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千葉県の空き地空き家問題と人口減少
千葉県においても全国の動向においても、空き地空き家問題と人口減少は深刻化しています。しかし、一方コロナ渦でテレワークが進み、職場から離れた地域の住宅でも仕事の可能性が広がっている面も出てきました。特に首都圏では空き地空き家の活性化の糸口になるかもしれません。
1.千葉県の空き地空き家問題について
(1) 千葉県の空き家状況について
平成25年に国が実施した「住宅・土地統計調査」によると、千葉県の空き家数は約36万7千戸で、住宅総数に対する割合は12.7%となっています。
また特に問題となりうる、別荘などの二次的住宅や賃貸・売却用の住宅を除く、「その他の住宅」の空き家数は約13万4千戸で、空き家の種類別住宅数に対する割合では、36.6%、住宅総数に対する割合では、4.6%となっています。
なお賃貸・売却用の住宅の空き家は約19万4千戸で、空き家の種類別住宅数に対する割合では、52.9%です。流動しやすい空き家物件としてはここにも注目する必要があるでしょう。
全国的な傾向と同様、千葉県においても空き家数は年々増加の傾向にあります。
なお、空き地については厳密なデータがありません。
*千葉県「空き家対策」
https://www.pref.chiba.lg.jp/juutaku/seisaku/akiya/akiyataisaku.html
(2) 空き家に対して地元の人はどう思っているのか?
千葉県内の空き家に対する意識についての小規模ですが調査結果があります(平成27年度第3回インターネットアンケート調査)。調査協力員1,521人、調査時期平成27年11~12月、調査方法インターネットアンケート。
調査結果では、
問1.あなたの住まいの周辺の「空き家」(売れ残っている住宅は含まない)の最近の動向について、どのように感じていますか。
{結果}
住まい周辺の空き家の動向についてたずねたところ、『増えており、気になっている』が50.5%と最も多く、次いで「周辺に「空き家」は見当たらない」が23.1%、「増えていない」が10.2%、「増えているが、気にならない」が6.5%でした。
4-2「空き家」が増えた場合の問題
{結果}
空き家の増加により、どのような問題が起こると考えられるかたずねたところ、「適切な維持管理が行われず、防災、衛生、景観など地域の環境の悪化につながる」が38.6%と最も多く、次いで「死角や管理されない空間が増えて、防犯上の問題が高まる」が38.4%、「土地や住宅が活用されないため、地域コミュニティの活力低下につながる」が20.3%でした。
また、「その他」の答えの中には、「動物の棲家になり、近所迷惑となる」、「地域の資産価値が低下する」、「放火された場合の隣家への延焼の危険性がある」などの意見がありました。
問3.地域の空き家を今後どうしていくべきだと思いますか。(いくつでも)(回答者数:186人)
{結果}
地域の空き家を今後どうしていくべきかたずねたところ、「空き家を壊し、菜園や広場、駐車場として活用する」が25.9%と最も多く、次いで「他の用途(交流施設や福祉施設、宿泊施設等)として活用する」が24.7%、「売買や賃貸化などにより、住宅としてそのまま活用する」が23.3%でした。
また、『その他』の答えの中には、「解体するべき」、「行政での管理等による有効活用」、「低価格化による若年世代の利用促進」、「ふるさと納税にて、シルバー人材センターでの管理代行」などの意見がありました。
その他、空き家の問題点として、
・所有者が適切に管理していても、空き家の土地や住居に、無断に、人が侵入し、損害をあたえる場合もあるので、所有者のモラルも大事であるが、周辺住民のモラルも大事なのではないのか。
・空き家が増えることにより、周辺の活気が無くなることや、火災の発生、観光資源としての景観への影響、不法投棄、治安上の問題が生じる。
などの意見がありました。
アンケートからは住民が不安に思っている現状が反映して、早急な対策の必要性がうかがえます。
*千葉県 空き家に対する意識調査について(平成27年度第3回インターネットアンケート調査結果)
https://www.pref.chiba.lg.jp/juutaku/seisaku/akiya-anketo.html#q1
(2) 千葉県内の市町村の空き家問題への取り組み
①空き家・空き地バンク
「空き家・空き地バンク」とは、自治体が現地の空き家・空き地の情報を、利活用希望者に紹介する制度で、地域の活性化にもつながるものです。
自治体によっては、空き家・空き地を利活用する消費者の個人や企業等に対して、独自の補助金、税制優遇等の施策を行っている場合もあります
空き家・空き地バンク登録以外の空き物件の活用も可能で、地域の不動産会社の登録物件の情報収集も有効です。また、業界団体の空き家ガイドブックも発行されています。
*⼀般社団法⼈千葉県宅地建物取引業協会 空き家ガイドブック~空き家をお持ちの方へ~
https://www.chiba-takken.or.jp/vacant_house_guidebook/vacant_house_guidebook.pdf
②市町村の主な移住支援制度
空き家バンク以外にも各種の移住に関するリフォ-ム補助金などの支援制度を実施しています。県内を、南房総ゾーン、香取・東総ゾーン、圏央道ゾーン、空港ゾーン、東葛・湾岸ゾーンの5ゾーンに分け、移住定住に関する市町村の窓口及び主な移住支援制度を紹介しています。
*千葉県(千葉県総合企画部政策企画課) 移住定住に関する市町村の窓口及び主な移住支援制度
*千葉県 市町村が行う住宅にかかる各種支援制度について
https://www.pref.chiba.lg.jp/juutaku/seisaku/jyosei.html
2.千葉県の人口減少問題について
・千葉県、2045年の人口12%減
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」とそれに基づくデータにつき、日本経済新聞オンラインは次のように伝えています。
2045年の千葉県の人口は546万3,000人と2015年に比べて12%減少すると予測されます。県内54市町村のうち、50市町村で2015年時点の人口を下回る見通しです。人口に占める高齢者の割合も高まるなか、介護や医療など社会的コストの増大を吸収できる経済・社会基盤の確立が課題となります。
県人口は2020年代から本格的な減少局面に入り、2030年には598万6,000人と600万人の大台を割り込む見通しです。全国的な人口減少の波が県内にも押し寄せるのは避けられません。
高齢化も加速し、人口に占める65歳以上の割合は2015年に25.9%だったのが、2045年には36.4%に跳ね上がると予測されます。75歳以上の割合も11.4%から20.7%に上昇する見通しです。
なお、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」については、平成27(2015)年の国勢調査を基に将来人口を推計したものです。なお国勢調査は5年ごとに行われます。
*国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」
http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson18/t-page.asp
*日本経済新聞オンライン(2018年3月31日)
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO28812750Q8A330C1L71000?s=6
3.早急な対策が望まれる千葉県の空き地空き家問題と人口減少対策
(1) コロナ渦でのテレワークの普及で、空き地空き家の活性化の可能性も
コロナ渦でのテレワークの普及で、東京通勤圏外と思われてきた地域にも住宅としての関心が増しています。千葉県内においても近隣地域は従来からも通勤圏でしたが、房総半島地域では自然環境などの魅力もあり、茨城県に隣接した地域まで東京広域住宅圏としての可能性が拡大し、空き地空き家物件でも市場性が増しているのではないでしょうか。
(2) 望まれる行政の住民誘致支援制度の強化
①「移住・定住」にかかる各種住宅支援制度
各市町村が実施している「移住・定住」にかかる各種住宅支援制度の一部を紹介します。なお、制度が変更する場合もあり、最新の情報や、事業の詳細、必要な要件等については、各市町村の担当部署にお問い合わせください。また、これ以外にも各市町村で支援制度を行っています。
・旭市
市内に定住する意思をもって住宅を取得し転入した方に対し、世帯構成の要件等により最大150万円の定住促進奨励金を交付する。企画政策課政策推進班 0479-62-5382
・匝瑳(そうさ)市
匝瑳市に定住する意思を持って市外から転入し、新築又は中古住宅を取得した人に奨励金を交付する。企画課 0479-73-0081
・南房総市
新築住宅を取得した子育て世帯(15歳以下の子を持つ世帯)の世帯員又は若年者(39歳以下の者)に対し、最大200万円の奨励金を交付する。建設課 0470-33-1101
・長南町
住宅を取得した45歳以下の夫婦世帯に対して住宅取得奨励金(上限200万円)を交付。企画政策課 0475-46-2113
・佐倉市
売買契約成立した空き家バンク登録物件の所有者及び購入者に対し契約に係る諸経費を対象として、5万円を助成する。住宅課 043-484-6168
・佐倉市
佐倉市内に自ら居住するための中古住宅を新たに購入し、購入後概ね1年以内に行うリフォーム工事に係る経費の2分の1以内で上限額50万円を助成する。住宅課 043-484-6168
・館山市
子育て世帯の定住化を促進するため、市内の民間賃貸住宅を利用する転入子育て世帯に、月額の家賃に2分の1を乗じた額(月2万円上限)の家賃助成金を交付する。助成対象期間は、助成開始月から12カ月を限度とする。経済観光部 雇用商工課 0470-22-3136
*千葉県「市町村が行う住宅にかかる支援制度(移住・定住)について」
https://www.pref.chiba.lg.jp/juutaku/seisaku/jyosei-ijyu.html
②「空き家」にかかる各種住宅支援制度
各市町村が実施している「空き家」にかかる各種住宅支援制度の一部を紹介します。
・佐倉市
佐倉市内に自ら居住するための中古住宅を新たに購入し、購入後概ね1年以内に行うリフォーム工事に係る経費の2分の1以内で上限額50万円を助成する。
・佐倉市
空き家バンクに登録されている賃貸物件の所有者又は賃貸物件の利用者が行うリフォームに係る経費の2分の1以内で限度額30万円を助成する。住宅課 043-484-6168
・栄町
栄町空き家バンク登録物件の修繕、改築、増築、模様替えなどで工事金額が20万円以上の工事に対する補助。まちづくり課 0476-33-7719
・八街市
八街市空き家バンクに登録された空き家を対象として、市内業者の施工により行うリフォーム工事について補助する。※空き家バンクに登録している空き家所有者もしくは、居住目的で当該物件の所有者と契約(売買もしくは賃貸借)を締結したものに限る。企画政策課 043-443-1114
・大多喜町
定住促進及び空き家の有効活用を図るため、大多喜町空き家バンク制度に登録された物件で家屋の改修工事を行う者に対し補助する。企画課 0470-82-2112
・御宿町
高齢者の安全確保や子育て世帯の住環境の向上及び定住促進を図るため、高齢者世帯、子育て世帯、転入者及び空き家住宅のリフォーム工事を行った場合予算の範囲内において補助金を交付する。建設環境課 0470-68-6694
*千葉県「市町村が行う住宅にかかる支援制度(空き家)について」
https://www.pref.chiba.lg.jp/juutaku/seisaku/jyosei-akiya.html
千葉県の空き地空き家問題と人口減少対策については、前述したテレワークの普及もありますが、若い子育て世代にとって魅力ある移住支援制度の強化が必要なのではないでしょうか。リフォーム資金・引越し資金の支援、移住そのものへの支度金、子育て支援、仕事の支援などもあるでしょう。また、移住しやすいように移住に関するアドバイザー制度を取っているところも参考になります。
4.千葉県の空き地空き家問題と人口減少-まとめ
・平成25年に国が実施した住宅・土地統計調査によると、千葉県の空き家数は約36万7千戸で、住宅総数に対する割合は12.7%となっています。
・全国的な傾向と同様、千葉県においても空き家数は年々増加の傾向にあります。
・空き家に対して地元の人はどう思っているのかについては、住まい周辺の空き家の動向については「増えており、気になっている」が半分程度いて、空き家の増加により、どのような問題が起こると考えられるかについては、「切な維持管理が行われず、防災、衛生、景観など地域の環境の悪化につながる」、「死角や管理されない空間が増えて、防犯上の問題が高まる」などの不安があります。
・千葉県、2045年の人口12%減との予測
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」とそれに基づくデータにつき、2045年の千葉県の人口は546万3,000人と2015年に比べて12%減少すると予測されます。
・千葉県高齢化も加速、2045年には65歳以上の割合は36.4%に
高齢化も加速し、人口に占める65歳以上の割合は2015年に25.9%だったのが、2045年には36.4%に跳ね上がると予測されます。75歳以上の割合も11.4%から20.7%に上昇する見通しです。
・千葉県内の市町村の空き家問題への取り組み
「空き家・空き地バンク」があり、自治体が現地の空き家・空き地の情報を、利活用希望者に紹介する制度で、地域の活性化にもつながるものです。
また、市町村ごとにも移住支援制度がある場合があります。
・コロナ渦でのテレワークの普及で、空き地空き家の活性化の可能性も
コロナ渦でのテレワークの普及で、東京通勤圏外と思われてきた地域にも住宅としての関心が増しています。
・望まれる行政の住民誘致支援制度の強化
若い子育て世代にとって魅力ある移住支援制度の強化が必要なのではないでしょうか。リフォーム資金・引越し資金の支援、移住そのものへの支度金、子育て支援、仕事の支援、移住に関するアドバイザー制度などの充実、支援金額の増加などでしょう。