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宅地建物取引業者の「義務・責務」についての事項とは PART1
宅地建物取引業者の「義務・責務」についての事項とは PART1
宅地建物取引業者は、不動産という高額で唯一無二の商品を扱うため、宅地建物取引業法という不動産業に関する特別の法律によって厳しく管理されています。宅地建物取引業は免許制で、かつ、行わなければならない事及び制限をかけられている事、してはならない事が定められています。なお、以下、第〇条と書かれているものはすべて、宅地建物取引業法の条文です。ここでは、宅地建物取引業者の「義務・責務」(しなければならないこと)についての内容を説明します。
目次
1. 取引における誠実性
2. 取引態様の明示
3. 媒介契約書の作成・公布
4. 重要事項の説明
5. 営業保証金の供託等に関する説明
6. 契約書の交付
7. 守秘義務
8. 従事者の証明書の携帯
9. 帳簿の備付け
10. 標識の掲示等
まとめ
1.取引における誠実性
以下、宅地建物取引業法に基づき、宅地建物取引業者の「義務・責務」について説明します。まず、取引における誠実性について説明します。
宅地建物取引業者は、取引について誠実に行わなければなりません。関連条項としては宅地建物取引業法で次のものが定められています。
(宅地建物取引業者の業務処理の原則)
第31条 宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。
(従業者の教育)
第31条の2 宅地建物取引業者は、その従業者に対し、その業務を適正に実施させるため、必要な教育を行うよう努めなければならない。
2.取引態様の明示
宅地建物取引業者は、自己が取引の当事者なのか、代理人なのか、あるいは、媒介なのか等の立場を明示しなければなりません。
宅地建物取引業者は、広告をする時あるいは注文を受けた時は、みずからが宅地建物取引においてどのような立場で関与するか明示しなければなりません。
・取引態様の別とは次のようなものです。
➀売主、買主
みずから売主、買主、交換の当事者となって売買又は交換をさせる場合
②代理
注文者(当事者)から代理の委託を受け、売買、交換若しくは賃貸を成立させる場合
③媒介(仲介)
契約当事者の一方又は双方から媒介の委託を受けて、売買、交換若しくは賃貸を成立させる場合
(取引態様の明示)
第34条 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となって当該売買若しくは交換を成立させるか、代理人として当該売買、交換若しくは貸借を成立させるか、媒介して当該売買、交換若しくは貸借を成立させるかの別を明示しなければならない。
2 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対し、取引態様の別を明らかにしなければならない。
3.媒介契約書の作成・公布
媒介契約を締結した場合、書面を作成し交付しなければなりません。
(媒介契約)
第34条の2 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
➀当該宅地の所在・地番、当該建物の所在・種類・構造等
②当該宅地又は建物を売買する価格、又は評価額
③依頼者が他の業者に重ねて依頼することの許否、許す場合の他の業者を明示する存否
④建物状況
⑤媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
⑥指定流通機構への登録に関する事項
⑦報酬に関する事項
4.重要事項の説明
宅地建物取引業者は、契約締結前に宅地建物取引士に重要事項につき説明をさせなければなりません。
説明をしなければならない事項は、法令改正等により頻繁に変わりますので注意が必要です。宅地建物取引士が、取引士証を提示のうえ説明しなければなりません。
(重要事項の説明等)
第35条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。
➀土地又は建物に登記された権利の種類、内容並びに登記名義人、登記簿の表題部に記録された所有者の氏名
②都市計画法、建築基準法その他法令に基づく制限
③私道に関する負担に関する事項(建物の賃貸の場合を除く)
④飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備状況
⑤完了時における形状、構造等(完了前の建物、土地造成の場合)
⑥<略>・・・区分所有権
⑥-2 当該建物が既存の建物であるときは、次に掲げる事項
イ 建物状況調査を実施しているかどうか及びこれを実施している場合におけるその結果の概要
ロ 設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令定めるものの保存の状況
⑦代金、交換差金及び貸借以外に授受される金銭の額及び目的
⑧契約の解除に関する事項
⑨損害賠償額の予定又は違約金を受領する場合の保全措置の概要
⑩手附金の保全の概要
⑪支払金、預り金の保証の措置
⑫代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあっせんの内容等
⑬保証保険契約の締結等の措置状況
○割賦販売の場合
➀現金価格、割賦販売価格及び引き渡しまでに支払う金銭の額及び割賦金
5.営業保証金の供託等に関する説明
宅地建物取引業者は、営業保証金の供託等に関する説明をしなければなりません。
供託所等に関する説明の方法は、「宅地建物取引士」に限られておらず、書面の交付も義務付けられていません。なお、相手方が宅建業者でも除外規定はありません。
(供託所等に関する説明)
第35条の2 宅地建物取引業者は、宅地建物取引業者の相手方等に対して、当該売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、当該宅地建物取引業者が第64条の2第1項の規定により指定を受けた一般社団法人の社員でないときは第1に掲げる事項について、当該宅地建物取引業者が同条同項の規定により指定を受けた一般社団法人の社員であるときは、第64条の8第1項の規定により国土交通大臣の指定する弁済業務開始日前においては第1号及び第2号に掲げる事項について、当該弁済業務開始日以後においては第2号に掲げる事項について説明をするようにしなければならない。
➀営業保証金を供託した主たる事務所の最寄りの供託所及びその所在地
②社員である旨、当該一般社団法人の名称、住所及び事務所の所在地並びに供託所及びその所在地
(PART2に続く)