重要です。安心できるようになる場合が多くあります。
できれば、施設の協力を得て、すでに生活している人から直接話が聞けると安心できると思われます。
それでも嫌がる場合は、子どもの強い説得や引っ張ってでも行くなどの強い決意が必要な場合もあります。理屈抜きにわがままな場合もあるからです。
まとめ