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中古住宅を売りやすくする「建物状況調査」(インスペクション)とは?
中古住宅を売りやすくする「建物状況調査」(インスペクション)とは?
中古住宅では築年数に応じた経年劣化が生じています。また、リフォーム済の中古住宅であっても、補修がどの程度行われたのか、さらに、今後の補修の必要性の有無についても買主にとっては重要です。そこで、中古住宅の状況を証明する手段として、第三者の建築の専門家による「建物状況調査」があります。「建物状況調査」のことをインスペクションと呼んでいる場合もあります。建物状況調査(インスペクション)とはどのようなものか、また、中古戸建て住宅を売却する場合、建物状況調査(インスペクション)により売りやすくなる効果について紹介します。
目次
1. 建物状況調査について
(1) インスペクションとは
(2) 建物状況調査とは
(3) 宅地建物取引業法の改正により、建物状況調査の制度説明が義務化に
(4) 建物状況調査の内容
(5) 建物状況調査を行うメリット
(6) 建物状況調査の費用など
2. 既存住宅売買瑕疵保険について
(1) 既存住宅売買瑕疵保険とは
(2) 既存住宅売買瑕疵保険のメリット
(3) 住宅瑕疵担保責任保険法人について
まとめ
1.建物状況調査について
(1) インスペクションとは
インスペクション(英:inspection)は、「視察・検査」を意味する言葉です。不動産のインスペクションとは、既存住宅の建物状況調査のことを指し、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、専門家が行う調査のことです。
インスペクションは、欧米では中古住宅の購入時に専門家(インスペクター)が住宅の劣化状況や欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見積もり、修繕や売却の際にアドバイスを行うものです。アメリカでは新築住宅よりも中古住宅市場の規模が大きく、中古住宅市場の7割以上の取引でインスペクションが活用されていると言われています。
日本でも欧米の例にならい一部の民間企業では、以前から「ホームインスペクション」や「住宅診断」等の名称で、独自の建物状況調査サービスを展開しています。
(2) 建物状況調査とは
建物状況調査とは、宅地建物取引業法において定められた基準に基づいた検査で、国土交通省の定める講習を修了した建築士が、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分 及び雨水の侵入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するものです。
中古住宅、特に中古戸建住宅については、隠れた不具合、耐震性や断熱性など、現状の品質がわからないことが購入のネックになっていると思われます。国土交通省は、これらの不安を建物状況調査を実施・普及させることで解消し、中古住宅取引の増加を目指そうという狙いです。
従来実施されていた「インスペクション」は、業者ごとに内容や基準が異なるなど、検査内容や検査員の資格の有無などが明確でなかったため、検査員の技術力や検査基準、並びに検査方法の指針を示した「既存住宅インスペクション・ガイドライン」が国土交通省により定められました。
(3) 宅地建物取引業法の改正により、建物状況調査の制度説明が義務化に
宅地建物取引業法の改正により、2018年4月以降は、宅地建物取引業者には依頼者である売主・買主に対する建物状況調査の制度説明や、希望に応じた検査事業者の斡旋、重要事項説明などが義務付けられました。
ただし、これは建物状況調査の実施自体が義務化されたということではなく、制度説明が義務化になったことで、具体的には次のようなものです。
➀媒介契約の締結時に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面を依頼者に交付する。
②買い主等に対して、建物状況調査の結果の概要等を重要事項として説明する。
③売買等の契約の成立時に、建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面を交付する。
(4) 建物状況調査の内容
建物状況調査は、既存住宅状況調査方法基準に従って行うこととされていますが、その内容を簡単にまとめると以下の通りです。
➀構造耐力上主要な部分
基礎・基礎杭・壁・柱・小屋組・土台・筋交いや、火打ち材等の斜材・床板・屋根板・梁等の横架材で、住宅の自重や積載荷重、積雪、風圧、地震等の揺れや衝撃を支えるもの
②雨水の浸入を防水する部分
屋根・外壁・開口部(サッシ等)、雨水を排除するための排水管(屋内にあるもの)
ただし、これは最低ラインを定めたものであり、これ以上の項目を調査することが可能です。
(5) 建物状況調査を行うメリット
売り主として、建物状況調査を行うメリットは次のようなものです。
➀建物状況調査をした物件は、買主にとって安心して購入できるため、売主にとっては物件が売りやすくなること
仮に建物物件の調査費用が5万円であった場合、物件価格を5万円値下げしても売りやすくなることは考えにくいですが、価格はそのままでも建物物件調査付きの物件であれば売りやすくなることが十分予測されます。
②契約前に住宅の現状を把握することで、売却後のクレームを未然に防ぎトラブルを回避できること
結果として売主の責任である瑕疵担保にも対応できます。
(6) 建物状況調査の費用など
➀調査所要時間
建物状況調査の調査にかかる時間は、その建物の大きさや調査概査の調査範囲、物件の状態、依頼内容などに大きく左右されるため、個々のケースで差が大きくありますが、2~4時間程度が目安です。
②調査費用(相場と誰が負担するか)
調査費用は基本的には売主が負担します。
建物状況調査の費用も、建物の大きさなどによって差異があります。相場は、最低ラインだけの簡易的な調査なら5万円程度、詳細な調査なら6~8万円程度が目安です。
国土交通省「インスペクション(既存住宅の点検・調査)」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/jigyousya/inspection.html
2.既存住宅売買瑕疵保険について
(1) 既存住宅売買瑕疵保険とは
既存住宅売買瑕疵保険は、中古住宅の検査と保証がセットになった保険制度です
住宅専門の保険会社(住宅瑕疵担保責任保険法人)が保険を引き受けます。
(2) 既存住宅売買瑕疵保険のメリット
➀安心が確保された既存住宅売買が可能
既存住宅売買瑕疵保険に加入するためには、住宅の基本的な性能について、専門の建築士による検査に合格することが必要です。これにより、中古住宅を購入しようと考える人にとって、安心が確認された住宅の取得が可能となります。
②万一の時にも安心
後日、売買された中古住宅に欠陥が見つかった場合でも、補修費用等の保険金が事業者(事業者が倒産等の場合は買主)に支払われます。
(3) 住宅瑕疵担保責任保険法人について
住宅瑕疵担保責任保険法人は、国土交通大臣が指定した住宅専門の保険会社です。現在、指定を受けた5法人がいずれも全国を対象に業務を行っており、事業者はこの中から自由に選択して保険契約を締結することができます。
まとめ
・インスペクション(英:inspection)は、「視察・検査」を意味する言葉です。不動産のインスペクションとは、既存住宅の建物状況調査のことを指し、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分などについて専門家が行う調査のことを指します。
・建物状況調査とは、宅地建物取引業法において定められた基準に基づいた検査で、国土交通省の定める講習を修了した建築士が、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分 及び雨水の侵入を防止する部分に生じているひび割れ、 雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するための調査です。
・宅地建物取引業法の改正により、2018年4月以降は、宅地建物取引業は依頼者である売主・買主に対する建物状況調査の制度説明や、検査事業者の資料提供などの重要事項説明が不動産会社に義務付けられました。