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買主が物件に「仮登記」を希望する場合とは?
買主が物件に「仮登記」を希望する場合とは?
不動産売買において買主が物件に「仮登記」を希望する場合があります。売主として、仮登記とはどのようなもので、本登記とどう違うのか?など仮登記の意味・仕組みを知っておく必要があります。また、正式契約では仮登記を抹消してもらい本登記にする必要があります。これら仮登記について説明します。
目次
1. 仮登記とは
(1) 仮登記とは
(2) 仮登記の目的
(3) 仮登記の効果
2. 仮登記の種類
(1) 1号仮登記(物件保全の仮登記)
(2) 2号仮登記(請求権保全の仮登記)
3. 仮登記のメリット、デメリット
(1) 仮登記のメリット
(2) 仮登記のデメリット
4. 仮登記の抹消
(1) 仮登記の抹消とは
(2) 仮登記の抹消が必要な場合
5. 仮登記の時効
6. 仮登記後の本登記の方法
7. 売主としての買主の仮登記の希望に対する対応
まとめ
1.仮登記とは
(1) 仮登記とは
仮登記とは、本登記をするための条件が整わない状況で、とりあえず権利の順位を保全するために仮に行う登記のことです。
本登記と異なって、仮登記のままでは対抗力(利害関係をもった第三者に対して、自分の権利を主張することが出来る効力)はありません。しかし、後日、仮登記を本登記にすることにより仮登記を行った時点での順位で、本登記の順位が確定するものです。
(2) 仮登記の目的
現段階では書類がそろっていないなどの理由で本登記ができないものの、仮登記を行うことによって本登記ができる順位を保全しておくのが目的です。
(3) 仮登記の効果
不動産における仮登記はあくまで本登記ではないため、他の人も仮登記をしようとする場合があります。その際に注目されるのが、仮登記を行った順番です。先順位の仮登記をした人が後に本登記をした場合、仮登記の順位で本登記が行われるため、後順位で仮登記をしていた人への対抗力を持つことができます。このことを、仮登記の「順位保全効」といいます。
例えば、甲から乙へ不動産が売却され、乙名義の所有権移転の仮登記がされました。ところが、甲は同じ不動産を丙に対しても二重に譲渡して、丙による丙名義で所有権移転の本登記がなされました。このような場合でも、乙の仮登記を本登記にすれば、乙の権利は丙に優先します。
2.仮登記の種類
不動産における仮登記には、1号仮登記(物件保全の仮登記)と2号仮登記(請求権保全の仮登記)の2種類があります。
それぞれどのような意味を持つのか紹介します。
(1) 1号仮登記(物件保全の仮登記)
1号仮登記とは、権利が実際に動いた時に行う仮登記を指し、不動産登記法第105条1号によって決められているため1号仮登記と呼ばれているものです。
すでに不動産が人の手に渡るなど、実際に権利が動いている状態にも関わらず、手続きが遅くなってしまったり書類がそろわなかったりして本登記ができない状態に行われる登記です。たとえば、売買予約や抵当権設定の予約がなされた場合で、将来予約完結権を行使することで物件としての所有権や抵当権を取得することができるため、あらかじめ順位を確保しておくために仮登記を行います。
必要な条件がそろわない状況としては次のような場合があります。
①登記義務者が登記申請手続きに協力してくれない場合
②登記義務者の登記識別情報(登記済証)を提供できない場合
③第三者の許可、同意、承諾を要する場合で許可等は得られているが、その許可等を証する書面の提供ができない場合
1号仮登記には、「抵当権設定仮登記」のように、登録免許税の節約のために仮登記にとどめる便宜的な使い方が多く見受けられます。
(2) 2号仮登記(請求権保全の仮登記)
2号仮登記とは、実際には権利が動いていない状態の時に将来所有権が変動することが見込まれている場合に行う仮登記です。
不動産登記法第105条2号によって決められているため2号仮登記と呼ばれているものです。
現状では権利変動がなくても、今後発生する権利変動の請求権を持っている場合、それを保全するために行う仮登記を意味します。
たとえば、農地を売買するためには都道府県知事の許可が必要ですが、その許可を前提とした売買契約を行っている場合などです。許可が下りれば売買契約が進められ所有権が変動することが見込まれている場合です。
1号仮登記の「登記の目的」欄が、「所有権移転」の仮登記であるのに対して、2号仮登記では、「所有権移転請求権」、「条件付所有権移転」のように、まだ所有権移転そのものが起きていないことを示します。
不動産売買で、契約時には手付金を払うだけで後に代金決済・引渡しを行う場合は、契約時に権利保全のために所有権移転仮登記をすることがあります。この仮登記は、2号仮登記に該当します。
3.仮登記のメリット、デメリット
(1) 仮登記のメリット
自分が仮登記をし、後で本登記ができる条件を満たした時に登記の手続きを行うと、後から仮登記を行った人に優先し、自分が有利になります。
また、2号登記では1号仮登記のように書類がそろっていない段階でも手続きすることができるため、第三者への対抗力がなくても早く予約をしたい場合にメリットがあります。
(2) 仮登記のデメリット
仮登記は、第三者に対する対抗力はありません。
また、本登記ではないため実際に所有権が移動しているわけでもなく、あくまで本登記のための「予約」という位置づけです。
そのため本登記に移行する際には利害関係人・第三者の承諾が必要になります。
4.仮登記の抹消
(1) 仮登記の抹消とは
仮登記の抹消とは、仮登記はあくまでも仮のものでありさまざまな理由で取り止め抹消することができることです。
本登記を行うため、他の人が行っていた仮登記を取り消してもらう(抹消する)ことも可能です。
(2) 仮登記の抹消が必要な場合
買主が購入しようと検討していた不動産に仮登記がついていた場合、そのまま購入をして所有権移転登記が行われたとしても、その後仮登記を行っていた人が本登記を完了させると自身は所有権を失ってしまいます。そのため、仮登記がついた不動産の売買は、買主は売主に対して仮登記を抹消してもらうよう要求します。
また、相続した農地などに古い仮登記がついていた場合も抹消が必要です。
5.仮登記の時効
仮登記には時効があります。
仮登記のように所有権移転の予約を行う権利を「予約完結権」と言いますが、不動産の売買を行う契約を取り決めてから10年を経過すると時効になります。
時効を迎えると、仮登記後に行う本登記請求権、つまり本登記を優先的に行う権利もなくなります。
6.仮登記後の本登記の方法
仮登記を行った後、条件が満たされ書類がそろえば本登記を行います。仮登記の本登記申請に必要な情報は、基本的に通常の登記と同じです。
本登記を行うためには現在の登記名義になっている人、つまり現時点で不動産を所有している人の承諾が必要になり、承諾を得た後に本登記が可能です。
ただし、所有権仮登記の本登記では、登記上の利害関係を持つ第三者がいるときは、その承諾を得なければなりません。利害関係を持つ第三者とは、仮登記のあとに所有権移転登記を受けた者ですが、自分の権利がなくなってしまうので、本登記を承諾することは普通ありません。この場合、所有権移転の本登記承諾を請求する裁判を起こし、確定判決を得て承諾に代えることができます。
仮登記を登記簿に記載するにあたっては、あとで本登記がなされることを予定して、仮登記の次に本登記を記入するスペースを確保しておき、「余白」と記載します。あとで本登記をするときは、この空いているところに記載します。
登記を行う際に自動的に仮登記の抹消が行われますので、本登記以外に特別な申請は必要ありません。
7.売主としての買主の仮登記の希望に対する対応
現段階では書類がそろっていないなど仮登記を行う目的をよく確認します。
具体的な必要な条件がそろわない状況として売主に責任がある場合、それに協力して仮登記を経ずに本登記に進めることが必要です。また、単に書類がそろうのを待っている場合などや、「抵当権設定仮登記」のように、登録免許税の節約のために仮登記にとどめる便宜的な使い方の場合などでは、その内容を確認し短期の期限を定め覚書などを交わし、仮登記を了承することが考えられます。
また、他に有力な購入の引き合いの案件がある場合はそちらを優先し、こちらの仮登記に関する案件は検討するので待ってもらう方法もあります。
これ等の場合は仲介する不動産会社に相談しアドバイスを受けて下さい。また、専門的な内容に及ぶ場合は不動産会社と付き合いのある弁護士などに相談することも必要です。
まとめ
・仮登記とは、本登記をするための条件が整わない状況で、とりあえず権利の順位を保全するために仮に行う登記のことです。
本登記と異なって、仮登記のままでは対抗力はありません。しかし、後日、仮登記を本登記にすることによって、仮登記を行った時点での順位で、本登記の順位が確定するものです。
・仮登記の種類には、①1号仮登記(物件保全の仮登記)と②2号仮登記(請求権保全の仮登記)があります。
1号仮登記とは、権利が実際に動いた時に行う仮登記です。
2号仮登記とは、実際には権利が動いていない状態ですが将来所有権が変動することが見込まれている場合に行う仮登記です。