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相続税対策で有効―相続財産の評価額を下げる不動産活用
相続税対策で有効―相続財産の評価額を下げる不動産活用
相続税対策において大きく財産の評価額を下げたいのであれば、不動産の活用が考えられます。資産の一部を現金預金から不動産に組み替えることで、相続財産の評価を大きく下げることが可能になります。現金預金は同額の資産と見なされますが、不動産は一般的に時価より資産としての評価額が下がるためです。後に不動産を売却した時に譲渡益を手にすることができます。これらの不動産に関する相続税の節税対策を紹介します。
目次
1.相続財産の評価額を下げる土地の評価方法の特殊性
2.相続財産の評価額を下げる建物の評価方法
3.相続財産の評価額を下げる不動産活用とは
(1) 現金預金を不動産に変える。
(2) 建物を貸家にする。
(3) 小規模宅地等の特例を利用する。
4.相続財産の評価額を下げる不動産活用の準備
(1) 現在保有している不動産がある場合の税額確認・予測
(2) 遺産総額、基礎控除の概算計算と相続税予測
(3) 土地を所有している場合の不動産有効活用の検討
(4) 小規模宅地等の特例が活用できるかの検討
(5) 不動産購入を新たにするかの検討
まとめ
1.相続財産の評価額を下げる土地の評価方法の特殊性
相続財産の中で不動産は多額になるだけでなく、金融資産と異なる大きな特殊性があります。
不動産価格の中心を占める土地の価格の評価方法については次の4つがあります。
実勢価格、公示価格、固定資産税評価額、相続税評価額(路線価など)です。1物4価と言われています。
相続税に関わるのは相続税評価額で路線価方式が中心となります。
①実勢価格
実勢価格とはいわゆる時価で、土地の実際の売買の際の相場の価格です。
②公示価格
公示価格とは、国土交通省が公表する土地の価格です。税金を計算する際や売買取引を行う際の参考となる金額です。
③固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、毎年1月1日に土地の所有者に対して市町村より課税される固定資産税の計算のもととなる金額です。
④相続税評価額(路線価など)
路線価とは、相続税を計算する際に使用され、国税庁が毎年7月頃に公表している土地の価格で、市街地の道路に面した土地の1月1日時点の価格です。路線価(千円単位)に対して、接している土地の面積(㎡当たり)を掛け合わせることによって土地の相続税評価額を計算します。路線価による土地価格=路線価×面積 でおおよその評価額が計算できます。
路線価は一般的に、取引価格の相場である実勢価格の約70~80%と言われています。つまり、手元の現金預金を使って土地を購入することで、現金預金として資産を持っている場合と比べて相続税評価額を20~30%圧縮することができるということになります。
路線価がない場所もありますが、この場合は倍率方式というもので計算し、固定資産税に対して各税務署で設定している一定の倍率をかけて計算します。
2.相続財産の評価額を下げる建物の評価方法
建物については、固定資産税評価額に基づいて計算されます。築年数等にもよりますが、建築費のおよそ60~70%程度となるのが一般的です。つまり、建物を建てることで、現金預金として資産を持っている場合と比べて約30~40%、相続税評価額を圧縮することができることになります。
3.相続財産の評価額を下げる不動産活用とは
不動産を活用して相続税評価額を下げる方法は次のような点です。
(1) 現金預金を不動産に変える。
相続財産にまとまった現金預金がある場合は、土地やアパート、マンションなどを購入し不動産化することで相続税評価額を下げることができます。
相続税評価額を算出する路線価は実勢価格の70~80%になるため、現金を不動産・土地に換えることで評価を圧縮することが可能です。
(2) 建物を貸家にする。
相続財産に更地がある場合は、その土地にアパートやマンションを建てることで「貸家建付地」となり、土地の相続税評価額が下がります。
また、通常であれば建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同じ金額ですが、所有している建物を賃貸物件として第三者へ貸し出している場合「借家権割合」分が減額されます。この借家権割合は全国一律30%と決まっているため、賃貸物件である建物は自用の相続税評価額より30%下がります。
なお、貸家建付地物件の相続税評価額は以下のように算出します。
貸家建付地物件の評価額=更地の評価額-更地の評価額×借地権割合×借家割合×賃貸割合
建物を貸家として活用することで、固定資産税評価額に借家権割合分がさらに減額され、貸家の土地・建物の相続税評価額は時価よりも大幅に下がります。
(3) 小規模宅地等の特例を利用する。
小規模宅地等の特例とは、個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、相続開始の直前において被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の一定の割合を減額する制度です。
具体的には、特例が適用できる親族が被相続人と一緒に住んでいた土地の相続であれば、「小規模宅地等の特例」が適用され、330平方メートルまでは相続税評価額が80%減額されます。ただし、対象は土地のみです。
・小規模宅地等の特例の適用要件
小規模宅地等の特例の適用には要件があります。小規模宅地等の特例は配偶者・同居相続人などが自宅を守るための特例で、主に以下の3つの要件のいずれかに該当すれば適用対象となります。
①配偶者が相続すること。
②同居している相続人が相続すること。
③配偶者も同居人もいない場合に、借家に3年以上住んでいる相続人が相続すること。
4.相続財産の評価額を下げる不動産活用の準備
(1) 現在保有している不動産がある場合の税額確認・予測
①固定資産税の確認
税務署からくる固定資産税・都市計画税の納税通知書で不動産課税評価額を確認します。
建物の相続税評価額は、建物の相続税評価額=固定資産税評価額です。
②相続税路線価の確認
所有する土地の路線価を調べます。路線価図は国税庁のホームページにて確認することができます。(http://www.rosenka.nta.go.jp/)
国税庁のホームページより目的の地域の路線価図を探すことができたら、実際に対象の土地がある場所を探し、その土地が面している道路を確認します。道路ごとに1㎡当たりの路線価が設定され、金額は千円単位の数字で示されています。
路線価方式の土地価格計算方法は、路線価×面積となります。
(2) 遺産総額、基礎控除の概算計算と相続税予測
相続対象の遺産総額から、非課税財産や被相続人の負債などを差し引き、現金・預貯金・有価証券などの遺産総額の概算を大枠で把握します。
次に相続税が発生するかどうかですが、正味の遺産総額が、基礎控除額の金額以下であれば相続税は発生しませんが、基礎控除額よりも高い場合には、遺産総額から基礎控除額を引いた残りの金額(課税遺産総額)に対して相続税が課税されます。
相続税の基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。
相続税が発生する場合に相続税対策を検討する必要性が出てきます。
(3) 土地を所有している場合の不動産有効活用の検討
土地の中に更地がある場合は、その土地にアパートやマンションを建てることで貸家建付地となり土地の相続税評価額が下がるため、土地の面積、立地などから賃貸用の物件として活用できるかどうかを検討します。面積により戸数が設定され立地条件も含めて賃貸住宅としての経営の可能性を検討します。必要に応じて、アパート建設メーカーや不動産会社の見積り、収支計画資料を取ります。
(4) 小規模宅地等の特例が活用できるかの検討
所有する物件に小規模宅地等の特例が活用できるかどうか検討します。
小規模宅地等の特例が適用できる要件の適合が必要です。
(5) 不動産購入を新たにするかの検討
現金預金の資産がまとまってある場合は新たな不動産の購入や投資を検討する方法もあります。投資では物件の選択についての検討が必要です。賃貸用ワンルームマンションは、時価と相続税評価額の差が大きい財産ですので相続税の節税効果があります。また、分譲マンションは区分所有方式ですから、土地の所有権割合が低くなり、相続税の評価額が減額されます。
まとめ
・相続税対策では不動産活用が有効です。
・土地の課税評価額は実勢価格より大幅に安くなります。
・建物の賃貸経営などにより課税評価額が大幅に減少します。
・小規模宅地等の特例が適用できれば、330㎡まで80%土地評価が減額できます
・金融資産を不動産に置き換える点では、新たな不動産購入・投資も1つの方法です。