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不動産に関わる物権と債権
不動産に関わる物権と債権
不動産は私たちの生活や仕事にとって欠くことのできない貴重な財産であり、私たちは不動産をさまざまな形で利用することによって関わっています。また、不動産の売買では権利関係が重要です。権利関係により価格も異なり、流通も異なった扱いになります。また、権利関係により土地利用の制限が生まれたりします。不動産に対する権利にはさまざまな種類のものがありますが、権利の種類では物権と債権に分類されます。物権は、すべての人に対して権利を主張できる絶対的な財産支配権であるのに対して、債権は、特定の人にある要求をする権利であって第三者には権利を主張できない相対的な請求権です。不動産に関する物権と債権及び権利関係について説明します。
目次
1. 物権について
(1) 物権とは
(2) 物権の種類
2. 債権について
(1) 債権とは
(2) 債権の種類
3. 物権と債権の違い
(1) 直接支配性の有無
(2) 排他性の有無
(3) 絶対性の有無
4. 土地に対する権利と建物に対する権利
(1) 土地に対する権利
(2) 建物に対する権利
まとめ
1.物権について
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物権とは
物権とは、物を直接かつ排他的に支配する権利です。つまり、他の人を介することなく不動産を直接的に支配するため(直接的支配権)、同時に同じ不動産の上に同じ内容の物権は併存することができず排除されます(排他的支配権)。
したがって、物権は第三者にその権利とその内容を公示する必要があり、不動産を登記により公示する登記制度が生まれました。
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物権の種類
不動産にかかる物権には、占有権、所有権、地上権、永小作権、地役権、入会権、留置権、先取特権、質権、抵当権があります。その典型は所有権です。
なお、占有権とは、物に対する事実上の支配により認められる権利で、地上権とは、他人の土地を借りて使用できる権利、地役権とは、他人の土地を自己の土地のために供し得る権利、抵当権とは、優先的に弁済を受ける権利です。
絶対的排他性を確保するため、物権には次のような特性があります。
➀物件の債権に対する優先的効力
物権は内容が抵触する債権に優先する効力を持ちます。
ただし、債権の中の借地借家の賃借権などの例外があります。
②物権的請求権または物上請求権
物権には物権の内容の円満な実現が妨げられ、または妨げられる恐れがある場合に、妨害を除去・予防するため必要な行為を請求する権利があります。物権的請求権または物上請求権と呼ばれます。具体的には、返還・妨害排除・妨害予防の請求権などがあります。
③一物一権主義
物権の排他性の帰結として、同一物に対して同一内容の物権は一つしか成立しない、一物一権主義があります。土地を筆に分けて各筆をそれぞれに一物とするなどです。
④公示の原則
物権はすべての人に対する権利であることから、物権の変動は公示しないと第三者に対抗できないとされます。これを物件の公示の原則と言います。
対抗要件は、不動産に関する権利変動については「登記」、動産に関する物権譲渡については「引渡し」です。
⑤物権法定主義
物権は、法律で定められた以外のものを新たに創設することはできないとされています。これを物権法定主義と言います。
ただし、慣習法上の物権も判例により認められており、温泉権や流水利用権はこれに当たります。
2.債権について
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債権とは
債権とは、特定の人に対して一定の財産上の行為を要求できる権利です。
つまり、債権とは人に対する権利であり、人と人との契約は、契約自由の原則に基づき、さまざまな内容の契約を締結することができますが、その権利を主張できるのはその契約の相手方に限定され、第三者に主張しても認められません。
なお、この場合に要求する人を債権者、要求される人を債務者といいます。
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債権の種類
不動産にかかわる債権には、賃借権、使用貸借権、引渡請求権などがあります。
3.物権と債権の違い
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直接支配性の有無
物権とは、人を介在することなく、物を直接に支配する権利ですから、物への支配が侵害されたときは、これを排除する請求権によって、その支配を回復することができるものです。
これに対して、債権とは、特定の人にある行為をさせる権利であるに過ぎませんから、その目的物については、債権者は、債権による人を介した間接的な力しか及ぼすことができません。
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排他性の有無
物権には、「同一の物の上に同一内容の権利は一つしか成立しない」という「一物一権主義」という原理が導入されています。例えば、ある物についての所有権は1つしか存在せず、その他の者の所有権を認めません。これを物権には排他性があると言います。
一方、債権は、人に対する権利ですので、同一の内容の権利が複数存在することは何ら問題ありません。
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絶対性の有無
物権は物に対する支配権のため、誰に対しても、絶対的にその存在を主張することができるのに対して、債権はある特定の人に対する権利に過ぎません。
4.土地に対する権利と建物に対する権利
不動産に関しては、土地に対する権利と建物に対する権利は以下の3つに大別することができます。
・その不動産を全面的に支配する権利である所有権
・他人の不動産の利用を目的とする権利である借地権や借家権など
・不動産を債権の担保とする権利としての抵当権など
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土地に対する権利
土地に対する権利のうち、重要なものは所有権と借地権です。
➀所有権
所有権は、法令の制限内において、所有者が自由にその所有物を使用、収益、処分することができる権利です。
土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及びます。
所有権には、1つの物を単独で所有している場合と、複数の人が共同で所有している場合(共有)があります。
②借地権
借地権は、借地借家法・旧借地法上、建物所有を目的として土地に地上権を設定する権利または土地を賃借する権利です。
地上権は物権であり、土地賃借権は債権です。
借地権についても、単独で土地を借りている場合と、複数の人が共同で土地を借りている場合(借地権の準共有)があります。
使用貸借権は、土地使用の対価を払わずに土地を利用する権利をいい、借地借家法、旧借地法で規定する借地権ではなく、借地借家法の保護はありません。
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建物に対する権利
建物に対する権利のうち、重要なものは所有権と借家権です。
①所有権
建物の所有権には、建物一棟の所有権と区分所有権があります。
- 建物一棟の所有権
一戸建住宅の所有権などのように、建物一棟を所有している一般的なケースです。
- 区分所有権
分譲マンションなどのように、一棟の建物の各部分が構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所等の用途に供することができる場合は、その各部分を所有権の対象とすることができます。これを区分所有権といいます。
②借家権(建物賃借権)
建物賃借権は、借家権として借地借家法の適用を受けます。
まとめ