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共有のマイホームを売った時、3,000万円特別控除の特例はどうなるのか?
共有のマイホームを売った時、3,000万円特別控除の特例はどうなるのか?
家族や親戚で不動産を相続し、分割方法が決まらない場合に共有名義にする場合や、夫婦で新居を購入する時、それぞれの手持ち資金で頭金を支払い、住宅ローンを組んだ時など共有名義にする場合が多くあります。このような共有においても、マイホームの場合の売却時の譲渡所得税で3,000万円特別控除の特例がありますが、この制度は使えるのでしょうか?共有の場合の3,000万円特別控除の特例の内容、適用要件などについて説明します。
目次
1. 「共有持分権利者」のできることと、要件
(1) 単独で可能なこと
(2) 過半数の同意が必要
(3) 全員の同意が必要
2. マイホームを売った場合の譲渡所得からの3,000万円特別控除の特例はどうなるのか?
(1) 特例の適用の対象者について
(2) 特例による譲渡所得の計算
(3) 住宅ローンの残債が残っている場合のローン返済
まとめ
1.「共有持分権利者」のできることと、要件
共有では相続の割合や、不動産購入の際に負担した資金に応じて、名義人ごとに「持ち分」と呼ばれる割合を定めます。持ち分のある共有者は、その割合に関係なく所有者の1人として権利を持っています。
そして、共有名義の土地、マンション、戸建てなどにおいて、それぞれの共有持ち分の名義人を「共有持分権者」と言います。では共有持分権者にはなにができて、どのような要件が必要かを見ていきましょう。
共有持分権者ができることと、要件は次のようなものです。
(1) 単独で可能なこと
・保存行為
不動産の現状を維持するため、建物を修繕したり不法占拠者を追い出したりすること
・使用行為
共有している不動産で居住すること
(2) 過半数の同意が必要
同意する「人数」ではなく「持分割合」が過半数であることが基準になります。
・利用行為
不動産を短期的に賃貸借に出したり賃貸借契約を解除したりすること
・改良行為
不動産をリフォーム・リノベーションすること
(3) 全員の同意が必要
・処分行為
不動産を売却したり、抵当権を設定したり、借地借家法の適用のある賃貸借契約を締結したりすること
したがって共有の不動産の売却には共有者全員の同意が必要です。
2.マイホームを売った場合の譲渡所得からの3,000万円特別控除の特例はどうなるのか?
マイホーム(居住用財産)を売ったとき、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。これを、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」(以下、特例)といいます。
共有のマイホームを売った場合には、基本的にはこの特例を適用できますが、特例の適用を受けることができるかどうかは、共有者ごとに判定します。
(1) 特例の適用の対象者について
特例の適用の対象者は共有者全員で、特別控除額は共有者全員で最高3,000万円ではなく、共有者1人につき最高3,000万円です。
なお、この特例の適用を受けるためには、一人一人が確定申告をすることが必要です。
また、家屋は共有でなく、敷地だけを共有としている場合、「家屋の所有者以外の者」は、原則としてこの特例の適用を受けることはできません。
(2) 特例による譲渡所得の計算
共有のマイホームを売った人の譲渡所得の計算は、共有者の所有権持分に応じて行います。
最高3,000万円まで控除できます。
例)家屋及びその敷地が夫と妻の共有である場合で、
夫の持ち分が、家屋及びその敷地とも5分の3、妻の持ち分が、家屋及びその敷地とも5分の2の場合
譲渡益計算
夫 譲渡益3,000万円―特別控除額3,000万円=譲渡所得金額0円
妻 譲渡益2,000万円―特別控除額2,000万円=譲渡所得金額0円
(夫婦それぞれに最高3,000万円の特別控除が適用できます。譲渡益5,000万円を持ち分に応じて配分した場合です)
(3) 住宅ローンの残債が残っている場合のローン返済
共有名義の不動産を売却するときは、上記の税金だけでなくローン返済にも注意が必要です。たとえば、売却時に住宅ローンの残債が残っている状態で不動産を売却する場合には残債を一括返済する必要があります。
売却資金から返済できれば良いですが、仮に残債より売却価格が小さいと自己資金を用意しなければならないこともあります。形式的にはローンの返済義務は契約上資金を借りた人になります。
自己資金で支払うのであれば、共有持分権者のうち誰がどの比率で返済費用を負担するのか決めておく必要があります。
まとめ
・不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要です。
・共有のマイホームを売った場合にも、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用できます。
・特例の適用の対象者は共有者全員で、特別控除額は共有者全員で最高3,000万円ではなく、共有者1人につき最高3,000万円です。
・家屋は共有でなく、敷地だけを共有としている場合、「家屋の所有者以外の者」は原則としてこの特例の適用を受けることはできません。
・特例の適用を受けるためには、確定申告をすることが必要であり、確定申告書は適用を受ける人、一人一人が提出する必要があります。