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「連帯保証人」の負担が軽くなった!2020年民法改正による変更
「連帯保証人」の負担が軽くなった!2020年民法改正による変更
知人や親せきから、「自分が返すから名前だけ貸してほしい」、「すぐ返す予定だから大丈夫」などと言われ、連帯保証人になってしまう場合があります。しかし、お金を借りた人が事業を立ち上げたがうまくいかず倒産した時や、会社がコロナで経営が悪化しお金を借りた人が失業しお金が返せなくなった時など、連帯保証人が借金を肩代わりせざるを得ない場合があります。連帯保証人は本人がお金を返済できない時、債権者から即請求が来ても仕方ない関係で、その負担は大変大きいものです。しかし、その責任の範囲が明確でなくすべてに及び、また金額の上限の定めもありませんでした。その負担が重すぎることから改善が望まれていたため、その一部が民法で変わりました。連帯保証人に関する民法の改正内容について紹介します。
目次
1. 連帯保証人とは何か
(1) 連帯保証人とは
(2) 旧民法の連帯保証人の責任
2. 民法改正のポイント
(1) 連帯保証人の責任の範囲の明確化
(2) 保証すべき限度額の上限設定
(3) 「主債務者から連帯保証人への情報提供義務」、及び、「債権者から連帯保証人への情報提供義務」の新設
(4) 極度額の定めのない個人の根保証契約の無効化
(5) 特別の事情による保証の終了
(6) 公証人による保証意思確認手続の新設
まとめ
1.連帯保証人とは何か
(1) 連帯保証人とは
①保証契約とは
保証契約とは、借金の返済や代金の支払などの債務を負う主債務者が、その債務の支払をできない場合に、保証人が主債務者に代わって支払をする義務を負うことを約束する契約をいいます。
保証人とは、借金の返済や代金の支払などの債務を負う主債務者が支払をできない場合に、主債務者の代わりに債務を負わなければならない人です。
債務者が支払わない場合には、保証人は自分の不動産が差押えされたり、給与や預貯金の差押えを受けたりするなど、裁判所の関与の下で支払を強制されることになります。
②連帯保証契約とは
連帯保証契約とは、保証契約の一種ですが、主債務者に財産があるかどうかにかかわらず、債務者への請求とは別に、債権者が保証人に対して支払を求め、保証人の財産の差押えをすることができるものです。
不動産においては、賃貸借契約の連帯保証人として、家賃滞納が発生して賃借人がすぐに支払いに応じない場合に、連帯保証人に支払うよう請求するなどの場合があります。また、ローン契約でもローンを借りている人が規定の期間滞納している時に、連帯保証人に請求するなどの場合があります。
債務者が支払わない場合には、保証人の場合と同様に連帯保証人は自分の不動産が差押えされたり、給与や預貯金の差押えを受けたりするなど、裁判所の関与の下で支払を強制されることになります。
(2) 旧民法の連帯保証人の責任
民法改正前は、「賃貸借契約から生じる一切の債務について」連帯保証するなどという内容の契約が主流となっており、連帯保証人の責任の範囲や保証すべき限度額などについて具体的に明記されてはいませんでした。
そのため、契約によって生じる損害賠償が、家賃や返済額の滞納のみではなく、借主の故意や過失で物品や施設を損傷させた場合の修繕費や、借主が物件内で死亡した場合の原状回復費用や損害賠償義務など、多額の請求となる可能性がありました。
2.民法改正のポイント
(1) 連帯保証人の責任の範囲の明確化
改正民法では、連帯保証人の責任の範囲が定められ、保証すべき限度額についても事前に定めることが義務付けられました。
連帯保証人の責任の範囲は「債務の元本」、「債務に関する利息」、「違約金」、「損害賠償」、「その他に発生する債務」に定められ、この範囲に収まらない部分まで責任を負う必要はありません。
(2) 保証すべき限度額の上限設定
改正民法では、保証すべき限度額の上限とした「極度額」を定めることが義務付けられました。
連帯保証人の責任の範囲内で保証すべき金額を算出し、連帯保証人の契約時点で賃貸借契約書などに極度額を明記しなければなりません。
極度額の明記については〇○万円や月返済額の〇カ月分など、具体的な金額が分かるようにする必要があり、極度額の明記が無い場合は連帯契約そのものが無効となります。
(3) 「主債務者から連帯保証人への情報提供義務」、及び、「債権者から連帯保証人への情報提供義務」の新設
民法改正によって「情報の提供義務」の新設があり、主債務者から連帯保証人への情報提供義務、及び、債権者から連帯保証人への情報提供義務の2種類があります。
①主債務者から連帯保証人への情報提供義務
主債務者からの情報提供義務として、主債務者は保証人に対し、財産や収支の状況、その他の債務や履行状況などの情報を提供する義務が課せられます。
もし、主債務者がこの情報提供義務を怠たり、連帯保証人が主債務者の財政状況等を誤解した場合などは、連帯保証人は後日契約を取り消しが可能となります。
これは、主債務者に返済能力が無いことを知らずに連帯保証人となってしまうことを防ぐための処置となります。
②債権者から連帯保証人への情報提供義務
債権者からの情報提供義務として、連帯保証人から債権者への返済状況などの問い合わせがあった場合は回答義務が課せられます。
さらに、債権者は保証人に対し、主債務者が期限の利益を喪失した(滞納した賃料の返済期限までに返済ができなかった)場合、債権者は保証人に対して、期限の利益の喪失を知った時から2カ月以内にその旨を通知しなければなりません。
これは、連帯保証人が遅延損害金の額が大きく膨らむ前に対処することを可能とするものです。
(4) 極度額の定めのない個人の根保証契約の無効化
「根保証契約」とは、一定の範囲に属する不特定の債務について保証する契約をいいます。
例えば、保証人となる時点では、どのような債務が発生するのかがはっきりしない場合や、どれだけの金額の債務を保証するのかが分からない場合に適用します。
根保証契約を締結して保証人となる際には、主債務の金額が分からないため、将来保証人が想定外の債務を負うことになりかねません。
そのため、極度額の定めのない個人の根保証契約は無効となります。
保証人に対して支払を求めることができないことになるので、債権者にとっても注意が必要です。
(5) 特別の事情による保証の終了
個人が保証人になる根保証契約については、保証人が破産したときや、主債務者又は保証人
が亡くなった時などは、その後に発生する主債務は保証の対象外となります。
(6) 公証人による保証意思確認手続の新設
個人が事業用の融資の保証人になろうとする場合には、公証人による保証意思の確認を経なければならないこととされています。この意思確認の手続を経ずに保証契約を締結しても、その契約は無効となります。
この手続は,代理人に依頼することができません。本人自身が公証人から意思確認を受けることになります。公証人から、保証人になろうとする人が保証意思を有しているのかを確認されます。
保証人は公証人から、保証をしようとしている主債務の具体的な内容を認識しているか、保証をすることで自らが代わりに支払などをしなければならなくなるという大きなリスクを負担するものであることを理解しているか、主債務者の財産・収支の状況等について主債務者からどのような情報の提供を受けたか、などについて確認を受けます。
その後、所要の手続を経て、公正証書(保証意思宣明公正証書)が作成されます。
*法務省「保証に関する民法のルールが大きく変わります」
https://www.moj.go.jp/content/001254262.pdf
まとめ
・連帯保証契約とは、主債務者に財産があるかどうかにかかわらず、債務者への請求とは別に、債権者が保証人に対して支払を求めたり、保証人の財産の差押えをすることができるものです。
・民法改正前は、「賃貸借契約から生じる一切の債務について」連帯保証するなどという内容の契約が主流となっており、連帯保証人の責任の範囲や保証すべき限度額などについて具体的に明記されてはいませんでした。
・民法改正のポイントは次のような点です。
①連帯保証人の責任の範囲の明確化
②保証すべき限度額の上限設定
③「主債務者から連帯保証人への情報提供義務」、及び、「債権者から連帯保証人への情報提供義務」の新設
④極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約の無効化
⑤特別の事情による保証の終了
⑥公証人による保証意思確認手続の新設