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2020年民法改正!契約が守られない時の「債務不履行責任」とは PART1
2020年民法改正!契約が守られない時の「債務不履行責任」とは PART1
有効に成立した契約は、契約当事者双方が守る義務を負います。契約相手が契約を守らない
場合には、法的責任を問われます。これを「債務不履行責任」といいます。債務不履行責任については、2020年4月1日施行の民法でかなり大きな改正がありました。改正点は、従来の解釈論を条文に反映させたものと、実質的な改正とがあります。契約が守られない時の債務不履行責任とはどのようなものか、また、債務不履行があった場合の対応策について民法の改正点を中心に説明します。
目次
1. 債務不履行のタイプ
(1) 履行遅滞
(2) 不完全履行
(3) 履行不能
2. 債務不履行における民法の基本的な改正点
(1) 履行遅滞における規定の明確化
(2) 受領遅滞における規定の明確化
(3) 「瑕疵担保責任」から「債務不適合責任」に
(4) 契約の履行についての追完請求権
(5) 代金減額請求権
3. 民法改正を受けて、債務不履行の場合に債権者が取ることのできる手段
(1) 裁判による履行の強制
(2) 契約解除
(3) 損害賠償
まとめ
1.債務不履行のタイプ
債務不履行は、履行遅滞、不完全履行、履行不能の3種類のタイプに分類できます。(改正法第412条~第413条)
(1) 履行遅滞
履行遅滞とは、契約で定めた履行期限が経過しても履行されないことです。
契約で商品の引渡期日を決めたのに期日を過ぎても商品が引き渡されない、契約で金銭の支払期日を決めたのに支払期日が過ぎても支払われないなどがこのケースです。
(2) 不完全履行
不完全履行とは、履行はされたものの契約で定めたとおりの履行内容ではないことです。
売買契約に基づいて商品の引渡しがされたものの契約で定めた数量に不足があるとか、引き渡された商品が約束されたものと違って傷のあるものだったなどがこのケースです。
(3) 履行不能
履行不能とは、履行すること自体が不可能になったことです。
一点物の商品の売買契約を締結した後に履行前に商品が滅失してしまったといった場合です。例えば、中古車の売買契約締結後に、目的物の中古車が焼失してしまったなどです。
2.債務不履行における民法の基本的な改正点
(1) 履行遅滞における規定の明確化
民法では、履行遅滞について、確定期限がある場合、不確定期限の場合、期限の定めがない
場合の3つの場合について規定を設けていますが、改正法では、規定の明確化などで次のようになりました。
➀不確定期限について規定を明確化し、「期限が到来した後に債権者から履行の請求を受けたとき」もしくは「債務者が履行期限が来たことを知ったとき」から、履行遅滞となると改めました(改正法第412条2項)。
②確定期限の場合には、「確定期限が到来したとき」、「期限の定めがないときは債権者から請求されたとき」から遅滞の責めを負うと明確化されました(改正法第412条)。
期限の定めは、定められた期限までは履行しなくても遅滞の責めは負わないということで、債務者の利益になります。
③履行不能については、改正前には定義規定がありませんでしたが、改正法で次のように明記されました。(改正法第412条の2)
まず、1項で、「……債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、その債務の履行を請求することができない」と定めました。
さらに2項で、「契約に基づく債務の履行がその契約の成立時に不能であったことは、第415条の規定によりその履行の不履行によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない」と定めました。
契約締結時に、すでに履行が不能である内容の契約を締結した場合、債務者に帰責事由があれば、債権者は債務不履行に基づく損害賠償請求ができることが明確化されました。
(2) 受領遅滞における規定の明確化
受領遅滞とは、債務者が履行の提供をしているのに債権者が受領を拒んでいることです。
改正民法では、受領遅滞により債務者の履行のための費用が増加した場合には、増加分は債権者の負担となることを明記しました(改正法第413条2項)。
消費者契約では、売買契約で、消費者が販売店からの商品の引渡しを拒否し「商品をもらっていないから契約を解除する」と主張するケースがあります。しかし、契約で購入することにした以上、消費者には商品の引渡しを受ける義務があり、受け取りを拒絶すれば受領遅滞の責任を問われます。
(3) 「瑕疵担保責任」から「債務不適合責任」に
契約を締結した時には、完全な商品についての売買契約であったのに、引き渡された現物に
は契約締結時にはなかったか、あるいは債権者が知らなかった欠陥や傷がある場合のことを改正前民法第570条では「隠れた瑕疵」とされていました。引き渡された商品に隠れた瑕疵がある場合には、債務者は瑕疵担保責任を負います。具体的には、契約の解除か損害賠償請求ができます。
瑕疵担保責任は、債務不履行責任と違って無過失責任です。債務者に責めに帰すべき事由がない場合でも、瑕疵担保責任が発生します。
改正民法では、改正前民法第570条の規定を削除し、「瑕疵担保責任」を「債務不適合責任」に改めました。
売買契約に基づいて「引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは」とされました。「隠れた瑕疵」ではなく「契約の内容に適合しない」と改めました。
(PART2に続く)