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空き家放置は危険!
空き家放置のリスクとはー「特定空家」に指定される危険性も!
日本では総世帯数を上回る住宅がありながら日々新たに住宅が建設されています。建物のライフサイクルが短く住宅は使い捨て商品なのでしょうか?賃貸住宅でも建物が老朽化すれば人は入らず賃貸住宅経営も深刻です。個人の住宅でも税制の関係もあり空き家は放置されています。しかし、放置は危険です。どのような危険があるのかを確認し、空き家を放置している原因を分析し、空き家の現状を打破する方向性を検討します。
1.空き家放置の危険性とリスク
(1) 地域的、社会的な危険性から空き家所有者に非難が!
空き家放置は防犯上、防火上、ゴミの捨て場所化、美観などの問題により空き家所有者への批判が強まっています。空き家所有者の責任の追及です。
所有者が空き家と離れている場合が多く、物件のある地元の影響について認識が甘く、どれだけ批判があるか分かっていない場合が多くあります。
具体的な問題を整理すると、
{1} 防犯上の問題―不審者の出入り、不良などのたむろ場所化
{2} 防火上の問題―放火、もらい火などによる火災
{3}防災上の問題―台風などで屋根瓦が飛んできて隣家にぶつかる、木が折れて倒れてきた。
壁が倒壊して通行人にけがをさせる。
{4}衛生上の問題―ゴミ捨て場になる。野良猫が住み着く。
{5}美観上の問題―汚く地域の美観が損なわれる。隣地の土地の資産価値が減少する。隣地の物件が売れない。
これらの問題に対して周辺住民からの苦情が出てくれば行政による指導・勧告が入り、場合により特定空家(以下、行政用語の場合は「空家」と表記されているためそれに従い、他の部分では日常の表記「空き家」と表記します)と判断されると固定資産税、都市計画税が高くなる可能性があります。
(2) 特定空家とは
{1} どんな空き家が「特定空家」の対象になるのか
2015年に施行された「空家等対策特別措置法」で特定空家等となる状態について下記のような点を挙げています。
a. 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
建物の老朽化による破損や汚れ、雨漏りによる腐敗、門や塀など倒壊の危険性がある状態や不審者の侵入や防犯上恐れのある状態です。
b. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
汚物の異臭、ゴミの放置、粗大ごみの捨て場所化、野良猫などの繁殖、雑草の放置による蚊の発生などの恐れのある状態です。
c. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
立木の繁殖、樹木の枝の隣地への侵入、建物や塀への落書き、建物の傷みのひどさなど既存の景観を損なっている状態です。
d. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
枯葉などの近隣への散乱、野良猫などの鳴き声や糞尿の臭気、不審者の侵入、放火の危険性、台風や嵐の時に瓦や看板・木枝が風に飛ばされる危険性などがあります。
国土交通省
「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針 (ガイドライン)
https://www.mlit.go.jp/common/001090531.pdf
{2} 特定空家の指定
行政の調査→特定空き家に指定→行政の指導、助言→勧告(住宅用地特例からの除外)
→命令(命令違反50万円以下の罰金)→行政代執行
・行政代執行とは
行政代執行とは、所有者に代わり、行政が適正管理に向けた取り組みを行うことです。行政が、倒壊しそうな家屋の解体やゴミ屋敷の撤去、道路に越境している木の伐採などを行うことを可能とします。
行政代執行の解体費用は空き家所有者に請求されます。また、行政代執行で請求される費用は通常よりも高い可能性があります。
また、行政代執行に要した費用の支払いがされない場合、税金と同様の回収が行われ、延滞した場合は延滞税がかかります。
{3} 特定空家に係る住宅用地特例の優遇措置の除外
特定空家に指定された後、所有者が自治体から除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとる勧告を受けると、土地にかかる固定資産税、都市計画税の住宅用地特例の優遇措置が適用されません。空家等対策特別措置法施行前は、空き家であっても200平方メートルまでの敷地部分に対しては、固定資産税を6分の1に軽減するという規定が適用されていましたが、これが一切なくなるため固定資産税が6倍になってしまいます。
住宅用地特例の優遇措置は次のようになっています。
a. 小規模住宅用地(住宅1戸につき200平方メートルまで)
〇固定資産税 課税標準×1/6
〇都市計画税 課税標準×1/3
b. 一般住宅用地(住宅1戸につき200平方メートルを超えた部分)
〇固定資産税 課税標準×1/3
〇都市計画税 課税標準×2/3
④特定空家の指定解除
特定空家に指定される要因となった不適切な箇所を改善すれば、指定から解除されます。
*国土交通省
「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)
https://www.mlit.go.jp/common/001090531.pdf
(3) 空き家所有者個人のリスク
空き家を所有していると所有者個人のリスクでは、修繕・管理などの維持管理費用がかかること、人が住んでいないことで建物の劣化が早まること、老朽化で資産価値が下がることなどがあります。
特に、維持管理費用については次のような分野があります。
{1} 固定資産税
固定資産税とは、住宅の所在する市区町村が所有者に課す税金で、市区町村が定めた不動産の固定資産税評価額に一定の税率を掛けて算出します。固定資産税の税率は自治体により異なる場合がありますが一般的には1.4%です。
目安としては、年間数万円~数十万円程度が必要となります。
{2} 都市計画税
都市計画税とは、都市計画法による市街化区域に所在する土地・建物を課税対象とする税金です。市街化区域とは、自治体が定める都市計画で指定される地域で市街が既に形成されている地域、あるいは将来計画的に市街化を図る地域です。都市計画税の税率は自治体により異なる場合がありますが、一般的には0.3%です。
目安としては年間数万円~数十万円/年程度が必要となります。
{3} 火災保険
火災保険の費用は保険の保障内容や契約期間はもちろんですが、その建物の構造や立地、築年数などで大きく異なります。
目安としては、年間数万円~数十万円程度の保険料が必要になります。
{4} 光熱費
清掃などを行う場合に電気、水道が必要な場合があります。電気・水道の契約をそのままにしておく場合、それぞれ基本使用料が発生します。
目安としては、電気代は月1,000円程度、水道代は月1,500円程度、合わせて年間2~4万円程度が必要となります。
{5} 営繕費用
建物が老朽化すると湿気によるカビ、雨漏り、瓦のズレや浮き、軒裏の建材の腐朽、壁材の破損、ベランダの支柱の錆、ブロックフェンスや塀のグラつきなどが起こります。
住まなくても傷みが激しければ修理が必要になってきます。
工事費は内容により多様ですが、数万円から数百万円の費用負担が生じます。
{6} 庭木剪定
戸建て住宅の場合は多くの場合庭木があり、毎年剪定が必要になる場合が多くあります。
枝葉が伸び隣地に伸びれば近隣トラブルになります。
庭木の剪定は、少なくとも年1回は行わなくてはなりません。
剪定費は、目安として数万から数十万円程度は必要になります。
{7} 雑草取り
夏場は特に激しいですが、冬以外に年を通して雑草が伸びます。年間複数回の雑草取りが必要です。
便利屋や清掃関係の業者に依頼する場合が多くあります。広さ回数によりますが年間数万円~10万円程度かかります。
{8} 不法投棄された粗大ごみを処分する場合
敷地内に粗大ごみが不法投棄されてしまった場合には、不法投棄した犯人が見つからない限りはその処分料を所有者が負担する必要があります。離れて住んでいる場合、粗大ゴミが捨てられていること自体を知らず近隣住民から行政へ通報されてしまいます。
{9} 管理会社に委託する場合
毎月の管理費がかかります。
これらを合計すればかなりの年間費用が必要です。
2.空き家をなぜそのままにしておくのか?
上記のような空き家放置の危険性がありながら、所有者の方はなぜそのままにしておくのでしょうか?どのようなケースがあるか見てみましょう。
(1) 家に愛着があり手放せない場合
実家など自分が育った思い出があり、住んではいないがそのままにしておきたい場合です。家の先祖からのお墓が近くにあり、墓守の立場もあり転居できないなどの場合です。
しかし、最近ではお墓の引越しも考える人も増えてきており、また墓守も難しくなってきている時代です。考え直すことも必要な時代ではないでしょうか。
(2) 面倒なので先送りしている場合
先述したリスクを検討し、先送りは何のプラスにもならないことを理解すべきでしょう。
(3) 共同相続して相続人の意見が異なる場合
親の不動産の相続で、兄弟で共同相続した場合、兄弟間の意見が異なり、処分も活用もできない場合などです。
子供の代まで争いや意見の相違を続けるのはストレスであり、親族の誰かに仲介を頼むことや税理士などに相談し処分などを検討すべきでしょう。
(4) 売りたくても売れない土地の場合
相続で地方の実家を取得した場合が代表的です。自分自身が実家の地方に戻る可能性はなく、売るにしても価値が低く買い手も見つかりにくい場合です。
空き家バンクへの登録や、介護施設や福祉施設など公益性の高い使用方法がないかそれぞれの専門団体などに問い合わせる方法があります。
地方でなく都市近郊でも売れない、売りにくい土地はあります。利便性に問題がある土地などです。また、不整形地、周辺に嫌悪施設(ごみ処理場、公害関係工場、火葬場など)がある場合などです。
これらは専門家に聞けば解決の道もある場合があり、地域の不動産会社や建設会社などに問い合わせるのが有効です。
(5) 適法性に問題のある土地、建物の場合
建築基準法などの法律に抵触する問題のある場合があります。
特に接道基準の問題があります。
現行の建築基準法では建物の敷地は4m幅の道路に2m以上接していなければなりませんが、1950年の建築基準法以前の建物では基準に満たないものも少なくありません。これらは再建築不可となります。また、更地にしても売れません。
旗竿地(はたざおち)と呼ばれるものもあります。
旗竿地とは、敷地全体の形状を旗と旗竿になぞらえ土地のことをさし、「路地状敷地」とも呼ばれます。一般的に「旗竿地」は、接道の間口が狭い通路部分(敷地延長部分・路地状部分)の奥に、有効宅地部分(建物が建てられるスペース)があり、通路部分は宅地ですが、建物は建てられません。なお、自治体によって「旗竿地」は、非常用進入口や消防法の関係等で3階建てが建てられないなどの建築規制が定められています。
これらの土地は地域により行政の空き家問題の検討が行われており、木造住宅密集地域などでは行政の緩和策や支援策が行われている場合もあり、地方自治体の状況を調べる中で方向性が見いだせる場合があります。
3.自分なりの空き家問題の解決方向を見出す。
空き家の解決方法には、売却(建物ごとの売却か更地化しての売却か)、賃貸活用、土地の有効活用、自分自身の再活用など解決方向を見出すことが必要です。問題を先送りにせず方向性を見出したいものです。
1の放置の危険性を整理し判断する必要があります。
また、処分できない問題については専門会社に相談し方向性のアドバイスを受けるのが早道でしょう。
まとめ
・空き家放置の危険性とリスク
空き家放置は防犯上、防火上、ゴミの捨て場所化、美観などの問題により空き家所有者への批判が強まり、空き家所有者の責任の追及があります。それに対して、所有者が空き家と離れているところに住んでいる場合が多く、物件のある地元の影響について認識が甘く、どれだけ批判があるか分かっていない場合が多くあります。
- ・「空家等対策特別措置法」により「特定空家」として指定される危険性があります。
- ・「特定空家」として指定されると住宅用地特例の優遇措置から除外され、固定資産税が6倍になる場合もあります。
- ・一般の空き家でも維持管理に関わる費用では、固定資産税、都市計画税、火災保険、光熱費、営繕費用、管理委託費などがかかり長期化するとかなりの金額になるリスクがあります。