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不動産取引においても電子契約が可能に!
不動産取引においても電子契約が可能に!
宅地建物取引業法では、不動産仲介会社(宅地建物取引業者)が仲介の不動産取引を行う場合、書面の交付が義務づけられています。しかし、2021年5月12日に国会で成立したデジタル改革関連法により、この不動産取引のルールが変更され、関連して、宅地建物取引業法も一部改正されました。これまで紙のみでの書面契約で、宅地建物取引士による押印が必要だった不動産取引が変わり、オンラインで契約の締結・契約書の交付を完了できる電子契約が認められるようになりました。デジタル改革関連法の施行は2021年9月1日よりであり、また、宅地建物取引業法改正の施行も2022年5月までに行うとされています。
目次
1.電子契約について
(1) 電子契約とは
(2) 書面契約と電子契約の違い
2.電子契約に関わる法律
3.電子契約のメリット・デメリット
(1) 電子契約のメリット
(2) 電子契約のデメリット
4.不動産業における契約書類の電子化は?
(1) 電子化できるようになった契約書
(2) 宅地建物取引業法の一部改正
5.不動産業界の電子契約の流れ
(1) 基本的な流れ
(2) 書面契約と電子契約の流れの違い
(3) 電子署名の方法の具体化は今後発表に
まとめ
1.電子契約について
(1) 電子契約とは
電子契約とは、紙の契約書ではなく、電磁的記録(電子データ)によって契約書を取り交わすことを意味します。
バックオフィス業務の削減や、コロナ禍での契約手続きの非対面化を目的として、電子契約の導入が社会的に促進されています。
(2) 書面契約と電子契約の違い
従来の書面契約では、取引が合意に至った証明として紙の契約書を取り交わし、印鑑や印章で押印をおこなっています。これに対して、電子契約では、紙ではなくPDFファイルなどの電子データで契約書を作成します。
また、契約書が本人によって作成され、第三者に改ざんされていないことを証明するため、押印の代わりに「電子署名」を用います。電子署名の有効性では、電子証明書によって本人であることと、内容が改ざんされていないことを証明するシステムが必要です。
2.電子契約に関わる法律
電子契約に関わる法律は次の2つです。
・電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)
・電子帳簿保存法
電子署名法は2001年4月1日に施行され、本人による電子署名がある電子文書の有効性を認めた法律です(第3条)。電子署名法の成立により、電子契約が広く認められるようになりました。しかし、契約書によっては、紙での保存が法律で義務づけられている場合があります。
また、電子帳簿保存法では主に国税関係書類について、一定の条件を満たす場合に電子データでの保存を認めています。
3.電子契約のメリット・デメリット
電子契約のメリット・デメリットは次の通りです。
(1) 電子契約のメリット
メリットは次に考えられる点です。
①業務効率化が進む。
②コスト削減になる。
③ペーパーレス化の促進
④印紙代の削除
電子契約の導入メリットは、締結業務の簡素化と締結スピードが向上することによる業務効率化です。書面交付が必要な取引では、必要書類を印刷し製本にし、封書郵送する作業が必要であり、かつ返信を待つ時間が必要です。しかし、電子契約であれば、やり取りをすべてインターネット上で行うことが出来ます。そのため印刷、製本、封書作業、郵送が必要なくなるため、作業と時間の短縮につながります。また印紙代が不要になることも大きなメリットです。
(2) 電子契約のデメリット
デメリットは次に考えられる点です。
①電子化できない書類がある。
②高齢者などでは電子化に対応できない人がいる。
③セキュリティ、契約の際の本人確認の方法、データ保存などに不安がある。
現状では、電子化、インターネットについていけない人もいることに配慮しなければなりません。
4.不動産業における契約書類の電子化は?
現状の不動産取引では、ほとんどの契約書類に宅地建物取引士の押印義務や、書面化義務があります。
しかし、現状でも賃貸契約の更新や退去の際に取り交わす合意書は、書面化義務がありません。また、賃貸借契約書(37条書面)のなかでも、駐車場の賃貸借契約のように宅地建物取引業法の規定がないものは電子化できます。
(1) 電子化できるようになった契約書
デジタル改革関連法施行の2021年9月1日より2022年5月まで(契約書によって時期が異なる)に次の契約書を電子化できるようになりました。日程の詳細は国土交通省のホームページなどで確認願います。
①媒介契約書(宅建業法34条の2 書面)
②重要事項説明書(宅建業法35条 書面)
③賃貸借契約書(宅建業法37条 書面)
④定期借地権設定契約書(宅建業法22条 書面)
⑤定期建物賃貸借契約書(宅建業法38条 書面)
(2) 宅地建物取引業法の一部改正
宅地建物取引業法の一部改正は次のようなものです。
*宅地建物取引業法の一部改正関係
㈠ 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約を締結したとき、依頼者への書面の交付に代えて、依頼者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができることとした。(第三四条の二第一一項関係)
㈡ 宅地又は建物の売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に宅地建物取引業者の相手方等に交付する書面への宅地建物取引士の押印を不要とし、また、相手方等の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができることとした。(第三五条第五項及び第七項~第九項並びに第三七条第三項~第五項関係
5.不動産業界の電子契約の流れ
不動産取引の電子契約の基本的な流れや、書面契約との違いを確認します。注意が必要なのが、押印に変わって契約書の有効性を担保する「電子署名」の問題です。電子署名が本当に本人のものであるのかを確認できるものでなければなりません。
ただし、電子化はあくまでも取引の相手方の承諾を得ることを必要としています。電子化に対応できない相手もいることを考慮したものです。
(1) 基本的な流れ
不動産取引の電子契約には次のステップが必要です。
・重要事項説明書の電子文書によるインターネットによる説明
・重要事項説明書の電子交付
・電子契約を結ぶ。
従来通り、契約を締結する前に重要事項説明が必要です。
重要事項説明書は電子交付が可能となり、宅地建物取引士によりWeb会議システムなどで説明します。
重要事項説明が終わったら、次に電子契約を結びます。
この際、電子契約書(重要事項説明書)の有効性を担保するために、書面契約書の押印に当たる「電子署名」を用いて電子契約をおこないます。
(2) 書面契約と電子契約の流れの違い
従来の書面契約では、紙の契約書の作成や宅地建物取引士の記名押印が必要でであり、契約書に規定の収入印紙を貼付し、印紙税を納める必要がありました。
それが電子契約になると、紙の契約書の作成と宅地建物取引士の記名押印が必要ありません。電子契約書は収入印紙の貼付も免除されるため費用の削減になります。
(3) 電子署名の方法の具体化は今後発表に
電子署名は一般的には「暗号化」と「復号」にパスワードを利用することにより、本人であることを担保し、また契約書の真正を担保する仕組みです。
この場合は「電子認証局」という第三者機関があり、この電子認証局が秘密鍵・公開鍵を発行します。署名する人が秘密鍵を使って署名を暗号化し、受け取る側が公開鍵を使って復号することにより確認できるようになっています。
また、電子署名をした文書には、署名した「時刻」が記録されます。しかし、この記録された時刻は使っているパソコンやサーバー上の時刻なので、常に正しい時刻を記録しているとは限りません。そこで、正しい時刻を契約書上に記録する「タイムスタンプ」のシステムがあります。このシステムによって、その時刻に文書ができあがったこと、そして、その時刻以降に改変されていないことを確認できます。
まとめ
・デジタル改革関連法により、不動産取引においても、これまで紙のみでの書面契約で、宅地建物取引士による押印が必要だったものが変わり、電子化が認められました。
・デジタル改革関連法の施行は2021年9月1日で、関連して、宅地建物取引業法も一部改正され、施行は2022年5月までに行うとされています。
・電子化できるようになった契約書は、次のようなものです。
①媒介契約書
②重要事項説明書
③賃貸借契約書
④定期借地権設定契約書
⑤定期建物賃貸借契約書