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境界の種類の「筆界」「所有権界」「占有界」とは
境界の種類の「筆界」「所有権界」「占有界」とは
境界には、3つの種類があります。「筆界」「所有権界」「占有界」の3つです。一般的にはなじみのない用語ですがその意味を紹介します。ひとつの土地に、意味合いが異なる境界が複数存在しており、その存在を知らないとそれらを混同しがちです。内容について理解し、明確にしていく必要があります。また、境界確定の時にこれらはどのように関わるのかも見ていきましょう。
目次
1. 筆界とは?
2. 所有権界とは?
3. 占有界とは?
4. 書類上の境界と現地の境界が異なる可能性がある。
5. 境界を確定させるには?
まとめ
1.筆界とは?
筆界とは、不動産登記法上での境界です。不動産登記法上の地番と地番の境界をさします。
不動産登記法第123条で、筆界とは、「表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。」とされています。
上記条文に「土地が登記された時」と定められていますが、これは、明治6年の地租改正によりできたときの筆界(原始的筆界)のことを指します。この筆界は固定され、隣地の所有者との合意(土地を一部譲渡など)のみで自由に変更することができません。その後、不動産登記法の手続きにそって分筆や合筆を行うことにより新たな筆界(後発的筆界)ができていきます。
筆界は、法務局にある公図や地積測量図等を参考に調べることができます 。
2.所有権界とは?
所有権界とは、該当の土地の所有者の権利が及ぶ範囲のことで私法上の境界です。言い換えれば、隣地所有者の所有権との境目です。
ブロック塀や境界標など、現地で物理的に表示されており、通常は筆界と所有権界は一致していますが、常に一致しているとは限りません。
たとえば、親の代にお隣り同士のAさん、Bさんの合意で、Bさんの土地の一部を譲渡しましたが、その際に分筆登記と所有権移転登記をしていない場合は、国が管理している登記記録と実際の現場の状況は異なっています。
このように、土地の現場での変更を公的に登記していなかった場合などでは、筆界と所有権界が一致していないという状態が発生してしまう可能性があります。
3.占有界とは?
占有界とは、土地の実際の占有(利用)状態の境で事実上の境界です。
時効取得で所有権は持っていないものの、実際には隣地を越境して使用している状況などです。台風や地震、津波などの自然災害により境界標がなくなってしまい、自分の土地をいつの間にか他人が利用(占有)してしまっているようなケースもあります。
所有権は自分がもっているものの、他人が占有(利用)している場合にはその占有(利用)部分の境目が占有界です。
他人の利用(占有)をそのまま放置していると、民法で定める期間の経過(10年~)後も利用(占有)されている場合には、時効取得によりその土地の所有権を占有者に取得されてしまう可能性があるので注意が必要です。
他人に占有されている土地は、時効取得されないように是正を求める必要があります。
4.書類上の境界と現地の境界が異なる可能性がある。
境界の測り方は、その時代時代で変化してきました。そして、所有者も相続や売買によって変わっていった結果、隣り同士の土地の境界について認識が異なっていることも知らない状況が、売買によって発覚し問題になる場合もあります。
土地の売却上の注意点として、登記簿上の記録(筆界)と、所有状況(所有権界)が一致していないということは、その土地が特定されておらず、資産価値としての十分な保全がなされていないことになってしまう恐れがあります。
隣接地所有者との間で境界紛争が生じる可能性があるリスクの高い土地を購入しようとする買主はおらず、不動産会社も仲介しない場合が多くあります。
不動産を売却する場合には、境界問題の解決は必須です。
5.境界を確定させるには?
境界を確定させるには「境界確定測量」を行います。そして、原則、隣接地の所有者全員が立会い境界確定測量を確認する必要があります。
隣接地というのは、その土地が接する土地のすべての土地のことですから、例えば、隣接する土地が共有名義であれば共有者全員となり、亡くなった人(被相続人)名義であればその相続人全員との間で境界を確定させる必要があります。
たとえば、隣接地の一つの土地が亡くなった人の名義だったり、行方不明者がいる土地だったりすると、その相続人を特定する、行方不明者を捜索するなど、境界を確定に必要な作業が難航します。
特に、隣接地との関係が元々こじれているという場合や、代替わりがあった場合には要注意です。その境界確定のための円滑に協力を得られない可能性があるということは注意をしておく必要があります。
もし、隣接地所有者の協力が得られない場合には、境界確定訴訟や筆界特定制度の利用が必要となり、期間と費用の問題も発生してしまいます。
まとめ