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不動産取引で実印が必要な場合と理由とは

不動産取引で実印が必要な場合と理由とは

 

不動産の売買を行う場合は、通常は売買契約書を作成します。この不動産売買契約書の作成において売主及び買主の署名捺印が必要になりますが、捺印に関しては、実印で行うのが通常ですが実印でないとダメなのでしょうか?実印で行う意味は何でしょうか?また、実印でないといけない場合はどのような場合でしょうか?認印でも構わない場合とはどのような場合でしょうか?これらについて説明していきます。

目次

1. 実印と認印

(1) そもそも実印とは?

(2) 実印と認印との違い

(3) 実印と印鑑証明

2. 不動産売買契約書に実印で捺印する意味

(1) 原理原則は実印でなくても契約は有効

(2) 実印が必要となる理由

3. 不動産取引で現実的に実印が必要な場合とは

(1) 売買契約書

(2) 住宅ローン

(3) 不動産登記

まとめ

 

1.実印と認印

 

(1) そもそも実印とは?

 

実印とは、自分の住所地を管轄する役所に印鑑を届出る(登録)ことによって、届け出た者の印鑑であることを役所が証明した印鑑のことをいいます。

 

(2) 実印と認印との違い

 

実印とは、住民票上の居住地がある市区町村で、本人確認を行って一人につきひとつ登録した印鑑のことで、認印とは実印以外の印鑑のことです。

 

(3) 実印と印鑑証明

 

実印は市区町村が発行する印鑑証明書を合わせることにより強力な本人証明能力を持つため、重要な手続きの際には実印と印鑑証明書が用いられます。

印鑑証明書は印影が実印であることを照合するために必要です。

 

印鑑証明書と実印をセットにすることで、本当に本人が自分の意思で署名捺印をしたかどうかを担保にします。

また、印鑑証明書の期限を3カ月以内といったように期限を切ることがありますが、これは署名捺印をした時点での提出先による本人の意思確認のためです。印鑑証明書自体に有効期限はありません。

 

2.不動産売買契約書に実印で捺印する意味

 

(1) 原理原則は実印でなくても契約は有効

 

契約とは、一方の当事者が契約をしたいという申し出を行い、相手方が承諾の意思表示を行うことで成立します。そもそも契約書が必要という定めもありません。申し出と承諾で契約は成立します。

*民法第555条(売買)

「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」

 

民法の原理原則から言えば、売買契約書はなくても契約は成立しますが、なんの証拠もなければ、後で一方の当事者が意思表示をしていないと主張する危険性があるので、現実には書面(契約書)を作成し、お互いが意思表示を行った証拠を残します。

証拠としても、本来は実印でも認印でも構わないもので、実印でも認印でも契約の有効性には基本的に変わりがありません。

 

(2) 実印が必要となる理由

 

契約の有効性という観点から考えれば、契約書に押すのは実印でも認印でも、どちらでも問題ありませんが現実的には実印が必要となる理由は次のような点です。

 

①本人確認により取引の安全性を高める。

 

売却する不動産の売主が本当の持ち主であるという本人確認と、売却する意思があることを買主が確認でき、安心して取引できるようにするためです。

 

②売買の意思確認

 

売買契約書の押印は売主には現実には実印が求められますが、お金を出して購入する立場の買主は、本来は認印でも構いません。しかし、契約の信頼性を高めて安易な解除を防ぐためにも、買主も実印を用いることが一般的に行われています。

 

③代理人に売買契約立会いを依頼する場合

 

売買契約の立会いを代理人に依頼する場合は、売主・買主本人の意思確認のために実印と印鑑証明書が必要になります。

 

3.不動産取引で現実的に実印が必要な場合とは

 

不動産取引において現実的に実印が求められる場合には次のようなものがあります。

 

(1) 売買契約書

 

不動産の売買契約書には実印を押すことが求められるのが一般的です。法的には売買契約書は認印でも有効ですが、以下のような理由から実印を求められます。

 

①売主が真の不動産の所有者であることを確認するため(取引の安全性を高める目的)
②所有権移転のときに法務局が書類の照合をしやすくするため(登記手続き目的)
③契約の重要性を高めて安易な解除を防ぐため(売買当事者への心理的な影響を高める目的)

 

(2) 住宅ローン

 

不動産売買の買主が住宅ローンなどの融資を利用する場合は審査や申し込みのときに金融機関から売買契約書の原本確認、写しの提出を、住宅ローンの契約(金銭消費貸借契約)のときに実印の押印と印鑑証明書の提出を求められることが一般的です。金融機関が本人確認をするためです。

 

(3) 不動産登記

 

不動産の登記の種類によって実印が必要なものとそうでないものがあります。

 

①不動産登記で実印が必要なもの

 

a. 所有権移転登記(売買の売主側に対して)

 

所有権移転登記は「この不動産が自分のものである」と公示するための大切な手続きです。不動産の売買の売主側が本当の所有者であることを確認する目的で売主側の実印、印鑑証明書が必要です。自分の不動産ではないものを勝手に売って買主から代金を騙し取るといった詐欺事件を防止することを目的に売主側に実印が要求されています。

 

また、贈与の場合の移転登記についても譲る側には実印が必要です。

 

b. 抵当権設定登記(債務者、お金を借りる側)

 

抵当権設定は住宅ローンなどでお金を借りたときに家や土地を担保として差し出すときに必要な手続きです。お金を借りる側(債務者)が担保に供する不動産の所有者であることを確認するために実印が要求されます。お金を貸す側(債権者)には要求されていません。

 

抵当権抹消登記にはローンが完済したことを証明するための書類等が要求されているかわりに、実印は要求されていません。

 

c. 土地合筆登記(委任状のため)

 

土地合筆は複数の土地を合併するときに必要な登記です。登記そのものには実印が要求されているわけではありませんが、司法書士等に委任して行う際に委任状に必要になります。

 

②不動産登記で実印が不要なもの

 

不動産登記手続きで実印が不要な場合とは必要な場合に比べて権利者が不利益を受けない場合がほとんどです。実印が不要な場合は次のようなものです。

 

a. 所有権保存登記

 

所有権保存登記は建物を新築したときに行うもので、これにより第三者に対して建物の所有権を主張することができます。

 

b. 土地分筆登記

 

土地の一部を売却するような場合に一つの土地を複数に分けて登記する必要があります。

 

c. 建物滅失登記

 

建物が消失したり、取り壊した際に固定資産税がかからないようにしたり、土地の売却をするために必要です。

 

まとめ

 

・実印と認印との違いは、実印とは、住民票上の居住地がある市区町村で、本人確認を行って一人につきひとつ登録した印鑑のことで、認印とは実印以外の印鑑のことです。
・実印は市区町村が発行する印鑑証明書を合わせることにより強力な本人証明能力を持つため、重要な手続きの際には実印と印鑑証明書が用いられます。印鑑証明書は印影が実印であることを照合するために必要です。
・契約の有効性という観点から考えれば、契約書に押すのは実印でも認印でも、どちらでも問題ありませんが現実的には実印が必要となる理由は①本人確認により取引の安全性を高める。②売買の意思確認などのためです。
・不動産取引で現実的に実印が必要な場合とは、①売買契約書 ②住宅ローン ③不動産登記です。
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