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空き家売却では「更地」と「古家付き土地」とどちらが良いか
空き家売却では「更地」と「古家付き土地」どちらが良いか?
空き家の売却では立地と建物の価値、法律の規制(接道基準など)、建物の老朽度などが要素をしめますが、建物が老朽化している場合が多く、老朽化した建物は悪印象を持たれやすいため更地化を検討する場合もあります。一般的には更地化したほうが売りやすいからです。しかし、更地化には税金上のリスクがあり、迷うものです。「更地」と「古家付き土地」どちらが良いのかを検討します。
1.更地のほうが良い場合と、古家付き土地の方が良い場合
土地としての個別性の判断はありますが、一定の市場性のある土地として判断される場合について検討します。
(1) 更地のほうが良い場合
更地のほうが良い場合では、建物の築年数が古すぎる場合と建物の耐震性が低い場合があります。
{1} 建物の築年数が古すぎる場合
建物の築年数が経ちすぎている場合、劣化が激しい場合は建物の価値が低いため、解体して更地にすることが適当です。
*建物の法定耐用年数
建物にはその構造や用途によって、法定耐用年数が定められています。本来の意味は税務署の固定資産税が築年数により減額される目安です。建物の劣化を示すものではありません。しかし、実際には法定耐用年数によって建物が古いかどうかを判断するのに使われている場合が通常化され、法定耐用年数を過ぎると形式的には建物の価値はゼロ評価となっています。
住宅用建物の耐用年数は次の通りです。
・木造・合成樹脂造…22年
・木骨モルタル造…20年
・鉄骨鉄筋コンクリート造…47年
・鉄筋コンクリート造…47年
・れんが造・石造・ブロック造…38年
・金属造…19~34年(骨格材の肉厚により異なる)
{2} 建物の耐震性が低い場合
昭和56年(1981年)6月1日以前は、旧耐震基準による建築確認が行われていました。
現行の新耐震基準に従って建築された建物に比べて、旧耐震基準の建築確認を受けた建物は、耐震性の面では弱い場合があり評価が低くなります。
(2) 古家付きの土地の方が良い場合
建物を解体せず、残しておいたほうがいい場合は、「古民家」として価値がある建物が残っている場合、建物の再建築が法的に難しい土地や地域の場合、「解体費用」が多くかかる場合などです。
{1} 「古民家」として価値がある建物が残っている場合
築年数が50年を超える「古民家」の場合は建物に価値が出ることもあるため、そのまま売却することを検討します。古民家として価値のある物件は取り壊すのではなく、古民家好きの人や店舗に検討する人をターゲットに売却する方法があります。
{2} 建物の再建築が法的に難しい土地や地域の場合
建物の再建築が法的に難しい土地の場合、更地にせず建物を残したままの方がいいでしょう。いったん建物を取り壊してしまうと新たな建物を建てることはできません。
そのままでの利用方法、利用価値を検討します。
{3} 「解体費用」が多くかかる場合
古い建物や耐震性などに不安がある建物を解体して、更地にしてから売却すると決めた場合でも、解体費用が予想売却価格と比較して高額になる場合は慎重に検討します。
解体業者に依頼すると、解体費用がどのくらいかかるのか、見積もりを算出してもらい検討します。
(3) 「古家付きの土地」として売却しながら更地化も含めて検討することも。
更地化するリスクがあるために、建物を取り壊さないまま、状況により対応する方法です。
第1に、「建物中古物件」「土地」の両方で売却に出してみる方法です。
土地の引き合いに対しては、契約としては更地化して引き渡すことを約束します。その場合は、土地の価格に解体費用も含んで設定します。
第2に、建物の中古物件ニーズがある顧客に対しては、リフォーム費用のために値引き幅を検討しておくことです。
リフォーム価格は一般的に行われる部分の概算で把握しておきます。
2.更地化売却のメリットとデメリット
(1) 更地化売却のメリット
更地にしてから売却するメリットは、買い手がつきやすくなること、土地の埋設物などについて事前に確認することができることなどです。
{1} 買い手がつきやすくなること。
古い建物があると悪印象は避けられません。そちらが気になって買い手は土地についての認識が薄れます。
また、更地であれば買い手は自由にプランを立てることができイメージがわきます。
また、建物を解体する手間がかからず費用も掛からないほうが、買い手にとって便利です。
{2} 土地の埋設物などについて事前に確認することができること。
更地にすることで土地の埋設物について事前に確認することができ、後々のトラブルを防ぐことができます。なぜ埋設物などを事前に確認するのかというと、不動産を売却する売主は、買主に対して土地・建物の瑕疵担保責任を負うことにあります。売主が埋設物の撤去などの費用を負う必要があります。
(2) 更地化売却のデメリット
更地にしてから売却するデメリットは、古い建物の解体費用がかかること、固定資産税が高くなることなどです。
{1} 古い建物の解体費用がかかること。
建物の構造、面積などにより価格に相違はありますが、相場の費用がかかることは避けられません。
{2} 固定資産税が高くなること。
更地化にともない、住宅用地特例の優遇措置が外れることになり、固定資産税では、小規模住宅用地(住宅1戸につき200平方メートルまで)では6倍に、一般住宅用地(住宅1戸につき200平方メートルを超えた部分)では3倍になります。
売れるまでに時間がかかれば税金の負担額が増えます。
(3) 古家付き売却のメリット
更地にせず、古家付きで売却するメリットは、買い手が建物をそのまま、もしくは、リフォームして使う場合は建物評価額が格安やゼロ評価の場合割安で建物を取得できること、買い手が急いで物件を探している場合すぐ利用できること、売り手にとっては解体費用がかからないことなどです。
{1} 買い手が建物をそのまま、もしくは、リフォームして使う場合は建物評価額が格安やゼロ評価の場合割安で建物を取得できること。
中古住宅でもリフォームすれば十分住める場合でかつ格安であれば、買い手にとってメリットがあります。
{2} 買い手が急いで物件を探している場合すぐ利用できること。
買い手が家であれば建てる時間がない場合や長期間待てない場合はすぐ使用できる既存の中古物件は便利です。
{3} 売り手にとっては解体費用がかからないこと。
建物が中古物件として売れれば当然解体する必要がなくなります。
(4) 古家付き売却のデメリット
更地にせず、建物付きで売却するデメリットは、更地に比べて買い手がつきにくいこと、土地目的の買い手の場合古家の解体費用がかかるため土地の値引き要求が強くなりがちなこと、建物の瑕疵に関するトラブルが起きる可能性があることなどです。
{1} 更地に比べて買い手がつきにくいこと。
古い建物があると悪印象は避けられません。第1印象が悪いと買い手の購買意欲が薄れます。土地が良くても建物の悪印象に引っ張られて土地の印象が薄くなります。
建物が建てられている土地は、建物の形状や種類によって、使い道が限定されてしまうことがあります。
{2} 土地目的の買い手の場合、古家の解体費用がかかるため土地の値引き要求が強くなりがちなこと。
また、土地の購入が目的の買い手も現れますが、解体費用がかかるため、その費用を考え土地自体の価格の値引き要求をしてきて、売り手にとっては売却価格が低くなりがちです。
{3} 建物の瑕疵に関するトラブルが起きる可能性があること。
不動産売却をするとき、売主は買主に対して建物の瑕疵担保責任も負わなければなりません。中古物件だと傷みもあり各種のトラブルが発生しがちです。
3.その他の空き家売却にかかる費用は?
空き家の処分にかかる費用は、こちらは建物付きのまま売却する場合と解体して更地として売却する場合で共通して必要となる費用は下記のようになります。
(1) 印紙税
不動産の売買契約書は「課税文書」にあたり、契約金額に応じた印紙税の納付が必要です。
収入印紙を売買契約書に貼付する形で納付します。
【契約金額ごとの印紙税額】
- 10万円超、50万円以下 :400円
- 50万円超、100万円以下:1,000円
- 100万円超、500万円以下:2,000円
- 500万円超、1,000万円以下:1万円
- 1,000万円超、5,000万円以下:2万円
(2) 登録免許税
建物や土地などの登記内容を変更する際に必要な税金です。
売買による所有権移転登記の場合の税額は「固定資産評価額×2%」となります。
(3) 譲渡所得税
不動産を売却して利益が出た場合は、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。
売却金額全てが利益(譲渡所得)になるわけではなく、売却にかかった費用やその不動産を取得するためにかかった費用を差し引いて残った金額が利益とみなされます。
【課税譲渡所得金額 = 譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)】
一定の条件を満たす場合は、譲渡所得が3,000万円以内だと譲渡所得税が課税されないという特例もあります(更地にした場合も含まれます)。
空き家の売却で3,000万円以上の利益が出ることは稀ですので、特例を上手に活用して売却する良いでしょう。
(4) 仲介手数料
不動産会社の仲介を利用して空き家を売却したら、不動産会社へ仲介手数料の支払いが必要です。
仲介手数料額は契約金額に応じて上限が決められています。
200万円以下の場合:売却価格の5%以内
200~400万円以下の場合:売却価格の4%以内
400万円以上の場合:売却価格の3%以内+6万円
(全て税別)
まとめ
- ・更地のほうが良い場合
建物の築年数が古すぎる場合と建物の耐震性が低い場合があります。 - ・古家付きの土地の方が良い場合
建物を解体せず、残しておいたほうがいい場合は、「古民家」として価値がある建物が残っている場合、建物の再建築が法的に難しい土地や地域の場合、「解体費用」が多くかかる場合などです。 - ・更地化売却のメリット
更地にしてから売却するメリットは、買い手がつきやすくなること、土地の埋設物などについて事前に確認することができることなどです。 - ・更地化売却のデメリット
更地にしてから売却するデメリットは、古い建物の解体費用がかかること、固定資産税が高くなることなどです。 - ・古家付き売却のメリット
更地にせず、古家付きで売却するメリットは、買い手が建物をそのまま、もしくは、リフォームして使う場合は建物評価額が格安やゼロ評価の場合割安で建物を取得できること、買い手が急いで物件を探している場合すぐ利用できること、売り手にとっては解体費用がかからないことなどです。 - ・古家付き売却のデメリット
更地にせず、建物付きで売却するデメリットは、更地に比べて買い手がつきにくいこと、土地目的の買い手の場合古家の解体費用がかかるため土地の値引き要求が強くなりがちなこと、建物の瑕疵に関するトラブルが起きる可能性があることなどです。