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不整形地、間口狭小などの路線価補正
不整形地、間口狭小などの路線価補正
土地の価格の評価では路線価方式と倍率方式があります。中心となるのは路線価方式で、路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額です。路線価は、公示価格や売買の実例価額、不動産鑑定士などの専門家による鑑定評価額などをもとに決められます。しかし、土地は、間口が狭い土地や細長い土地など使いにくい場合も多くあり、価格の修正が必要です。それを路線価の補正と言います。土地の形状によりどのような補正を行うのかなど補正の方法について説明します。これにより自分でも相続地の路線価の補正価格を計算できます。
目次
1. 相続した土地の状況によって評価が変化する。
2. 不整形地補正
(1) 不整形地とは
(2) 不整形地補正とは
(3) 不整形地の評価方法
3. 間口狭小補正
4. 奥行長大補正
5. 奥行価格補正
(1) 奥行価格補正
(2) 側方路線影響加算
(3) 二方路線影響加算
まとめ
1.相続した土地の状況によって評価が変化する。
路線価方式による算定の場合、路線価は土地の形状が正方形または長方形(整形地)で、その一辺のみが道路に面している場合を想定して設定されています。しかし、現実の土地は、道路に面している間口よりも奥行が長かったり、複数の辺が道路に面していたり、間口が狭かったりと様々です。
そこで、そのような場合には、その土地の形状に応じて、奥行価格補正、側方路線影響加算、間口狭小補正などの各種の補正を行って、最終的な評価額を算出することになります。いびつな土地や間口が狭小の場合などの補正が必要なケースとして代表的ものでは、次のようなものがあります。
・形がいびつ
・間口(道路に接している部分)が狭い。
・奥行きが極端に長い。
・土地の面積がきわめて大きい。
・崖地
これらの対象の土地が面する路線の路線価に面積を掛け、形状等に応じた補正率に基づき補正率を掛けて評価額を算出します。
*評価額=路線価×補正率×面積
補正率は国税庁のホームページに掲載されている各種の補正率表から調べます。
補正が必要な分野ごとの例を見ていきます。
2.不整形地補正
(1) 不整形地とは
整形地とは、その形状が正方形や長方形等のように整った形状の土地をいいます。
不整形地とは、整形地に対して、その形状が整った形ではなく、複雑な形状、いびつな形状をした土地のことをいいます。
また、単に形状だけではなく、がけ地や傾斜地等のように高低差のある土地についても、不整形地といわれています。
さらに、道路に直角に面していない、ゆがみがある土地についても不整形地となる場合があります。
(2) 不整形地補正とは
不整形地補正とは、土地の形がいびつな場合にかかる補正です。いびつな部分の割合によって、土地の評価額が下がります。
(3) 不整形地の評価方法
不整形地の評価方法は、
・整形地とした場合の1平方メートル当たりの単価の算定
・地積区分の判定
・不整形地補正率の判定
・かげ地割合の判定
・評価額の算出
などで行います。
➀整形地とした場合の1平方メートル当たりの単価の算定
不整形地が面している道路に設定された路線価(1平方メートル当たりの単価、単位は千円)に、奥行価格補正率を乗じて、当該土地が整形地であると仮定した場合の1平方メートル当たりの単価を計算します。
*当該土地が整形地であると仮定した場合の1平方メートル当たりの単価=路線価×奥行価格補正率
この場合、奥行距離については、実際の不整形地の面積を当該不整形地が道路に面している長さ(間口距離)で割った値を上限として計算します。
②不整形地補正率の判定
当該対象の不整形地について、地区区分と面積を地積区分表に当てはめて、当該不整形地土地がどの地積区分に該当するかを判断します。
③かげ地割合の判定
対象となるいびつな土地を囲むように不整形地全体を囲む真四角の整形地(想定整形地)を想定して、その地積を計算します。
その想定整形地の中の実際の不整形な土地以外の部分(4つの直角三角形の部分)をかげ地といいます。
かげ地割合とは、想定整形地の面積に対するかげ地の面積の割合のことです。かげ地がどれくらい占めているかにより評価の減額が決まります。
かげ地割合は次の数式で求められます。
かげ地割合=(想定整形地の面積−不整形地の面積)÷想定整形地の面積
④不整形地補正率
ここまでで算定した地積区分、かげ地割合を不整形地補正率表に当てはめて、当該不整形地における不整形地補正率を選択します。
⑤不整形地の評価額の算定
上記により不整形地補正率が算定されたら、整形地とした場合の1平方メートル当たりの単価を乗じて、当該不整形地の1平方メートル当たりの単価を算定します。
そして、この単価を、当該不整形地の実際の面積に乗じて、当該不整形地の評価額を算出します。
*当該不整形地の1平方メートル当たりの単価=当該不整形地の実際の面積×不整形地補正率×整形地とした場合の1平方メートル当たりの単価
*国税庁「不整形地補正率表」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm
3.間口狭小補正
間口狭小補正とは、間口(道路と接している部分)が狭い場合にかかってくる補正で、間口が狭い土地は利用価値が下がるため評価減を行います。間口狭小補正率は、間口距離と、その宅地が所在する地区区分によって、0.80~1.00の範囲で設定されています。
普通住宅地区の間口が狭小な宅地とされる間口距離は8m未満です。
路線価に、「間口狭小補正率表」に定める補正率及びその宅地の地積を乗じて計算します。
*補正価格=路線価をもとにした土地の評価額×間口狭小補正率×地積
間口狭小となる間口距離は、地区区分により異なります。例えば普通商業・併用住宅地区は、間口が6m未満の場合に間口狭小に該当します。普通住宅地の間口4m未満の間口狭小補正率は0.90です。
*国税庁「間口狭小補正率表」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm
4.奥行長大補正
奥行長大補正とは、間口の広さに対して奥行きが極端に長い場合にかかってくる補正です。いわゆる「うなぎの寝床」のような細長い土地で、利用用途が限られるため評価額が下がります。奥行きが間口の2倍以上になると減額補正が適用されるようになります。
奥行が長大な宅地では、奥行距離を間口距離で除して得た数値、「奥行き÷間口」を計算します。この場合も下限は0.60です。
*奥行長大補正距離=奥行距離÷間口距離
高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、中小工場地区であれば3以上だと奥行長大となります。
奥行きが長大な土地の評価額は、次の式で計算します。
*奥行きが長大な土地の評価額=路線価をもとにした土地の評価額×奥行長大補正率
間口が狭く細長い土地は間口狭小補正と奥行長大補正を併用することが可能で、次の計算式で算出することができます。
*間口狭小補正と奥行長大補正の土地の評価額=路線価をもとにした土地の評価額×間口狭小補正率×奥行長大補正率
また、普通住宅地区の奥行きが長大な宅地とされる「奥行き距離÷間口距離」の数値は2以上です。普通住宅地の数値は2以上3未満の場合の奥行長大補正率は0.98です。
*国税庁「奥行長大補正率表」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm
5.奥行価格補正
(1) 奥行価格補正
長方形の土地の価格は、奥行きの距離に応じて補正を行います。評価したい土地の奥行きが、地区区分の標準に対して長い場合や短い場合には路線価が減額されます。
奥行価格の補正を行うには、国税庁の奥行価格補正率表から補正率を調べ、計算を行います。普通住宅地の奥行4m未満では補正率は0.90です。
*自用地評価額=路線価×奥行価格補正率×地積
*国税庁「奥行価格補正率表」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm
(2) 側方路線影響加算
正面と側方が路線に面する土地は、利便性が増すため評価額が上がります。このため、正面の路線価に応じた価格に、側方の路線による評価をプラスします。普通住宅地の角地の加算率は0.03です。
*国税庁「側方路線影響加算率表」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm
2つの路線のうちどちらが正面に当たるかは、奥行を使って判断します。それぞれの路線価に対して奥行価格補正を行い、価格が高くなるほうが正面となります。
(3) 二方路線影響加算
正面と側方に路線がある場合と同様に、正面と裏面に路線がある土地も評価は高くなります。2つの路線のうち、路線価が高い方が正面となります。正面が決まったら次の計算を行います。
①正面路線価×奥行価格補正率
②裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率
③(①+②)×地積
普通住宅地の二方路線影響加算率は0.02です。
*国税庁「二方路線影響加算率表」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm
*国税庁「路線価方式による宅地の評価」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4604.htm
まとめ
・土地の補正が必要なケースとしては、次のようなものがあります。
➀形がいびつ
②間口(道路に接している部分)が狭い。
③奥行きが極端に長い。
④土地の面積がきわめて大きい。
⑤崖地
・補正では、これらの対象の土地が面する路線の路線価に面積を掛け、形状等に応じた補正率に基づき補正率を掛けて評価額を算出します。
*評価額=路線価×補正率×面積