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宅地建物取引業の免許制度と消費者保護
宅地建物取引業の免許制度と消費者保護
宅地や建物の取引は、一般的に他の取引と比べ金額的にも大きい特徴があります。消費者にとっては、不動産の売買は人生に数えるほどしかなく、知識は十分ではない前提で考える必要があります。そのため、宅地や建物の取引を行う宅地建物事業者には厳しい免許制度が設けられています。ただし、不動産賃貸・管理業(不動産賃貸業、貸家業、貸間業、不動産管理業など)は該当しません。消費者保護のための宅地建物業の免許制度の概要などにつき紹介します。
目次
1. 宅地建物取引業とは
2. 宅地建物取引業の免許制度
(1) 国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受けることが必要
(2) 専任の宅地建物取引士の設置
(3) 宅地建物取引業者の要件
(4) 営業保証金
まとめ
1.宅地建物取引業とは
宅地建物取引業(以下:宅建業)とは、不特定多数の人を相手方として宅地又は建物に関し、下に記載した➀と②の行為を反復または継続して行い、社会通念上、事業の遂行と見ることができる程度の業を行う行為とされています。
➀宅地建物の売買若しくは交換をする行為を業として行なうもの
②宅地建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為を業として行なうもの
なお、宅地建物取引業を営もうとする者は、免許を受けることが必要です。
不動産賃貸業(貸家貸室業等)、不動産管理業(メンテナンス業等)、家賃徴収代行などは、宅地建物取引業法の規定外となります。
2.宅地建物取引業の免許制度
宅建業を営むには、国土交通大臣または都道府県知事から免許を交付される必要があります。許可制度になり、単に事業者の登録さえ行えばよい登録制度とは異なり行政の管理の厳しいものとなっています。
また、宅地建物取引業法の規制もあり、それに反して業務を行った場合、国土交通省または都道府県知事が業務改善を目的とする指示処分、業務停止処分、もしくは免許取消し処分などの行政処分をされます。
(1) 国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受けることが必要
宅地建物取引業を営もうとする方は、宅地建物取引業法の規定により、国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受けることが必要です。
国土交通大臣の免許は、2以上の都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合であり、都道府県知事免許は、1つの都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合です。
➀免許区分と免許番号
宅建業免許番号は、不動産会社が宅地建物取引業の免許を受けたときに割り振りされる番号で、管理するためのID番号のようなものです。この免許番号がないということは、無許可で営業している業者ですので注意が必要です。
・宅建業免許番号の見方
免許を受ける宅建業者の事務所が複数の都道府県にまたがっている場合は、国土交通大臣が免許発行の主体となるので、「国土交通大臣免許(3)○○号」のようになります。
( )内の数字は免許の更新回数であり、免許更新は5年に一度です。
開業6年目の場合は(2)、11年目の場合は(3)と表示されます。
事務所が一つの都道府県に収まっている場合は、「千葉県知事免許(1)○○号」のようになります。
②免許番号の調べ方
国土交通省の各地方整備局や、各都道府県の担当課では、登録されている宅建業者を閲覧することができます。知ることができる情報は、下記のようなものなどです。
・宅建業免許証番号
・免許更新前の取引件数、金額
・業者の商号、代表者氏名、役員氏名、事務所所在地
・専任の取引主任者
・資産状況
・行政処分履歴
(2) 専任の宅地建物取引士の設置
宅地建物取引業法は、宅建業者に宅地建物の取引に関する専門家としての役割を十分に果たさせるため、その事務所等に一定数以上の成年者である専任の宅地建物取引士を設置することを義務づけています。
宅地建物取引士とは、宅地建物取引士資格試験に合格後に、資格登録をし、取引証の交付を受けている人です。交付を受けていても取引士証の有効期限が切れている人(取引士証の有効期限は5年)や既に取引士証に勤務先名が登録されている人は認められません。
宅地建物取引士は、不動産の契約締結に重要事項説明(35条書面)などを行います。
➀専任の宅地建物取引士の配置割合数
専任の宅地建物取引士の設置義務は、一つの事務所において、業務に従事する者5名に1名以上の割合としています。
専任の宅地建物取引士の数が不足した場合は、2週間以内に補充等必要な措置をとらなければなりません。
②専任の宅地建物取引士の「専任性」とは
専任性では、「常勤性」と「専従性」の二つの要件を充たさなければなりません。
「常勤性」とは、当該事務所に常勤すること、「専従性」とは、専ら宅地建物取引業の業務に従事することです。
「専任」にあたらない例としては、下記のような点があります。
・他の法人の代表取締役、代表者又は常勤役員を兼任している場合や、会社員、公務員のように他の職業に従事している場合
・他の個人業を営んでいる場合や、社会通念上における営業時間に宅地建物取引業者の事務所に勤務することができない状態にある場合
・通常の通勤が不可能な場所に住んでいる場合
※なお申請会社の監査役は、専任の宅地建物取引士に就任することはできません。
(3) 宅地建物取引業者の要件
宅建業の免許取得を検討する際には、事業者の適格性につき下記の要件が定められています。
➀欠格事由に該当しないこと(宅建業法第5条第1項)
a. 免許申請書やその添付書類中に重要な事項についての虚偽の記載があり、重要な事実の記載が欠けている場合
b. 申請前5年以内に次のいずれかに該当した者がいないこと
・免許不正取得、業務停止処分事由に該当し情状が特に重い場合または業務停止処分違反に該当するとして免許を取り消された者
・前記のいずれかの事由に該当するとして、免許取消処分の聴聞の公示をされた後、相当の理由なく解散または廃業の届出を行った者
・前記の聴聞の公示をされた後、相当の理由なく合併により消滅した法人の役員であった者
・禁錮以上の刑に処せられた者
・宅建業法、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に違反し、又は刑法(傷害、脅迫等)、暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金刑に処せれた者
・宅地建物取引業に関し不正または著しく不当な行為をした者
・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員又は暴力団員であった者
c. 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者でないこと
d. 宅地建物取引業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと
e. 申請者の法定代理人、役員または政令使用人が上記b、c、dに該当する場合や事務所に専任の取引士が設置されていない場合でないこと
免許取得後も欠格事由に該当すると免許取り消しされることになります。
②免許の取り消し
免許権者は、その免許を受けた宅建業者が以下のいずれかに該当する場合には、免許を取り消さなければなりません(宅建業法第66条)。
・免許基準について欠格事由にあたる場合
・不正手段により免許を取得したとき
・業務停止処分対象行為で情状が特に重いとき、または業務停止処分に違反したとき
・免許を受けてから1年以内に事業を開始せず、または引き続き1年以上事業を休止したとき(正当な理由の有無を問わない)
・免許換えの手続きを怠ったとき
・廃業等の届出がなく、その事実が判明したとき
③事務所の形態
事務所の所在も重要な要素となっています。
a. 事務所の範囲
本店または支店として商業登記されたものや、その他、継続的に業務を行うことができる施設を有し、かつ、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人が置かれている場所である必要があります。
ちなみに、本店で宅建業を行わなくても、支店で宅建業を行っていれば本店も「事務所」となるので、本店にも営業保証金の供託および専任の宅地建物取引士の設置が必要です。
支店については、会社法の規定により商業登記しなければならないこととなっていますので、従たる事務所の名称を「支店」として免許申請する場合は、商業登記が必要になります。
b. 事務所要件の適格性
「物理的にも社会通念上も独立した業務(他の業務と混在しない)を行いうる機能を持っていると認識できる」と判断できる事務所を備えていることが必要です。
・テント張りやホテルの一室などは認められません。
・1つの部屋を他の者と共同で使用する場合も原則として認められません。
(4) 営業保証金
➀営業保証金とは
営業保証金とは、宅建の取引において業者の過失などで高額の損失を被った場合、被害を受けた人に対する補償金の原資となるもので、宅建業者が業務を開始する前に供託所に預ける資金のことです。
万一のときは、被害を被った一般消費者は供託所に被害額を請求することができます。
②営業保証金の金額
供託すべき額は、主たる事務所は1,000万円、従たる事務所は500万円(1支店ごと)です。
免許の日から3カ月以内に宅建業者より供託した旨の届出がない場合、免許権者は届出をすべき旨の催告をしなければなりません。催告から1カ月以内に再び宅建業者より供託した旨の届出がない場合、免許権者は免許を取り消すことができます。
まとめ