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空き家問題の現状と発生原因
空き家問題の現状と発生原因
空き家数の増加による問題が発生しているのは周知のとおりです。政府や各自治体が、空き家問題に取り組んではいますが根本的な解決の方策はまだ見えません。空き家の現状はどうなっているのか、そもそも問題の発生原因は何か、解決を阻んでいる課題は何かなどについて整理します。今後ますます深刻化していく傾向にある空き家問題、空き家の発生原因、空き家を利活用できない理由について説明します。
目次
1.空き家問題とは
(1) 空き家とは
(2) 日本全国の総住宅数の約13.6%に当たる家屋が空き家
(3) 空き家の種類
(4) 空き家が問題化する理由
2.空き家の主な発生原因とは
(1) 高齢者の転居による空き家の発生
(2) 所有者の死亡による空き家の発生
3.空き家を利活用・処分できない理由
(1) 空き家を利活用・処分しようとしてもできない理由
(2) 空き家を利活用・処分しない理由
まとめ
1.空き家問題とは
(1) 空き家とは
空き家とは、居住やその他の使用がなされていないことが常態化している家屋とその敷地と定義されています。(空家等対策の推進に関する特別措置法2条より)
所有者が亡くなりそのまま放置されている家屋や、介護施設等に入居して誰も使わなくなった家屋などが空き家に当たります。
(2) 日本全国の総住宅数の約13.6%に当たる家屋が空き家
世帯の居住状況、世帯の保有する土地等の実態を把握し、その現状と推移を明らかにする調査に、5年ごと行われる総務省統計局による「住宅・土地統計調査」があります。直近の平成30年の住宅・土地統計調査によると、平成30年10月1日現在、居住世帯のない住宅のうち空き家は846万戸で,前回調査の平成25年と比べると26万戸も増加しています。日本全国の総住宅数の約13.6%に当たる家屋が空き家で、過去最高の割合となりました。
*総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html
(3) 空き家の種類
空き家は、上記の「住宅・土地統計調査」では、「賃貸用」「売却用」「二次的住宅」「その他の住宅」と4つの種類に分類されています。
①賃貸用住宅
賃貸用住宅は新築・中古を問わず賃貸のために空き家になっている住宅です。戸数は432 万7千戸(総住宅数に占める割合 6.9%)です。
賃貸用住宅の空家数は、具体的には人に貸すように建てられたマンションやアパート、戸建てのうち1室空いていればその部屋は空き家としてカウントされます。そのため数は大きく空き家のなかでも過半数の52.4%を賃貸用住宅が占めています。
②売却用住宅
売却用住宅は新築・中古を問わず売却のために空き家になっている住宅です。戸数は29万3千戸(同 0.5%)です。
家は売りに出してもすぐに買い手が見つかるかとは限らず、この状態の空き家を売却用住宅としています。なお、空き家全体のうち5.0%が売却用住宅です。
③二次的住宅
二次的住宅は別荘やその他の目的で利用されている住宅(セカンドハウス)です。戸数は38万1千戸(同 0.6%)です。二次的住宅には人が生活しているときと生活していないときがあります。空き家全体のうち、二次的住宅は3.8%を占めます。
④その他の住宅
上記3つ以外で、なんらかの理由により人が住んでいない住宅です。戸数は348万7千戸(同 5.6%)です。空き家全体のうち、その他の住宅が占める割合は38.8%です。今問題となっている空き家は「その他の住宅」に当たります。今回の調査で現在347万戸となり、前回調査から29万戸も増加しています。
この数はますます加速してくと予想されています。
空き家の増減の内訳については、2013年と比べると,「賃貸用の住宅」が3万5千戸(0.8%)増、「売却用の住宅」が1万5千戸(4.9%)減、「二次的住宅」が3万1千戸(7.5%)減、「その他の住宅」が30万4千戸(9.5%)増となっています。
(4) 空き家が問題化する理由
空き家は何が問題となるのかでは次のような点があげられます。
①建物の老朽化の進行
人が住んでいない空き家は、住んでいる家に比べて劣化が早まると言われています。
空き家は、窓やドアを締め切るため、室内はカビや湿気により木造住宅の木を腐らせてしまうのが一番の原因でと言われています。また、家屋の損傷の放置により劣化速度は急激に加速します。
②景観の悪化
手入れをせず雑草が伸びている空き家は景観を悪くし、汚れた家はごみの捨て場所になりさらに景観を悪化させていく恐れがあります。
③防犯上の不安
ホームレスや不審者が空き家に住み着く場合は治安悪化の原因となります。また、放火の危険性も増します。
④防災上の不安
台風による瓦などが飛んでくる危険性や、地震により塀・壁が崩れ、近隣の住民や通行人対して危害が及び危険性があります。
⑤地方自治体の税収入の低下
空き家が増える一方では行政にとって住民税などの税収入の減少や、空き家があることによる住宅施策の非効率化という問題が生まれます。
2.空き家の主な発生原因とは
空き家が発生してしまう主な原因として、高齢者の転居と、所有者の死亡の2つが挙げられています。
(1) 高齢者の転居による空き家の発生
空き家が発生してしまう原因で1番多いのは、高齢者の転居です。
高齢者の核家族化が、空き家問題の1番の原因の背景となっています。世帯主が75歳以上の世帯の中で、2000年以降「単独」「夫婦のみ」の世帯が急増しています。高齢者が配偶者と死別し単身になり、子供や親戚の住む家や地域、または高齢者施設などに転居した結果、空き家が多く発生しています。
(2) 所有者の死亡による空き家の発生
2番目に空き家が発生してしまう原因が多いのは、所有者の死亡です。
親が死亡すると相続が発生し、誰も住まなくなった実家が相続財産となり、子供が相続することになります。実家が地方の場合は、子供もすでに家を購入して都市部に住んでいることが多く、転居は現実的でありません。売るにしても、家屋が古く立地が悪い場合には、買い手はなかなか見つからず、結局そのまま放置することになっています。
*国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査報告書」(令和2年12月)
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001377049.pdf
3.空き家を利活用・処分できない理由
(1) 空き家を利活用・処分しようとしてもできない理由
空き家を利活用・処分しようとしてもできない理由には次のような点があります。
・売却、賃貸とも市場性がない。
・自分の代で手放せない、親戚の眼がある。
・共有で共有者間の合意形成ができない。
・所有者本人が認知症で意思能力が無く法律行為ができない。
(2) 空き家を利活用・処分しない理由
また、空き家を利活用・処分しない理由には次のような点があります。
・空き家を更地化すると固定資産税が上がる。
・解体費用がかかる。
・他人に貸し出す抵抗感があり、貸し出すと物件を返してもらえない。
・物置、不用品置き場としての使用している。
・仏壇、家財の置き場所になっている。
まとめ
・空き家とは、居住やその他の使用がなされていないことが常態している家屋とその敷地です。
・日本全国の総住宅数の約13.6%に当たる家屋が空き家です。平成30年では5年前と比べると26万戸も増加しています。
・空き家は、「賃貸用」「売却用」「二次的住宅」「その他の住宅」と4つの種類に分類されています。
・「その他の住宅」とは、なんらかの理由により人が住んでいない住宅です。今問題となっている空き家は「その他の住宅」に当たります。空き家全体のうちの割合は38.8%です。
・空き家が問題化する理由には次のような点があります。
①建物の老朽化の進行
②景観の悪化
③防犯上の不安
④防災上の不安
⑤地方自治体の税収入の低下
・空き家の主な発生原因とは次のような点があります。
①高齢者の転居による空き家の発生
②所有者の死亡による空き家の発生
・空き家を利活用・処分しようとしてもできない理由では次のような点があります。
売却、賃貸とも市場性がない、自分の代で手放せない、親戚の眼がある、共有で共有者間の合意形成ができない、所有者本人が認知症で意思能力が無く法律行為ができない などがあります。
・空き家を利活用・処分しない理由では次のような点があります。
更地化すると固定資産税が上がる、解体費用がかかる、他人に貸し出す抵抗感、貸し出すと物件を返してもらえない などがあります。