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不動産売買の際の「代理人と委任状」の注意点
不動産売買の際の「代理人と委任状」の注意点
不動産を売買する際に、高齢で要介護である場合は子供に任せる場合や、入院している場合・遠方で移動が難しい場合など、親族に頼むことがあります。これは代理人という形になります。代理人による取引の場合は委任状が必要となります。しかし、委任状の作成には注意が必要です。不動産売買の場合の、代理人と委任状の注意点について説明します。
目次
1. 不動産売買の取引きで代理人が必要なケース
(1) 高齢で認知症ではないが契約を行うのが不安な場合
(2) 取引きする不動産が遠方にある場合
(4) 多忙で売却にかかる時間を確保できない場合
2. 代理人を選ぶ場合の注意点
(1) 信頼できる人を代理人にする。
(2) 委任内容は具体的に明確に記載する。
3. 委任状とは
4. 委任状の記載内容
5. 委任状に関する注意点
(1) 委任状の内容を加えられる状態にしないこと
(2) 「一切の件」という表現は使わないこと
(3) 捨印を押さないこと。
(4) 委任した日付を記載すること
6.委任状以外で不動産売買に必要な資料
まとめ
1.不動産売買の取引きで代理人が必要なケース
不動産売買の際には、原則として売主と買主の立ち会いが必要です。しかし、状況によっては委任状を作成して代理人を立てて取引きする場合もあります。
不動産売買の際に代理人が必要な時は、次のようなケースです。
(1) 高齢で認知症ではないが契約を行うのが不安な場合
不動産売買では、売買契約や決済などの複雑な手続きも少なくありません。売買契約に進むまでには、買主から値引き交渉を求められるケースもあります。各種手続きや条件交渉に不安があり、身近に子どもがいる場合や親族がいる場合は代理人として任せる場合があります。
(2) 取引きする不動産が遠方にある場合
売却しようとしている実家などの不動産が遠方にある場合、地元に住む親族がいれば代理人として処理を頼む場合があります。
(3) 所有者が複数人いる場合
売却しようとしている不動産の所有者が複数人いる場合、委任状を作成して他の所有者に代理人を頼む場合があります。相続した不動産を兄弟姉妹など複数の相続人で共有している場合などが挙げられます。
(4) 多忙で売却にかかる時間を確保できない場合
不動産売買では売買契約のほかに、売主と買主との間での条件交渉や手続きなどに時間が必要です。さまざまな事情で不動産売買にかかる時間を確保できない場合、委任状を作成して代理人を立てることが可能です。
2.代理人を選ぶ場合の注意点
代理人を選ぶ場合の注意点としては次のような点があります。
(1) 信頼できる人を代理人にする。
不動産売買では大きな金額が取り引きされるため、代理人は信頼できる人を選ぶことが大切です。親族や、法律の専門家の弁護士や司法書士などが考えられます。ただし、親族以外では費用がかかります。
(2) 委任内容は具体的に明確に記載する。
委任する内容を具体的に明確にすることが必要です。一切を任せるなどの白紙委任はしないことが重要です。また、委任状の内容を加えられる状態にしないことが重要です。
また、代理人を立てて不動産売買を行う場合は、予め買主に伝えておきます。突然代理人が現れることで、買主に不信感を与えてしまう可能性があるからです。最近はさまざまな詐欺が多発しているため、慎重になっている人も少なくありません。
3.委任状とは
委任状とは、当事者本人の意思によって、本来ならば当事者が行うべき手続きを代理人となる第三者へ委託し、代理人に代理権があることを証明する書類のことです。
代理人とは、本人に成り代わって法律行為ができる人のことであり、代理人が行った法律行為の効果は本人におよびます。当事者による取引きと同等の効力を持ちます。
なお、委任状があっても不動産を売買できない場合があります。
具体的には、不動産を売買しようとしている当事者の正常な判断が難しく、取引きによって不利益を被る可能性がある場合です。委任状があっても不動産売買ができない当事者とは、おもに未成年や、認知症・知的障害・精神障害など家庭裁判所から審判された成年被後見人です。
このような場合は任意代理人ではなく、親権者・未成年後見人・成年後見人といった法定代理人が代理人となって取引きを行うことになります。法定代理人は当事者の意思に関係なく法律に則って任命され、権限も細かく規定されています。
4.委任状の記載内容
不動産売買契約の委任状には、取引きに関するさまざまな項目を明確に記す必要があります。委任状には法的に決まったひな型はありませんが、ポイントとしては次のような点があります。
➀委任者、代理人名、住所
②売買物件の表示項目(土地)(建物)
③売却の条件
・売却価格
・手付金額
・引渡し予定日
・金銭の取扱い
・所有権移転登記申請手続き
・委任状の有効期限
その他
5.委任状に関する注意点
(1) 委任状の内容を加えられる状態にしないこと
委任状の文末には「以上」を記載して第三者による改ざんを防ぐことが大切です。
委任状には代理人に委託する範囲や内容を明確にする必要があります。
(2) 「一切の件」という表現は使わないこと
「一切の件」という曖昧な表現は使わないことが重要です。代理人の権限が無限に広がってしまいます。白紙委任状とは、代理人に委託する範囲や内容の一部を記載せずに作成する委任状です。白紙委任状にすると、トラブルに発展するケースが多くあります。
(3) 捨印を押さないこと。
委任状には委任者と代理人の捺印が必要ですが、捨印を押さないようにします。捨印には、書類の余白部分に予め押印しておくことで訂正に備える目的があります。捨印を押してしまうと、内容を書き加えられたりする可能性があるので注意が必要です。ただし、内容を書き加えられる心配のない事務的処理に限定した内容の場合は捨印をしても構わない場合もあります。
(4) 委任した日付を記載すること
委任状には、委任した日付を記載することもポイントです。日付によって代理権がいつから存在していたのかを明らかにすることができ、不動産の売買契約の有効性を証明しやすくなります。
6.委任状以外で不動産売買に必要な資料
不動産売買の際に代理人を立てる場合、委任状のほかにいくつかの資料の準備が必要です。
➀委任者
・印鑑証明書、実印、住民票
②代理人
・印鑑証明書、実印、住民票、本人確認書類
まとめ