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相続、贈与に関連した「みなし贈与」とは? PART1
相続、贈与に関連した「みなし贈与」とは? PART1
「本来の贈与」の場合、本人は贈与を行なったという認識があるため、贈与税の支払いをする可能性があることを知っていますが、「みなし贈与」と見なされる場合、本人は贈与を行なったという認識がないことが多く、結果的に贈与税の支払いを怠る場合があります。しかし、みなし贈与と税務署から認定されると、贈与税よりも重い税金がかかってしまいます。相続と贈与に関連し、みなし贈与とはどのようなもので、どのような基準で判断されるのか、また、みなし贈与と見なされない対策などについて紹介します。
目次
1. みなし贈与について
(1) みなし贈与とは
(2) みなし贈与と本来の贈与との違い
2. みなし贈与の制度は何故できたのか
3. みなし贈与の判断基準
4. みなし贈与となるケース
5. みなし贈与を回避する方法
(1) 生活費の贈与はみなし贈与にならない。
(2) 毎年110万円までの贈与税の非課税枠を活用する。
(3) 相続時精算課税による2,500万円の特別控除
(4) 住宅取得等資金の贈与の非課税
(5) 贈与税の配偶者控除の非課税
(6) 教育資金の一括贈与の非課税
(7) 結婚・子育て資金贈与の非課税
(8) 特定障害者に対する贈与税の非課税
まとめ
1.みなし贈与について
(1) みなし贈与とは
みなし贈与とは、「贈与とみなす」という意味で、本来の贈与のように双方の合意がなく、贈与の意図もなかったが、実質的に贈与を受けたことと同じように経済的利益がある場合に、贈与があったとみなされ贈与税が課税される制度のことです。
(2) みなし贈与と本来の贈与との違い
本来の贈与とは、財産を渡す側の「あげます」という意思と、受け取る側の「もらいます」という双方の合意に基づき、相手に無償で財産をあげることをいいます。
一方、みなし贈与とは、前述したように双方に贈与の認識がなかった場合でも、借入れを免除してもらったり、著しく安い価額で財産を売買したりするなど、相手から利益を受けた場合は、実質的に贈与を受けたものとみなして贈与税を課税するという税法独自の規定です。
2.みなし贈与の制度は何故できたのか
財産が多くある富裕層は、相続税が多額にならないように生前贈与をして、相続税額を押さえるようにしたいと考えます。しかし、相続税は、「富の再分配」という観点から課せられた税金です。そのため、相続税を納めることから逃れるために生前贈与をすることを防止する目的で、贈与税の制度ができました。さらに、贈与の意識がなくても実質的に利益の提供があったものに対しても、税の公平性のために贈与と見なし課税することが必要とされました。
3.みなし贈与の判断基準
みなし贈与の認定については税務署の判断によります。
判断基準としては、「社会通念上著しく低い価格」で提供することで実質的に贈与となっている場合や、相手に経済的利益が生じるような場合には、みなし贈与と判断されます。
明確な基準が法律で定められているわけではなく個別に判断されます。
「著しく低い価格」としての目安は、土地取引の場合であれば、「時価の80%未満の価格」を指すと判断されています。(東京地方裁判所の平成19年8月23日判決)
4.みなし贈与となるケース
どのような場合がみなし贈与とされるか次のようなものがあります。意図しない場合もあり事前に知っておくことが大切です。
➀不動産や土地の譲渡
a. 時価の80%未満の金額での土地売却
前述したように、土地などの不動産の売買においては、「時価の80%未満」で取引された場合は、みなし贈与に該当するという裁判例があり、これが現在の実務の基準となっています。
b. 親が建てた家を、子ども名義にすること
親が建てた家を、親名義にせず、子ども名義にすることもみなし贈与と判断されます。
ただし、子どもが家を建てたり、購入するために親がお金を出してあげる行為は、一定金額まで贈与税がかからない税の特例があります。
②通常の株価に比べて著しく安い株式の譲渡
株式の譲渡を行う場合、通常の株価に比べて著しく安く譲る行為は、みなし贈与と判断されます。
上場株を、証券取引所を介して第三者へ売却する場合は、市場価格に沿った価格で譲渡されますが、個人的に譲渡する場合は価格を自由に決められるため、市場価格より安く譲渡する場合があります。
また、未上場の会社で、家業としている会社の経営権を子供に渡すために、自分の所有している株式を子どもに安く譲るようなケースがあります。
株式の譲渡の場合、贈与税がかかるかどうかは、土地売買のケースの「時価の80%未満」が判定基準として、「時価の80%未満」が参考基準になることが多いようです。
③動産などの著しい低額譲渡
美術品などの動産を著しく安い金額で譲渡する場合も、みなし贈与と判断される可能性があります。
これに関しては、法律等や裁判例などで定められた基準はなく、個々のケースごとに判断されます。
④配偶者や子どもなどへの預金の移動
配偶者や子どもなどに一時的に金銭を預けたという預金移動の場合も、贈与と判断されてしまう可能性があります。
介護などで、自分の財産を管理してもらう場合にも、贈与と見た目が変わらなくなってしまうので、その事実を資料や書面等で残すようにする必要があります。
⑤生命保険の名義変更
贈与税課税対象の判断は、誰が保険料を払って、誰が保険金を受け取るのかで行われます。
生命保険は、一定期間の保険料の支払いの後、解約や満期を迎えると返戻金や保険金が受け取れます。このため、生命保険の名義変更を行うと利益が移転したと考えられます。
たとえば、1年間の保険料が50万円、20年満期で1,000万円受け取れる保険があるとします。夫が保険料を払い続けて15年目になってから、保険の契約者を夫からその子どもに変更するとどうなるでしょうか。この場合、子供が保険料を負担した額は5年分の250万円なので、子どもが受取人の場合、受け取った1,000万円から250万円を引いた750万円が贈与税の対象となります。
(PART2へ続く)