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不動産の「閉鎖登記簿」のチェックが必要な時とは?
不動産の「閉鎖登記簿」のチェックが必要な時とは?
土地や建物といった不動産の概要や、所有権や抵当権などの権利関係などの情報は、不動産登記簿で確認することができます。しかし、合筆によって地番がなくなった土地や、取り壊しなどによって消滅した建物のような不動産の情報は、現状の登記簿では確認することはできず、閉鎖登記簿の確認が必要になります。また、土地購入では買主は、土地の歴史を知りどのような人が住み、火災事故などがなかったか、その他不安がないかを見て慎重に判断する場合もあります。この記事では、不動産の閉鎖登記簿とは何か、閉鎖登記簿を確認するタイミング、その活用法、閉鎖謄本の取得方法などついて解説します。
目次
1. 不動産の「閉鎖登記簿」とは
(1) 不動産の「閉鎖登記簿」とは
(2) 閉鎖登記簿の保存期間
2. 閉鎖登記簿を利用するタイミング
(1) 過去の土地の使用状況・地歴を確認する時
(2) 土地や建物の過去の所有者や権利関係の変遷を確認する時
3. 閉鎖登記簿の取得方法
(1) 法務局の窓口で閉鎖登記簿謄本を取得する方法
(2) 閉鎖登記簿謄本を郵送で取得する方法
4. 閉鎖登記簿の記載内容
(1) 表題部の記載内容
(2) 権利部(甲区)の記載内容
(3) 権利部(乙区)の記載内容
1.不動産の「閉鎖登記簿」とは
(1) 不動産の「閉鎖登記簿」とは
不動産の閉鎖登記簿とは、土地や建物の登記記録(一筆の土地、一個の建物ごとに作成される、登記の記録)が何らかの理由により閉鎖された場合に、その閉鎖された登記記録が保存されている帳簿、または、データ化され保存される磁気ディスクのことを指します。
登記記録が閉鎖され、閉鎖登記簿へと保存されるのは、次に挙げる2つの場合です。
➀土地が合筆された場合や、建物が滅失した場合
合筆とは、隣接する数筆の土地を1つの筆の土地に法的に合体させることです。
②従来の紙の登記簿が磁気ディスクの登記簿へ置き換えられるのに伴い、従来の紙の登記簿そのものが閉鎖される場合
(2) 閉鎖登記簿の保存期間
閉鎖登記簿は保存期間が下記のように定められています。
・土地登記簿は50年間
・建物登記簿は30年間
・昭和63年7月1日以前に閉鎖された土地・建物は20年間
希望すれば誰でも閉鎖登記簿を閲覧することができ、「閉鎖謄本」の交付を受けることができます。紙の閉鎖登記簿をコピーした「閉鎖登記簿謄本(閉鎖謄本)」と呼び、磁気ディスクの閉鎖登記簿の写しは、「登記事項証明書の閉鎖事項証明書」と呼びます。
2.閉鎖登記簿を利用するタイミング
閉鎖登記簿はどのような場合に活用できるのかは次のような時です。
(1) 過去の土地の使用状況・地歴を確認する時
かつてその土地に建っていた建物を知ることも重要です。例えば、過去に化学工場やガソリンスタンドなどが建てられていた場合は、土壌汚染の可能性についても考慮する必要が出てきます。また、過去に葬儀場やマイナスイメージの土地では気分が悪い場合もあります。火災があった家は縁起が悪いと思う人もいるでしょう。ただし、事故死があったなどは分かりません。
(2) 土地や建物の過去の所有者や権利関係の変遷を確認する時
過去の所有者や権利関係の変遷を確認しておくことで、該当の不動産に不安要素がないかどうかの手がかりを得ることができます。担保になっていた場合は債権者がどのようなところかもチェック対象となる場合があります。
また、激しく転売されている物件では注意される場合があります。何らかの事情、例えば事件・事故に関わる物件で所有されたものが善意の第3者と称する人に転売され事件・事故について消すこともないとは言えないからです。売主としては理由が明確であれば説明の必要があります。
3.閉鎖登記簿の取得方法
閉鎖登記簿の取得方法を説明します。
・閉鎖登記簿謄本は閉鎖当時の管轄法務局でしか取得することができない。
データ化される前の不動産登記簿は、各管轄の法務局で保管されています。そのため、インターネットを利用したオンライン申請での取得や、管轄法務局以外の法務局で取得することはできません。閉鎖登記簿謄本を取得する際には、登記記録が閉鎖された当時の管轄法務局に申請し、取得する必要があります。
閉鎖登記簿謄本の申請・取得方法としては、管轄法務局に出向いて窓口で申請・取得するか、管轄法務局に郵送で申請・取得するかを選ぶことができます。
(1) 法務局の窓口で閉鎖登記簿謄本を取得する方法
管轄法務局に出向き、窓口で閉鎖登記簿謄本を取得する場合の流れは次のようなものです。
➀閉鎖登記簿謄本を取得したい不動産(土地・家屋)の所在地番・家屋番号を調べて管轄法務局を探す。
所在地番や家屋番号は、権利証や登記識別情報通知書、固定資産税に関する課税明細書で確認することができます。
そして、閉鎖登記簿謄本を取得したい不動産の所在地を管轄する法務局を調べます。
②管轄法務局で閉鎖登記簿謄本の交付申請書を提出
法務局の登記所に備え付けられた不動産用の「登記事項証明書・登記簿謄本抄本交付申請書」で必要項目の「合筆、滅失などによる閉鎖登記簿・記録」などの欄にチェックを付け提出します。
③閉鎖登記簿謄本を取得
閉鎖登記簿謄本の取得にかかる費用は、土地は1筆、建物は1個ごとに600円の手数料が発生します。
(2) 閉鎖登記簿謄本を郵送で取得する方法
不動産用の「登記事項証明書・登記簿謄本抄本交付申請書」を法務省が提供している「登記・供託オンライン申請システムから交付申請できます。
*「登記・供託オンライン申請システム
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/
窓口申請の場合と同様に、「合筆、滅失などによる閉鎖登記簿・記録」なの欄にチェックを付け、必要項目を記入します。
申請にかかる手数料として収入印紙を貼り、申請書、切手を貼った返信用封筒の2点を同封し、管轄法務局へ郵送します。
4.閉鎖登記簿の記載内容
閉鎖登記簿には、すでに閉鎖された過去の登記記録が記載されています。登記簿には、所在地や面積などの物理的な状況が記載されている「表題部」と、権利に関する状況が記載されている「権利部」があります。権利部はさらに、所有権に関する内容が記載されている「権利部(甲区)」と、所有権以外の権利に関する内容が記載されている「権利部(乙区)」に分かれています。
(1) 表題部の記載内容
➀土地の閉鎖登記簿の表題部
土地の閉鎖登記簿の表題部には、次のような事項が記載されています。
・所在 土地がある場所のうち、市町村字までの部分が記載されています。
・地番 地番とは、登記をする際に土地に付与される番号のことです。
・地目 地目とは、土地の用途や種類を示します。
・地積 土地面積が記載されています。
・原因及びその日付【登記の日付】 登記された日付と、登記の理由が記載されています。
②建物の閉鎖登記簿の表題部
建物の閉鎖登記簿の表題部には、次のような事項が記載されています。
・所在
・家屋番号 家屋番号とは、登記をする際に建物に付与される番号のことです。
・種類 「居宅」「共同住宅」「事務所」「店舗」「倉庫」など、建物の種類が記載されています。
・構造
・床面積
・原因及びその日付【登記の日付】 登記された日付とその理由が記載されています。
(2) 権利部(甲区)の記載内容
権利部(甲区)には、不動産に関わるさまざまな権利のなかで、所有権に関する内容のみが記載されています。土地や建物の過去の所有者が誰であったかは、ここで確認することが可能です。
・順位番号 登記された順番が記載されています。
・登記の目的
「所有権保存」「所有権移転」「所有権一部移転」など、所有権登記がおこなわれた目的が記載されています。
・受付年月日、受付番号 所有権に関する登記が受け付けられた日付と受付番号が記載されています。
・権利者その他の事項
所有者の住所や氏名、所有者となった原因が記載されています。
(3) 権利部(乙区)の記載内容
権利部(乙区)には、所有権以外のあらゆる権利に関する内容が記載されています。
抵当権が中心でしょう。その他、賃借権なども乙区に記載されています。
・順位番号 登記された順番が記載されています。
・登記の目的
「抵当権設定」「抵当権抹消」「賃借権設定」「地役権設定」など、登記がなされた目的が記載されています。
・受付年月日、受付番号 各権利に関する登記が受け付けられた日付と受付番号が記載されています。
・権利者その他の事項
権利者の氏名や住所に加えて、各権利に関する内容が記載されます。抵当権設定登記の場合であれば、権利設定の原因、債権額、利息、債務者の氏名や住所などが書かれています。
まとめ