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負担付贈与とは?普通の贈与との違いは?
負担付贈与とは?普通の贈与との違いは?
贈与にも普通の贈与と負担付贈与というものがあります。また、普通の贈与にも種類があります。普通の贈与でも負担付贈与でもお互いの合意が必要です。解除についても一定の条件でいずれかでも行うことができます。それだけに十分双方が納得した合意が重要となってきます。特に負担付贈与では、負担と義務が具体的に明確であることが重要になってきます。この記事では、負担付贈与とはどのようなもので、普通の贈与とどのような違いがあるのかを紹介します。
目次
1. 負担付贈与とは
(1) 負担付贈与とは
(2) 負担付贈与の法律的な意味
(3) 負担付贈与の具体例
(4) 負担付贈与のメリット
2. 負担付贈与と普通の贈与の違い
(1) 負担付贈与では、財産をもらう人が何らかのことをしなければならないという負担を負う。
(2) 負担付贈与では、財産をあげた人は担保責任を負う。
(3) 負担付贈与では、贈与された側の贈与税のかかる部分が少ないこと
(4) 負担付贈与では、財産をあげた人が税金を納める場合があること
まとめ
1.負担付贈与とは
(1) 負担付贈与とは
負担付贈与とは、財産をもらう人が、財産をあげる人に対して、何らかのことをしなければならないという「負担の付いた贈与」のことです。
負担付贈与は、いくつかの点で普通の贈与と異なる特殊な形の贈与です。
(2) 負担付贈与の法律的な意味
贈与は、財産をあげる人と財産をもらう人との間の契約です。負担付贈与は贈与の一種です。従って、負担付贈与も、財産をあげる人と財産をもらう人との間の契約です。
➀負担付贈与契約は双方の合意だけで成立する。
負担付贈与契約は、財産をあげる人と財産をもらう人との間の双方の合意のみによって成立する双務契約です。
契約書を作ることは、負担付贈与契約の成立のために必ず必要なものではありません。
しかし、実際には契約書を作った方が確実です。贈与契約は、財産をあげる人・もらう人のどちらからでも、撤回ができるからです。
②負担付贈与契約の当事者が負う義務
a. 財産をあげる人の義務
財産をあげる人は、負担付贈与契約に定められたとおりに財産をあげる法律的な義務を負います。例えば、介護に関する負担付贈与として、週2回自宅で家事支援をする約束で年間の契約とする場合、月10万円をあげる義務を負います。
b. 財産をもらう人の義務
財産をもらう人は、負担付贈与契約に定められたとおりに負担を果たす法律的な義務を負います。上記の例で言えば、週2回自宅で家事支援を行わなければなりません。
③負担付贈与契約は解除できるのか?
契約の解除とは、契約の当事者の一方が契約で決めたことをきちんと行わない場合、相手方が契約解除の意思を表すことにより、契約が初めから無かった形にすることをいいます。
負担付贈与契約における財産をあげる人の義務と財産をもらう人の負担との関係は、双方が義務を負う双務契約であり、一方の義務が果たされない場合、相手方は契約解除できます。
(3) 負担付贈与の具体例
負担付贈与とはどのような贈与なのか具体的に挙げてみます。
➀介護の負担
お金をあげて介護をしてもらう場合などです。
②住宅ローンの負担
住宅をもらう人が、住宅をあげる人の残りの住宅ローンを支払うことになる場合などです。
(4) 負担付贈与のメリット
負担付贈与には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
➀財産をあげる人は、財産をもらう人からの見返りがあること
負担付贈与では、財産をあげる人は、あげっぱなしではなく、財産をもらう人からも自分のために何らかのことをしてもらうことができます。
②財産をあげる人は、財産をもらう人に確実なお礼ができること
財産をあげる人は財産をもらう人に、契約により権利と義務の形に位置付けられ法律によって守られ確実にお礼ができます。もらう人にとっても安心です。
③事業経営者の場合、スムーズな事業承継ができること
会社の経営者である社長が、事業の承継者に会社の経営権をあげる代わりに、承継者は会社の借金も引き継ぎ返済していくというような契約です。
④財産をもらう人にとって、贈与税のかかる部分が少なくなること
財産をもらう人は、贈与税を納めなければなりません。負担付贈与と普通の贈与では「負担した額」が控除できることがあります。簡易な計算式は次のようなものです。
・負担付贈与の贈与税
「もらった財産の額-「負担した額」-基礎控除額110万円」
・普通の贈与税
「もらった財産の額-基礎控除額110万円」
この結果、負担付贈与の贈与税は普通の贈与の贈与税よりも安くなることが多くなります。
2.負担付贈与と普通の贈与の違い
負担付贈与は、特殊な贈与の形です。負担付贈与と普通の贈与とは、どのような違いがあるのでしょうか。代表的な4つの違いについて説明します。
(1) 負担付贈与では、財産をもらう人が何らかのことをしなければならないという負担を負う。
負担付贈与では、財産をもらう人が財産をあげる人に対して、何らかのことをしなければならないという負担を負います。
普通の贈与では、財産をもらう人は財産をもらうだけで、あげる人に対して何かしなければならないことはありません。
(2) 負担付贈与では、財産をあげた人は担保責任を負う。
負担付贈与契約では、財産をあげた人は、財産をもらった人の負担の限度において、担保責任を負います。負担付贈与では、財産をもらった人は財産をあげた人に対して何らかの負担を負うので、財産をあげた人に担保責任を負わせることで、財産をもらった人との間の公平を保たせるためです。
「財産をもらった人の負担の限度において」とは、たとえば、残り500万円の住宅ローンを支払うという負担付きで住宅をもらったところ、屋根が雨漏りをする場合、家をもらった人が、家をあげた人の担保責任として損害賠償請求をする場合、請求額の上限が500万円になるという意味です。
普通の贈与では、財産をあげる人は原則として、担保責任を負いません。贈与契約において決めた物をそのまま渡すことで、財産をあげる人の責任は果たされます。財産をもらう人は何ら負担を負うことなく財産をもらうだけだからです。
担保責任とは、あげた物に不備があった場合、あげた人がもらった人に対して負う責任のことです。
(3) 負担付贈与では、贈与された側の贈与税のかかる部分が少ないこと
前述のように、負担付贈与の方が、贈与税が安く算定される結果につながってきます。
ただし、負担を金銭評価できない場合は控除されないことがあります。残りの住宅ローンを支払う負担を負う場合のように金銭評価できる負担であれば控除されますが、介護をしてもらうなど、負担を金銭で評価できない場合は原則として控除されることがないことが注意点です。
*贈与税の計算式
(贈与された財産の価額-負担した額―基礎控除額110万円)×贈与税率-控除額=贈与税額
贈与税率と控除額は、贈与された財産の価額に応じて定められています。税率は標準的に40%が目安です。
参考:国税庁 贈与税の計算と税率(暦年課税)
(4) 負担付贈与では、財産をあげた人が税金を納める場合があること
負担付贈与では、税金制度の目から見て、財産をもらう人よりもあげた人が得をしたといえる場合、財産をあげた人が税金を納めなくてはならない場合があります。負担付贈与により財産をあげた人が、国に所得税を、都道府県や市区町村に住民税を、それぞれ納めなくてはならない場合があります。
普通の贈与では、あげるだけの人ともらうだけの人という関係なので、財産をあげた人が税金を払うというケースは生まれません。
まとめ