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顧客の苦情処理や弁済業務を行う「宅地建物取引業保証協会」とは
顧客の苦情処理や弁済業務を行う「宅地建物取引業保証協会」とは
不動産は高額な商品の取引であるために、他の業界と比較して相対的に厳しい行政の管理がされています。不動産業者の中でも宅地建物取引業と位置づけられた取引と事業者に対しては、宅地建物取引業法という特別の法律があり、これにより業務の詳細が決められています。その中に、取引に関する保証の規定があり、消費者の保護に配慮されている部分があり、それを具体化して運営するために宅地建物取引業保証協会が設立されています。宅地建物取引業保証協会が行う事業の内容、宅地建物取引業者との関係などにつき紹介します。
目次
1. 宅地建物取引業保証協会とは
(1) 宅地建物取引業保証協会とは
(2) 公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会とは
2. 宅地建物取引業保証協会の業務
(1) 苦情の解決業務
(2) 弁済業務
(3) 手付金保管制度
(4) 手付金保証制度
まとめ
1.宅地建物取引業保証協会とは
(1) 宅地建物取引業保証協会とは
宅地建物取引業保証協会とは、消費者を保護するため宅地建物取引に関する保証と苦情処理を行うのをはじめ、手付金保証及び手付金等保管事業を行うとともに、宅地建物取引業の健全な発達、資質の向上を図ることを目的とした、宅地建物取引業法に基づき設立した公益社団法人です。
(2) 公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会とは
➀公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会とは
公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会(以下:全宅保証)は、宅地建物取引業法(以下:宅建業法」で定められて設立された保証協会です。
全国の宅地建物取引業者(以下:宅建業者)のうち約8割が加入しています。
②全宅保証の沿革
全宅保証は、昭和47年(1972年)の宅建業法の一部改正に伴い制度化され、設立された団体です。
昭和48年(1973年)6月から宅建業法第64条の3に定める苦情の解決・研修・弁済業務を開始しました。昭和62年(1987年)1月には手付金保証業務を開始して保証の拡充を進め、昭和63年(1988年)11月からは手付金等保管業務を開始しました。
平成24年度(2012年度)に公益社団法人へ移行しました。
③全宅保証の組織
全宅保証の組織は、全国単一の組織です。主たる事務所(中央本部)を東京都千代田区に置き、従たる事務所(地方本部)を47都道府県に設置している公益法人組織です。
中央本部と47都道府県の地方本部は、売買物件の購入者、賃貸物件の賃借人等の顧客と、会員である宅建業者のトラブルに関する苦情の解決、万一、解決されない場合の弁済業務をはじめ適正・適切な安全な取引を行うための手付金保証業務や手付金等保管業務、宅建業務に係わる方々の資質向上を図るための研修、消費者のための不動産関連のセミナー等を実施しています。
④宅地建物取引業者の団体、宅地建物取引業協会との関係
保証協会に入会する宅地建物取引業者は、全宅保証と所属する都道府県宅地建物取引業協会(以下:宅建協会)に同時に入会することになります。47都道府県の宅建協会の全国組織が全国宅地建物取引業協会連合会(以下:全宅連)で、全宅保証と全宅連および47宅建協会は緊密な関係をもち、相互協力・補完的な運営を行っています。
宅建協会及びその全国組織である全宅連とは、不動産業界全体をサポートする国内最大の業界団体で、不動産業界の健全な発展に資する事業を目的とした公益社団法人です。
全国47都道府県の宅建協会には、各都道府県で事業を行っている多くの宅地建物取引業者が会員となって所属しています。宅建協会傘下の会員業者数は約10万事業者で、全国の不動産業者の約80%が会員となっている国内最大の組織です。
2.宅地建物取引業保証協会の業務
(1) 苦情の解決業務
苦情解決業務の対象となる範囲は、会員である宅地建物取引業者の取り扱った宅地建物取引業に係る取引に関する苦情です。宅地建物取引以外の取引などの苦情は対象となりません。
保証協会は苦情の解決の申出を受けた場合には、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、その苦情に係る事情を調査するとともに、会員に対して当該苦情の内容を通知して、迅速な苦情の解決を求める必要があります。
そのため全宅協会は、必要に応じ、会員業者に対して、文書もしくは口頭による説明や資料の提出を請求することができます。会員業者はこの請求を拒むことはできません(宅建業法第64条の5)。
当該苦情が自主解決もしくは撤回されない場合には、弁済業務へと移管し、当該苦情にかかる申出人の主張する債権を弁済認証すべきか否かの判断をすることになります。
(2) 弁済業務
保証協会では、会員と宅地建物取引をした相手方が有するその取引に生じた債権に関し、その損害を弁済(損害の補填)する事業を行っています。
宅地建物取引をした者等がトラブルに巻き込まれ、苦情の解決事業では解決に至らず、損害の補填を希望する場合に、会員に代わり全宅保証が会員の主たる事務所あたり1,000万円(従たる事務所を有する場は、1事務所ごとに500万円を追加)を上限として金銭(弁済業務保証金)を弁済します。弁済業務保証金とは、宅建取引の相手方において取引上の損害が発生した場合に保証協会が弁済する保証金です。
弁済事業は、裁判による手続を必要としないもので、宅地建物取引により損害を被った者の申出に基づき、当該申出が宅地建物取引に関するものであるか否か、申出者の有する債権の金額の算定等の認証審査を行います。認証とは、損害の補填を受ける権利の存在及びその額を確認し証明することです。
なお、全宅保証の保証業務の基盤となる、弁済業務保証金分担金の合計供託額(弁済業務保証金)は約600億円としています。
(3) 手付金保管制度
宅建業法第41条の2に定められているように、宅地建物取引業者が自ら売主となり、買主である一般消費者に完成物件を売却する場合、売買代金の10%または1,000万円を超える手付金等を受領しようとするときには、手付金等の保全措置を講じなければなりません。手付金等保管制度はその一つです。
手付金等は、この制度により全宅保証地方本部が売主に代わって受け取り、物件の引渡しと所有権移転登記手続(登記に必要な書類が売主から買主に交付された場合も含む)が済むまで保管します。
手付金の保管料はかかりません。
(4) 手付金保証制度
売主・買主ともに一般消費者で、物件が流通機構に登録されており、全宅保証会員が客付媒介業者となる取引に利用することができます。
保証限度額は授受された手付金の額であり、売買価格の20%以内で、1,000万円までが限度額となります。
保証の期間は、保証書の発行から、引渡しまたは所有権移転登記のいずれかが終了するまでです。
保証料はかかりません。
まとめ