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売却時の不動産査定の方法
―手持ち不動産はいくらぐらいか。その査定の方法を知っておこう!―
不動産売却時の第一歩は不動産の査定です。しかし、査定の方法はあまり知られていません。
不動産を売却するならば、まずやっておく必要のある不動産査定の方法と評価方式について知っておきましょう。また、査定結果が出たらその内容が理解できるようにしていくことが重要です。また、会社により査定評価に差が出る場合もあるので、査定ポイントの要素についても理解できるようにしておきます。
目次
1.不動産査定とは
2.不動産会社が行う不動産査定の方法
(1) 簡易査定(机上査定)
(2) 訪問査定(詳細査定)
3.不動産査定の算出方法
(1) 取引事例比較法
(2) 原価法
(3) 収益還元法
4.不動産鑑定士による査定の方法
5.銀行による不動産査定の方法
6.公益財団法人 不動産流通推進センターの価格査定マニュアル
まとめ
1.不動産査定とは
不動産の売却を考えたら、まず、不動産会社に査定を依頼することで始まります。
不動産査定とは「売れそうな価格」を不動産会社に見積もってもらうことを指します。その他、不動産鑑定士による査定、銀行による不動産査定の場合がありますがそれぞれ目的は異なります。「売れそうな価格」ではなく、公的価格表示目的であったり、融資の際の担保評価のための目的であったりします。
2.不動産会社が行う不動産査定の方法
不動産会社により査定額は多少異なる場合が多くあります。会社により任意に査定するためです。不動産会社の査定はあくまでも営業活動の一環でその後の媒介契約へと進展していくプロセスです。不動産会社の査定は無料ですが、その後、自社で仲介契約をして、売買契約をするためのサービスとしての位置づけがあります。
不動産会社が出す不動産査定の根拠は、会社によって多少異なりますが一般的には100,000円~200,000円ほどプラスマイナスされる程度と言われています。
根幹となる金額は、「地価」と呼ばれる国が決めた土地の価値と「減価償却」と税務署が決めた建物の価値の出し方によって決まります。
なお、不動産会社の行う査定方法では方法では机上査定(簡易査定)と訪問査定(詳細査定)の2つあります。
(1) 机上査定(簡易査定)
机上査定とは簡易査定とも呼ばれる方法で、机上で行えることだけで査定を行うと言えば分かりやすいでしょう。机上査定はインターネットなどで受け取ったデータで、立地や土地の大きさ、マンションなどの建物の場合は築年数、階数や方角などを見て査定価格を算出します。
実際に現地を見ないため、建物の状況や周囲の環境などが不明で、査定の精度は低くなりがちです。戸建ての場合は個別性が高く老朽化すると価値が急激に下がり、机上査定では正確な価格を出すことが難しいですが、都心のマンションの場合には似たような条件を持つ物件も多く、机上査定でもある程度の精度のある査定が出やすいと考えられます。
いずれにせよ、机上査定は売却の検討段階であるなど、おおよその査定価格を知りたいという方に向いている査定方法です。
(2) 訪問査定(詳細査定)
一方、訪問査定は詳細査定とも呼ばれる方法で、机上査定と同じく書類上の査定も行った後、現地に足を運び、建物の劣化具合や付帯設備の状況、駅から建物までの雰囲気など細かく確認します。机上査定と比べてより精度の高い査定を受けることができますが、机上査定が当日~翌日には結果が聞けるのに対し、訪問査定は1週間程時間がかかることが多いです。
不動産会社と媒介契約を結んで売却価格を決める際には、訪問査定を行って算出した査定価格を用います。具体的に売却を考えている場合には机上査定ではなく訪問査定を依頼すると良いでしょう。
3.不動産査定の算出方法
次は査定の算出方法です。査定の算出方法には、取引事例比較法、原価法、収益還元法の3つがあります。
(1) 取引事例比較法
取引事例比較法は、売却する不動産と条件の近い不動産の過去の取引実績を加味して、査定する物件との環境をプラスマイナスしていき査定額を計算する方法です。
取引事例比較法は、土地やマンションによく使われる査定方法です。
選んだ不動産の平均坪単価を算出し、算出された単価に、売却する不動産の坪数を掛け合わせ、その金額をベースに個別事情(最寄駅からの距離や、広さ・間取り、築年数など)を考慮して査定結果を出します。
(2) 原価法
原価法は今建っている建物を取り壊したと仮定して、同じ建物をもう一度建てた時にいくら費用(再調達価格)がかかるのかを計算し、その価格から建物の老朽化分だけを差し引く(これを減価修正と呼びます)査定方法です。一戸建ての建物部分の査定に利用されることが多いです。
原価法は以下の計算式で計算を行います。
*原価法=再調達価格×延床面積×減価修正(残耐用年数÷耐用年数)
再調達価格と法定耐用年数は建物の構造によって異なります。
(3) 収益還元法
収益還元法は、もし収益(投資)用物件とした場合に将来どれぐらい利益が出るのかを加味して計算する査定方法です。
アパート、マンションなど収益(投資)用物件に使われる査定方法になります。
収益還元法には直接還元法とDCF法と呼ばれる方法があります。多くの場合は、より簡易な直接還元法を利用して価格を算出しています。
直接還元法は不動産が生み出す1年間の収益を、周辺地域の類似した物件の利回り(還元利回り)で割り戻して不動産の価値を求める方法です。計算方式は次のようなものです。
*直接還元法=年間家賃収入÷還元利回り×100
4.不動産鑑定士による査定の方法
不動産会社以外が行う不動産査定の方法では不動産査定鑑定士が行う査定方法があります。
不動産鑑定士とは、国家資格を持った不動産鑑定のプロのことです。不動産鑑定士は難関の国家資格を取らなければ事業を行うことができないため、専門性の高い職業で、公的価格の評価にも関わっています。
専門家である不動産鑑定士が行う不動産査定の方法は非常に複雑で、現地の確認と計算だけではなく、様々な調査に基づいて不動産の価値を見出します。取引価格だけでなく、使用価値なども総合して考慮します。
民間の用途で不動産鑑定士の評価が必要な場合は、鑑定に費用と時間がかかります。
時間をかけて調査する点と、専門的知識を使っているという点から、不動産鑑定士が行う不動産査定の費用は数万円~20万円程度です。
期間は1週間~1ヶ月ほどかかります。
客観的な制度が高いため、相続税評価、裁判や離婚調停などで不動産査定を行うときは必ず不動産鑑定士を使うようになっています。
5.銀行による不動産査定の方法
銀行は再調達価額法を使います。先述したように、再調達価額とは、評価する建物を今、新築した場合の建築費用の平米単価です。
再調達価額は、銀行が独自に決めるものなので、各銀行によって異なり、耐用年数も国税庁の定める法定耐用年数と銀行が独自に定める経済的耐用年数があります。
銀行が不動産査定を行う目的は、住宅ローンを利用するときに対象となる不動産の価値を見出す際に使います。
住宅ローンは、支払いができなくなると貸し出しの対象となった不動産を没収するという仕組みです。そのため没収した不動産が貸し出ししている住宅ローンと同じ、もしくはそれ以上の価値がなければ銀行は損をしてしまうため、銀行は独自の不動産査定の方法で価値を見極めるようになっています。
6.公益財団法人 不動産流通推進センターの価格査定マニュアル
公益財団法人 不動産流通推進センターでは、不動産業界団体に所属している宅地建物取引業者に価格査定マニュアルを提供しています。不動産業界団体では、全国宅地建物取引業協会連合会、全日本不動産協会、不動産流通経営協会、全国住宅産業協会があります。
不動産会社は所有者からのヒアリング内容、現地調査の内容、査定者が目視したデータ、記録書類・証明書類の内容を入力し「査定価格」を売主へ提示できるようになっています。
(1) 戸建て住宅の価格査定
戸建住宅では、土地と建物部分を分けて査定し、それぞれの結果を合算して戸建住宅全体の物件価格を算出します。
①土地の価格査定
価格査定マニュアルでは、土地は「事例比較方式」で査定されます。「事例比較方式」は、査定地と同じ様な取引事例地を選んで比較・評価し、価格を算出するものです。
・土地の評価項目
土地では、特に交通の便や日照・採光、道路幅員や方位、敷地の形状などによって評価が大きく変わります。価格査定マニュアルでは各項目について、評点を設定しています。
②建物の価格査定
建物部分の査定では、同じ建物を現時点で建てた場合の新築価格をもとに経過年数やリフォーム等の維持管理状況等を踏まえて、現在の建物価格を求めます。
・建物、物件全体の査定方法、評価項目
価格査定マニュアルでは、新築時の単価をもとに建物の規模や耐震性、使用している部材や設備のグレードと耐用年数、リフォームや維持管理状態などを考慮して現時点の残存価格を算出します。住宅性能や省エネ設備等の付加価値が確認できれば加点され、さらに物件の外観等の現況を評価して建物価格を査定します。
最後に、土地と建物の価格を合算し、必要に応じて「流通性比率」を考慮して戸建住宅全体の価格を算出します
(2) 中古マンションの査定方法
価格査定マニュアルでは、中古マンションは「事例比較方式」で査定されます。
「事例比較方式」は、査定マンションと同じ様な事例マンションを選んで比較評価し、価格を算出するものです。
・中古マンションの評価項目
中古マンションでは、対象住戸の所在階や室内の維持管理状況、耐震性の確保などによって評価が大きく変わります。価格査定マニュアルでは各項目について、評点を設定しています。
まとめ
・不動産会社により査定は営業活動の一環で、査定は無料で、その後媒介契約へ結び付ける要素があります。また、不動産会社によって出てくる査定額は異なる場合が多くあります。