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不動産売買契約書のチェックポント
―トラブルを防ぐ注意点とは?―
不動産の売買契約は、高額であるだけに一般的に口頭での合意ではなく、契約書を作成して取り交わします。仲介業者が取引条件についての重要事項を説明した後、双方が納得した上で不動産売買契約書に署名・捺印し、権利や義務を履行することになります。
気をつける必要があるのは、一度契約を締結してしまうと、簡単に解除することはできないことです。最終的には自己責任ということになってしまうので、契約内容についてはくれぐれも見落としのないよう確認するようにします。特に、支払いや金銭が関係してくる内容の部分は注意が必要です。
目次
1.不動産売買契約書について
2.不動産売買契約書で、宅地建物取引業法上決めておかなければ内容
(1) 契約の当事者の特定
(2)売買の目的物の表示
(3)売買の対象面積と売買代金の決定方法
(4)境界の明示
(5)代金の支払い方法
(6)手付金・手付解除
(7)所有権の移転・引き渡し・登記
(8)設備・備品等
(9) 抵当権などの抹消
(10)公租公課などの精算
(11)危険負担
(12)契約違反による解除
(13)反社会的勢力排除条項
(14)ローン特約
(15)契約不適合責任
3.売買契約書のチェックポイント
まとめ
1.不動産売買契約書について
法律的に言えば契約は口頭によっても双方の合意だけでも成立しますが、不動産売買においては商品が高額であるだけに、一般的には売買契約書の作成・調印によって不動産売買契約は成立すると考えるべきと言われています。争いになったときに、口約束だけで書面がなければ解決がむずかしいことは明らかです。
なお、不動産売買契約書の記載内容の決め方は自由です。
標準的な不動産売買契約書の書式例はありますが、不動産売買契約書の記載内容の決め方自体は自由です。
ただし、契約は売主、買主双方が納得できるものでなくてはなりませんからバランスの取れた標準的な内容は必要でしょう。
標準的な不動産売買契約書の書式例を使いながらも、当事者間の特別の合意内容を定めておく場合は、「特約」というかたちで、契約条項を追加したり変更したりすることが行われています。
2.不動産売買契約書で、宅地建物取引業法上決めておかなければ内容
売買契約契約書にはどんな内容が記載されるのか、主要なポイント・注意点を確認します。。
マンションや土地、戸建などの不動産の売買契約書については、宅地建物取引業法で記載すべき事項が決められています。その主なポイントは以下の通りです。
(1) 契約の当事者の特定
契約の当事者である売主と買主の住所・氏名を表示します。法人の場合は名称(商号)、代表者氏名、事務所の所在地を表示します。
(2)売買の目的物の表示
売買される物件とその範囲を表示します。原則として登記記録の内容をそのまま記載します。
(3)売買物件の対象面積と代金の決定方法
土地については、売買代金を登記記録上の面積で決定する方法と、実測面積で確定させる方法があります。さらに実測面積の場合は売買契約までに確定させる方法と、契約後に実測して確定し精算する方法に分かれます。
建物については、登記記録上の面積で代金を確定する方法が一般的です。マンションの専有面積は、登記記録上では内法面積(壁の内側の線で囲まれた面積)で表示され、新築時のパンフレットなどに表示される壁芯面積(壁の厚みの中心線で囲まれた面積)より数字がやや小さくなるので、どちらの面積で表示したかを買主に明示する必要があります。
(4)境界の明示
売主は物件の現地の隣地との境界を買主に明示する必要があります。境界が不明な場合には、隣地所有者との間で境界を確定しなければなりません。越境物がある場合、それを買主が承継するのか、引き渡しまでに売主が解消するのかを特約で明示します。
(5)代金の支払い方法
代金の支払い時期とその方法を明記します。代金は契約締結時に買主から手付金を受け取り、引き渡し時に残代金の支払いを受けるのが一般的です。実測売買で引き渡し時に精算する場合は、その方法についてあらかじめ取り決めておくことが必要です。
(6)手付金・手付解除
売買契約の締結と同時に買主から支払われる手付金は、最終的に売買代金に充当されます。当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄し、売主は手付金の倍返しすれば契約を解除することができます。
(7)所有権の移転・引き渡し・登記
売主による所有権の移転・引き渡し・移転登記は、原則として買主による売買代金の支払いと同時とされ、契約書でもそれを前提とするのが通常です。
(8)設備・備品等
照明やエアコン、給湯器、門、へい、庭木などの引き渡す設備・備品について、故障していないかなどについて設備表を作成します。特に、瞬間湯沸器や給湯器、風呂釜などは、経年劣化の影響が大きく特定保守製品と指定され、状況を設備表に記載して買主に情報が伝わるよう努力しなければなりません。
(9) 抵当権などの抹消
物件に抵当権や地役権、地上権などが設定されている場合は、売主が引き渡しまでに抹消し、買主が完全な所有権を行使できる状態にする旨を明記します。
(10)公租公課などの精算
固定資産税や都市計画税など土地建物に課される税金や賃料収入などについて、売主と買主による精算方法について明記します。負担の区分は引き渡し日の前日までは売主、引き渡し日以降は買主とするのが一般的です。起算日については1月1日とする方法と4月1日とする方法があり、当事者の合意により定めます。
(11)危険負担
引き渡しの前に物件が地震や火災、台風などで損害を受けた場合、当事者のどちらが損害を負担するかを定めます。民法では買主負担を原則としていますが、不動産売買の慣行では売主負担が通常です。売買契約書では売主が物件を修復して買主に引き渡すとする特約を定めるのが一般的となっています。物件の修復が著しく困難な場合などには、売主または買主が契約を解除できるとしています。
(12)契約違反による解除
売主、買主のいずれかに契約上の重大な違反があったときは、相手方が契約を解除できる旨を明記します。履行遅滞の場合は相当の期間を定め、配達証明付き内容証明郵便で催告し、それでも履行されない場合に解除できます。
売主の契約違反で買主が解除したときは、売主は買主に手付金や中間金を返還したうえで、違約金を支払います。買主の契約違反で売主が解除したときは、売主は買主に手付金や中間金から違約金を差し引いた残額を買主に返還しますが、違約金の額のほうが大きい場合はその差額を買主に請求できます。違約金の額は契約時にあらかじめ売買代金の10~20%などと定めるのが通常です。
(13)反社会的勢力排除条項
売主と買主は反社会的勢力を排除するため、当事者が反社会的勢力に該当しないことをあらかじめ確約しておきます。
(14)ローン特約
買主が住宅ローンを利用して物件を購入する場合、金融機関から融資を受けられなかった場合に備えてローン特約を付けるのが一般的です。住宅ローンが不成立の場合に契約を白紙に戻し、売主が受け取った手付金などは買主に無利息で返還するというものです。
ローン特約を付けるときはローンを借りる予定の金融機関名や融資予定額を明記します。また、契約が解除された場合は、不動産会社は仲介手数料を請求できず、すでに受け取っているときは返還する旨も記載する必要があります。
(15)契約不適合責任
引き渡された目的物が、種類、品質、数量に関して契約の内容に適合しない時は、買主は売主に対して、目的物の収保、代替え物の引き渡し、又は、不足分の引き渡しによる履行の追完を請求することができるというものです。また、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除も可能などの内容を織り込むこともできます。
3.売買契約書のチェックポイント
一度締結してしまうと解除が難しくなるだけに、売買契約書のチェックはしっかりと行いたいものです。契約全体に関して次のようなポイントがあります。
(1) 全体的な視点
①自分の希望条件は記載されているか。
②自分にとって無理のある条件はないか。
③不明確な条件はないか。
④万一約束された内容が実現されない場合の対策、義務が規定されているか。
などです。
(2) 内容確認事項
次のような事項につき確認します。
□売買物件の表示は正しいか。
□売買代金、手付金等の額は正しいか。
□買主からの支払日はいつか。
□手付金の種類は?また金額は妥当か。
□売主は土地の実測を行うのか。また実測時の面積の増減に応じて売買代金の精算を行うのか。
□所有権の移転と引渡しの時期に無理はないか。
□引渡し前による物件の滅失・毀損時の取り扱いは明確か。
□手付解除はいつまで可能か。
□違約金の予定額は妥当か。
□契約不適合責任の内容は適切か。
□引き継ぎを行う付帯設備等は明確か。
□公租公課の精算方法と金額。
□ローン特約について、買主のローン利用に無理はないか。
まとめ
・不動産売買契約書はトラブルを避けるために必ずと言って良いほど必要なものです。
・不動産売買契約書で、宅地建物取引業法上決めておかなければ内容では、売買の対象面積と売買代金の決定方法、代金の支払い方法、手付金・手付解除、所有権の移転・引き渡し・登記、契約違反による解除などがあります。
・特に、支払いや金銭が関係してくる内容の部分は特に注