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売却時に必要な「登記識別情報」の保管の注意点
売却時に必要な「登記識別情報」の保管の注意点
不動産売却時に必要なものが登記識別情報です。従来の権利証では原本という紙があるのと異なり、登記識別情報は単なる英数字のパスワードの情報です。この情報が漏れてしまったらどうなるのでしょうか?大切な情報のためどのように保管したら良いのでしょうか?登記識別情報を盗まれた場合の問題や、登記識別情報の保管の注意点などについて紹介します。
目次
1. 登記識別情報とは
(1) 登記識別情報とは
(2) 登記識別情報通知に記載されている内容
(3) 登記識別情報の役割
(4) 登記識別情報が必要となる主な登記
2. 登記識別情報の管理上の注意点
(1) 登記識別情報は単なるパスワードのようなもの。手書きでもコピーでも有効。
(2) 登記識別情報通知の目隠し部分を、一度開封すると元に戻すことはできない。
(3) 登記識別情報通知は再発行されない。
3. 登記識別情報が盗まれたらどうなるのか?
(1) 登記を完結するには登記識別情報だけではできない。
(2) 登記というものは対抗要件
4. 登記識別情報を盗まれないための保管上の注意点は?
(1) 登記識別情報通知は、印鑑登録証(印鑑カード)・実印と一緒に保管しないようにする。
(2) 銀行の貸金庫などでの保管他
(3) 目隠しシールを必要な時まではがさない。
(4) 登記識別情報をやたらにプリントしたり、メモを残さない。
5. 登記識別情報の保護に関連する制度
(1) 登記識別情報の失効の申出
(2) 登記識別情報の有効証明請求
まとめ
1.登記識別情報とは
(1) 登記識別情報とは
登記識別情報とは、2005(平成17)年の不動産登記法改正により、それまでの登記済証(いわゆる権利証)に代わって導入された不動産登記に関する情報です。
登記識別情報は、「登記識別情報通知」という書面の、深緑色の目隠し部分にQRコードとともに印字された英数字の組み合わせでできており、個別の不動産ごとに発行される固有のパスワードのようなものです。
書類(登記識別情報通知)自体に効力はなく、万が一登記識別情報通知の書類を紛失または処分してしまったとしても、登記識別情報12桁の番号さえわかっていれば有効です。
(2) 登記識別情報通知に記載されている内容
登記識別情報通知には、以下のような内容が記載されています。
・不動産の住所
・不動産番号
・受付年月日、受付番号
・登記の目的(抵当権設定、所有権移転など)
・登記名義人と住所
・登記識別情報(英数字交じりの12桁)
この中で、登記申請などの場合に必要になるのは、固有のパスワードとなる12桁の「登記識別情報」部分だけです。
(3) 登記識別情報の役割
金融カードなどの暗証番号やネット金融のパスワードと同じで、本人しか知りえない情報であるため、登記名義人の本人かどうかを確認する役割を担っています。
登記識別情報は、あらたに登記を必要とする際に、登記名義人の本人確認の役割を果たします。登記申請の際に、登記名義人が登記識別情報を法務局の登記官に示すことにより、その登記の真正が担保されます。
(4) 登記識別情報が必要となる主な登記
登記識別情報が必要となる主な登記は次のようなものです。
➀所有権移転登記
売却や贈与の時に必要となります。
②抵当権設定登記
所有する不動産に抵当権を設定する時に必要となります。
2.登記識別情報の管理上の注意点
(1) 登記識別情報は単なるパスワードのようなもの。手書きでもコピーでも有効。
登記識別情報は、コピーされたものや手書きのものであっても、その記号が合致すれば有効なものとされます。
したがって、書面を手元に保管していても、登記識別情報を第三者に見られたり、コピーされたりすると、従来の権利証が盗まれたのと同様の危険性があります。
(2) 登記識別情報通知の目隠し部分を、一度開封すると元に戻すことはできない。
登記識別情報通知には目隠し部分にシールが貼ってあり、シールを一度開封すると元に戻すことはできません。そのため、読み取りができる状態となってしまいます。
(3) 登記識別情報通知は再発行されない。
登記識別情報通知は、紛失したり盗難に遭った場合でも、再発行を受けることはできません。保管には十分な注意が必要です。
3.登記識別情報が盗まれたらどうなるのか?
登記識別情報が盗まれたらどうなるのかについて説明します。
(1) 登記を完結するには登記識別情報だけではできない。
登記を完結するには登記識別情報や権利証だけではできません。
登記を完結するには、以下の3点が必要です。
・登記識別情報もしくは権利証
・本人の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)
印鑑証明書交付には市区役所であれば印鑑登録証もしくはコンビニであればマイナンバーカードが必要です。
・実印
仮に登記識別情報だけを盗まれても、登記はできず所有権自体を奪われるものではありません。
(2) 登記というものは対抗要件
登記の機能は対抗要件というもので、第三者に自分が所有者であることを法的に権利を主張することができるということです。つまり、単に登記名義人だからといって所有権を有しているわけではなく、第三者に自分の所有権を主張するために登記をするという関係になっています。
そのため、仮に登記識別情報が悪用され万一登記名義を移されたような場合であっても、その登記が無効であることを証明することができれば、裁判を経てその所有権移転登記を抹消することができるのです。
4.登記識別情報を盗まれないための保管上の注意点は?
不動産の本人確認の役割がある登記識別情報は、その不動産の登記人=本人だけが知っている情報であることが前提にあるため、第三者に盗み見られないような状態で管理しなければなりません。
そこで、登記識別情報通知の書面の保管の場合の注意点を紹介します。
(1) 登記識別情報通知は、印鑑登録証(印鑑カード)・実印と一緒に保管しないようにする。
登記識別情報と、印鑑登録証(印鑑カード)、実印の3点があり印鑑登録証(印鑑カード)で交付可能な印鑑証明書が揃えば登記が可能となってしまいます。それを防止するには登記識別情報通知は、印鑑登録証(印鑑カード)・実印と一緒に保管しないようにします。
印鑑登録証とは印鑑証明書の発行カードです。また、マイナンバーカードでコンビニでも印鑑証明書の発行が可能です。
登記識別情報と、印鑑登録証(印鑑カード)、実印の3点を一緒に保管しない方法としては、登記識別情報通知と印鑑登録証(印鑑カード)は銀行の貸金庫に、比較的他の用途にも使う実印は自宅の自分の特定の場所に保管するなどがあります。
契約直前に上記の3点を持って移動する場合でも3点を1つのバッグに入れて持ち歩けばバッグを置き忘れたりする危険性があります。登記識別情報通知はバッグの中に、実印と発行された印鑑証明書は上着のポケットに入れるなど、分散して保持する注意が必要です。
また、特殊な場合ですが、高齢で意思や判断力の弱くなった父親の所有する不動産につき、同居する息子が売却を強く要求している場合などでは、父親が自宅内に3点を一緒に保管していた場合、息子が勝手にこれらを持ち出して登記をすることも可能です。そのためには、息子以外の家族の別の場所での分散管理が有効になってきます。
(2) 銀行の貸金庫などでの保管他
盗難、火災などの危険性も考え、安全性から銀行の貸金庫などでの保管が望ましいでしょう。
ただし、銀行の貸金庫利用では、貸金庫に入るための入室カード、暗証番号などが必要でそれらの管理も必要となってきます。本人が急死し家族が暗証番号や入室カードの置き場所がわからないなどの問題も発生する可能性があります。
(3) 目隠しシールを必要な時まではがさない。
登記識別情報通知の登記識別情報が記載された箇所は、第三者に見られてしまうと勝手に登記申請をされるなどのリスクがあるため、目隠しシールや折り込み方式により見られない状態になっています。そのため、登記が必要な時まで目隠しシールをはがさない方法もあります。
(4) 登記識別情報をやたらにプリントしたり、メモを残さない。
自分が忘れないようにするために行うプリントやメモは、パスワードと同一でそれだけで簡単にみられてしまう危険性があります。いたずらにプリントやメモは行わないようにすることが必要です。
印鑑登録証(印鑑カード)と実印と登記識別情報のメモが一緒にあれば極めて危険です。
5.登記識別情報の保護に関連する制度
登記識別情報の保護に関連する制度では次のようなものがあります。
(1) 登記識別情報の失効の申出
登記識別情報通知が紛失や盗難に遭った場合には、悪用されることを防止するため法務局に申し出ることにより、登記識別情報を失効させることができます。登記識別情報を管理する負担を免れたい場合などにも同様に失効させることができます。失効させた後に、何らかの登記が必要な場合には、司法書士による本人確認情報や事前通知制度を利用することとなります。
(2) 登記識別情報の有効証明請求
登記識別情報通知が失効していないことの証明を法務局の窓口で請求する制度です。登記申請をする前に、登記識別情報が有効であることを確認したい場合などに利用します。
まとめ