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譲渡所得の対象となる資産と、ならない資産とは
譲渡所得の対象となる資産と、ならない資産とは
不動産に関する譲渡所得の対象となる資産では、不動産の売買・交換による譲渡所得、借地権・取引慣行のある借家権・配偶者居住権・配偶者敷地利用権・地上権・賃借権・地役権などを設定して権利金、収容などでの補償金などがあります。また、譲渡所得の対象とならない資産では、競売・破産などの場合、国や指定された公的団体への土地建物の寄付、財産を相続税の物納に充てた場合などがあります。譲渡所得の対象となる資産と、ならない資産にはどのようなものがあるか、また、その課税方法などにつき紹介します。
目次
1.資産の譲渡とは
2.譲渡所得の対象となる資産
(1) 法人に対して資産を贈与した場合や限定承認による相続などがあった場合
(2) 1億円以上の有価証券等を所有している一定の居住者が国外転出等をする場合
(3) 地上権や賃借権、地役権を設定して権利金などを受け取った場合
(4) 資産が消滅することによって補償金などを受け取った場合
3.譲渡所得の対象にならない資産
(1) 生活用動産の譲渡による所得
(2) 競売、破産などの強制換価手続により資産が競売などをされたことによる所得
(3) 貸付信託の受益権等の譲渡による所得
(4) 国または地方公共団体に対して財産を寄附した場合や、公益を目的とする事業を行う法人に対する財産の寄附で、国税庁長官の承認を受けた場合の所得
(5) 国等に対して重要文化財を譲渡した場合の所得
(6) 財産を相続税の物納に充てた場合の所得
(7) 債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の所得
4.譲渡所得以外の所得として課税されるもの
5.譲渡した資産の種類別の課税方法
まとめ
1.資産の譲渡とは
資産の譲渡とは、有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為を言い、売買のほか、交換、競売、公売、代物弁済、財産分与、収用、法人に対する現物出資なども含まれます。
2.譲渡所得の対象となる資産
譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいいます。
譲渡所得の対象となる資産には、土地、借地権、建物、株式、金地金、宝石、書画、骨とう、船舶、機械器具、漁業権、取引慣行のある借家権、配偶者居住権、配偶者敷地利用権、ゴルフ会員権、特許権、著作権、鉱業権、その他の動産などが含まれます。
なお、貸付金や売掛金などの金銭債権は除かれます。
また、次の場合にも資産の譲渡があったものとされます。
(1) 法人に対して資産を贈与した場合や、限定承認による相続などがあった場合
なお、次の➀または②のような事由により資産の移転があった場合には、時価(通常売買される価額)で資産の譲渡があったものとされます。
➀法人に対する贈与や遺贈、時価の2分の1未満の価額による譲渡
②限定承認の相続や限定承認の包括遺贈(個人に対するものに限られます。)
限定承認とは、相続によって得た財産の範囲内で、被相続人(亡くなった方)の債務を弁済する方法です。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有します(民法第990条)。相続が開始すると遺産は相続人と包括受遺者の遺産共有状態となります。包括受遺者は、債務も承継し、遺産分割協議にも参加することとなります。包括遺贈の承認は、特定遺贈と異なり、限定承認と同じ手続きを行います。
(2) 1億円以上の有価証券等を所有している一定の居住者が国外転出等をする場合(平成27年7月1日以後)
(3) 地上権や賃借権、地役権を設定して権利金などを受け取った場合
建物や構築物を所有するための地上権や賃借権の設定などにより受ける権利金などについても、その金額が借地権の設定された土地の時価の2分の1を超える場合には、譲渡所得の対象とされます。(地下または空間などについての権利については別途規定)
(4) 資産が消滅することによって補償金などを受け取った場合
収用などにより、借地権、漁業権などの資産の消滅や、その価値の減少により一時に補償金などを受け取ったときは、補償金などは譲渡所得の対象とされます。
その他、ストック・オプション税制に関するものがあります。
3.譲渡所得の対象にならない資産
資産の譲渡による所得のうち、次の所得については課税されません。
(1) 生活用動産の譲渡による所得
家具、什器、通勤用の自動車、衣服などの、生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。
ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は除きます。
(2) 競売、破産などの強制換価手続により資産が譲渡された場合の所得
資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合における、滞納処分や強制執行、担保権の実行としての競売、破産手続等の強制換価手続による資産の譲渡による所得で、その譲渡代金の全部が債務の弁済に充てられたものです。
(3) 貸付信託の受益権等の譲渡による所得
長期信用銀行債等、貸付信託の受益権、農林債などの譲渡などによる所得です。
(4) 国または地方公共団体に対しての財産の寄附や、公益を目的とする事業を行う法人に対する財産の寄附で国税庁長官の承認を受けた場合の所得
一般民間法人に対して財産を贈与または遺贈(寄附)した場合には、時価で財産の譲渡があったものとされますが、国や地方公共団体に対して財産を寄附した場合や、公益を目的とする事業を行う法人に対する財産の寄附で国税庁長官の承認を受けた場合には、その寄附については課税されません。
(5) 国等に対して重要文化財を譲渡した場合の所得
文化財保護法により指定されている重要文化財(土地を除きます)を国、独立行政法人国立文化財機構、独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立科学博物館、地方公共団体、一定の地方独立行政法人、または、一定の文化財保存活用支援団体に譲渡した場合の譲渡所得については課税されません。
(6) 財産を相続税の物納に充てた場合の所得
財産を相続税の物納に充てた場合には、その財産の譲渡はなかったものとみなされます。
ただし、物納の許可限度額を超える価額の財産を物納した場合には、その超える部分は譲渡所得の課税対象になる場合があります。
(7) 債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の所得
中小企業者である法人の取締役等で法人の債務の保証人であるものが、法人の事業の用に供されている資産を法人に贈与した場合には、一定の要件の下、贈与はなかったものとみなされます。
4.譲渡所得以外の所得として課税されるもの
資産の譲渡による所得であっても、次の所得は譲渡所得ではなく、事業所得や雑所得、山林所得として課税されるものがあります。以下のようなものです。
➀事業所得者が商品、製品、半製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産を譲渡した場合の所得は、事業所得となります。
②不動産所得や山林所得、雑所得を生ずる業務を行っている者が、その業務に関して上記➀の棚卸資産に準ずる資産を譲渡した場合の所得は、雑所得となります。
③使用可能期間が1年未満の減価償却資産、取得価額が10万円未満である減価償却資産などを譲渡した場合の所得は、事業所得または雑所得となります。
④山林を伐採して譲渡した場合または立木のまま譲渡した場合の所得は、山林所得となります。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採して譲渡したり、立木のまま譲渡した場合の所得は、事業所得または雑所得となります。
⑤上記以外の資産を相当の期間にわたり、継続的に譲渡している場合の所得は、事業所得または雑所得となります。
5.譲渡した資産の種類別の課税方法
譲渡資産の種類により課税方法は、総合課税と分離課税があります。
総合課税は、譲渡所得の金額を、事業所得や給与所得などの他の所得の金額と合計し、所得税法に規定された累進税率によって税額を計算します。
分離課税は、譲渡所得金額についての税額を、事業所得や給与所得などの他の所得の金額とは区別し、租税特別措置法に規定された税率によって計算します。
具体的には次のようになります。
➀土地(借地権等の土地の上に存する権利を含む)および建物等
分離課税
②株式等
分離課税
③ゴルフ会員権の譲渡に類似するもの
総合課税
④その他の資産
総合課税
*国税庁「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
まとめ
・資産の譲渡とは、有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為を言います。
・譲渡所得の対象となる資産には、土地、借地権、建物、株式等、金地金、宝石、書画、骨とう、船舶、機械器具、漁業権、取引慣行のある借家権、配偶者居住権、配偶者敷地利用権、ゴルフ会員権、特許権、著作権、鉱業権、その他動産などが含まれます。
・その他、譲渡所得の対象となる資産には次のようなものがあります。
➀法人に対して資産を贈与した場合や限定承認による相続などがあった場合
②1億円以上の有価証券等を所有している一定の居住者が国外転出等をする場合
③地上権や賃借権、地役権を設定して権利金などを受け取った場合
④資産が消滅することによって補償金などを受け取った場合
・譲渡所得の対象にならない資産には次のようなものがあります。
➀生活用動産の譲渡による所得
②競売、破産などの強制換価手続により資産が競売などをされたことによる所得
その他、財産を相続税の物納に充てた場合の所得など