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中古住宅売買契約書の文例
中古住宅売買契約書の文例
不動産における中古住宅売買契約書で記載する内容は、売買対象となる物件の内容(所在地・面積・構造等)、取引の条件(代金・支払時期、手段、時期・解除条件等)、引渡条件、解約・解除、取引当事者の名前・住所などです。特約がある場合にはその内容も記します。
また、民法改正により、従来からの「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」と変わった点や、危険負担の明確化、契約解除の規定の明確化などへの対応も必要です。中古住宅売買契約書の文例を紹介します。
中古住宅売買契約書(例)
売主〇〇(以下「甲」という)と買主〇〇(以下「乙」という)は、甲の所有する不動産について、次の通り、契約(以下「本契約」という)を締結する。
第1条(目的)
甲は、甲の所有する下記不動産について、第○条の代金で乙に売り渡し、乙は、〇〇の目的でこれを買い受ける。
<物件の表示>
①本件土地
所在地:
地 番:
地 目:
地 積:
②本件建物
所在地:
家屋番号:
種 類:
床面積:
・目的物の特定が必要
契約の対象となる物件の特定が必要です。目的物の特定には、主に、登記簿(全部事項証明書)の表題部に記載されている事項を確認して転記します。
第2条(売買対象面積)
本契約での面積は公簿面積による。
・公簿売買か実測売買かを確認します。
公簿売買は、登記簿の内容に基づいて価格を設定し、後日、実際の面積に差があったことが判明しても清算をしないという契約内容であることを意味します。
(実測による売買代金の場合)
甲は、本契約締結後、直ちに本件土地を実測する。測量費用は、甲の負担とする。
2 本件土地は、実測面積に基づく売買とする。
第3条(売買代金)
本件不動産の売買代金の総額は、金○○万円(消費税含む)とする。内訳は、以下のとおりとする。
(内訳)
本件土地 金○○万円(消費税含む。)
本件建物 金○○万円(消費税含む。)
第4条(手付金等)
乙は甲に対し、本契約締結と同時に手付金として金○万円を支払うものとする。
2 前項の手付金は、売買残代金の支払いの際、利息を付けずに、売買残代金の一部に充当するものとする。
・手付金は、売買契約を締結する証拠金であり、契約の解約のときに放棄すると契約を白紙解約することができます。手付金の支払いは契約の署名捺印と同時・同日が原則です。実務上は預け金という形で前倒しをすることはありますが、少なくとも、後ろ倒しにすることはありません。
第5条(売買代金の支払時期と支払方法)
乙は、甲に対して、次の各号のとおり第○条の売買代金を支払う。
①契約日に、手付金として金○○万円支払う。
②残代金のうち、金○○万円を、○年○月○日までに支払う。
③残代金○○万円は分割して○回払いとし、○年○月から○年○月まで、毎月○日までに金○万円を支払う。
2 前項2号・3号の支払いは、甲が指定する金融機関の指定口座に振り込む方法により行う。振込手数料は乙の負担とする。
第6条(登記手続き)
所有権移転登記は、甲は〇年〇月〇日までに完了させるものとして、甲及び乙はその日までに本件不動産の所有権移転登記申請に必要な書類を準備するものとする。
2 所有権移転登記手続きに関する費用は全て乙の負担とする。
本件不動産の所有権は、本件不動産の引渡し時に、甲から乙に移転する。
・所有権の移転に応じる義務者は売主であり、便宜を受け受けるのは買主であるため、事例のような処理を行うことが一般的です。ただし住所変更登記、抵当権抹消登記など、売主固有の事情による登記変更は、売主の負担となります。
第7条(引渡し)
本件建物の引渡しは、〇年〇月〇日に〇〇(場所)において甲乙双方の立ち合いの下、第○条の支払いと引き換えに行う。
2 甲は、乙に対して、○年○月○日までに、第○条の金○万円の乙による支払いと引換えに、本件不動産を引き渡す。
・所有権の移転と引渡しは必ずしも同じ日でなければならないとは限りません。別の日の指定を条文に盛り込むことで、引渡しだけ後日にずらすことも可能です(引渡し猶予)。
第8条(危険負担、引渡し前の滅失・毀損)
本物件の引渡し前に、天災地変その他売主又は買主のいずれの責めにも帰すことのできない事由によって、本物件が滅失し売主がこれを引渡すことができなくなったときは、買主は売買代金の支払いを拒むことができ、売主又は買主はこの契約を解除することができる。
2 本物件の引渡し前に、前項の事由によって本物件が損傷したときは、売主は、本物件を修補して買主に引渡すものとする。この場合、売主の誠実な修復行為によって引渡しが標記の期日を超えても、買主は、売主に対し、その引渡し延期について異議を述べることはできない。
・引渡し前の滅失・毀損の条項の趣旨は、引渡し前に、売主(債務者)と買主(債権者)のいずれの責任ではない場合、たとえば天災地変で、売買対象物が滅失、毀損したとき、その損害(危険)を誰が負担するかという「危険負担」に関する条項です。民法改正により買主保護の視点が明確になりました。
第9条(公租公課の負担)
本件不動産に関する固定資産税等の公租公課その他の賦課金について、名義人の如何に関わらず、第○条に規定する所有権移転の日までは乙の負担とし、その翌日以後は甲の負担とする。
第10条(契約の催告解除)
甲及び乙は、相手方がその債務の全部又は一部について本契約に従った履行をしない場合において、〇日間以上の期間を定めてその履行の催告を行っても期間内に本契約に従った履行がないときは、当該債務の不履行が自らの責に帰すべき事由によるものであるか否かに関わらず、本契約を解除することができる。但し、不履行の態様が契約の目的等に照らし、軽微である場合には解除できない。
第11条(契約の無催告解除)
甲及び乙は、相手方が次の各号の一に該当した場合には、自ら責に帰すべき事由によるものであるか否かに関わらず、前条の催告を行うことなく、直ちに本契約の全部又は一部を解除することができる。
①債務の全部の履行が不能であるとき
②債務の一部の履行が不能である場合において、残存する部分のみでは本契約の目的が達成できないとき
第12条(契約不適合責任)
引き渡された本件建物が、種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない(以下、「契約不適合」という。)場合、乙は甲に対して、本件建物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
ただし、甲は、乙に不相当な負担を課するものでないときは、乙が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 買主は、本件商品の契約不適合が是正不能と判断した場合には、追完請求を行うことなく、自らの選択により、当該契約不適合の程度に応じて売買代金の減額を請求することができる。
3 本条の定めは、損害賠償の請求及び解除権の行使を妨げない。
4 買主が契約不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、当該契約不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時に当該契約不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りではない。
5 商法526条は本契約に適用されない。
・民法の契約不適合責任のルールは、当事者間の合意で排除することもできます。そこで、売主としては、特約で目的物を現状有姿のままで引渡し、契約不適合責任を負わないと定めることも一定の範囲で可能です。
・契約不適合責任を免責する特約の例文
契約不適合責任を特約で免責したい場合、その旨を契約書において明確に規定しておかなければなりません。免責特約の文言の文例は以下です。
「売主は買主に対し、本契約に関して一切の契約不適合責任を負わないものとし、買主は売主に対して、本目的物の種類、品質または数量が本契約に適合しないことを理由として、履行の追完、売買代金の減額、損害賠償請求または本契約の解除をすることができない。」
第13条(手付解除)
売主、買主は、その相手方が本契約の履行に着手するまでは、互いに書面により通知して、買主は、売主に対し、手付金を放棄して、売主は、買主に対し、手付金当受領済の金員および手付金と同額の金員を買主に提供することにより、本契約を解除できる。
・手付金を放棄することで解除できる規定です。個人間の場合は、この解除期間について具体的な取り決めすることも可能です。
「履行の着手」とは具体的には「取引の相手のためにアクションを起こした」時点です。売主の履行の着手の例では「売主がオプション工事に着手した」「売主が抵当権抹消の申請を行った」などがあります。買主の履行の着手の例では「ローン本審査に着手した」などが適用される可能性があります。
第14条(融資利用の特約)
買主は、売買代金に関して、融資金を利用するときは、本契約締結後すみやかにその融資の申込み手続きをする。
2 表記融資承認取得期日までに、前項の融資の全部または一部の金額につき承認が得られないとき、または否認されたとき、買主は、売主に対し、表記契約解除期日までであれば、本契約を解除することができる。
3 前項により本契約が解除されたとき、売主は、買主に対し、受領済みの金員を無利息にてすみやかに返還する。
・ローン解約などとも言いますが、万一ローンが通らない場合においての、買主を保護する規定です。契約は解除され、手付金は返金されます。
第15条(設備の引渡し)
売主は、買主に対して、別紙「付帯設備表」の各設備を引き渡す。
・契約書本紙ではスペースの関係があるため「付帯設備表」を添付します。設備表の添付は契約不適合責任の内容を明らかにする一環となりえます。
第16条(反社会的勢力の排除)
売主及び買主は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
①自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成(以
下総称して「反社会的勢力」という)ではないこと。
②自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう)が反社会的勢力ではないこと。
③反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
④本物件の引渡し及び売買代金の全額の支払いのいずれもが終了するまでの間に、自ら又は第三者を利用して、この契約に関して次の行為をしないこと。
ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
第17条(管轄裁判所に関する合意)
売主、買主は、本契約に関する管轄裁判所を、本物件所在地を管轄する裁判所とする。
・東京の物件なら東京の裁判所で、大阪の物件なら大阪の裁判所を管轄裁判所とする契約です。
第18条(規定外事項の協議義務)
本契約書に定めのない事項については、民法、その他関係法規及び不動産取引の慣行に従い、売主、買主互いに誠意をもって協議する。
以上本契約の締結の証として、本契約書2通を作成し、双方記名捺印の上各自1通を保有する。
○○年○○月○○日
甲(売主) 住所 ○○○○
氏名 ○○○○印
乙(買主) 住所 ○○○○
氏名 ○○○○印
まとめ