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遺産相続を争続にしない対策とは?

遺産相続を争続にしない対策とは?

 

遺産をめぐる争いは財産が少ない場合でも多く発生しています。家庭裁判所で調停や審判があった遺産分割事件では、約3分の1が遺産額1000万円以下です。遺産をめぐって調停や審判に持ち込まれる件数は、相続の発生数全体からすればわずかです。実際には、争族という相続をきっかけに親族の関係がこじれてしまうケースはかなりの数にのぼっています。どのようなケースで争いに発展するのかと可能な予防策などについて紹介します。

目次

1. 遺産相続が争続になる代表的ケース

(1) 特定の相続人(又はその配偶者)が被相続人の介護・世話をしていたケース

(2) 特定の相続人(又はその家族)が被相続人から多くの資金援助を受けていたケース

(3) 同居する特定の相続人が親の財産を使い込んでしまっている相続人がいるケース

(4) 主な財産が自宅不動産ぐらいしかないケース

(5) 被相続人が離婚・再婚しているケース

(6) 子供がいない夫婦のケース

(7) 受遺者に多額の贈与のあるケース

(8) 偏った内容の遺言書で、認知症である親に特定の相続人が書かせた疑いがあるケース

2. 遺産相続を争続にしないための対策

(1) 遺言書作成が相続トラブル予防の基本

(2) 公正証書遺言の作成

(3) 特別寄与制度の利用―被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭要求が可能に

(4) 公平な生前贈与

(5) 不動産の生前処分と金融資産への転換

(6) 最も大事なコミュニケーション

まとめ

 

1.遺産相続が争続になる代表的ケース

 

遺産相続をめぐる争いになりやすいケースでは次のようなものがあります。

 

(1) 特定の相続人(又はその配偶者)が被相続人の介護・世話をしていたケース

 

子供のうちの一人が親と同居して介護や生活面での面倒を見ていたという場合、介護をしていた人は、苦労が多い現状があります。特に長男の場合では相続人ではない長男の嫁が多くの負担を背負う場合があります。

 

一方他の兄弟姉妹は、相続については法定相続分を主張します。介護の苦労は実際にやっていない人には理解が難しく、介護の苦労が分かってもらえない場合があり、妥協点を見出すのが難しくなります。

 

(2) 特定の相続人(又はその家族)が被相続人から多くの資金援助を受けていたケース

 

相続人の兄弟姉妹のうち一人だけが同居し、親から生活費の援助を受けていた場合があります。また、相続人の兄弟姉妹のうち一人だけが結婚資金や住宅購入資金などで大きな金銭的援助を受けていた場合や、海外留学や大学院進学まで親から教育資金を援助してもらっていた場合などがあります。

 

援助を受けた方は、自分だけが特別な援助を受けたとの意識はなかったりしますが、援助を受けていない他の人からは長年のやっかみが潜在的にあり、相続の時に表面化します。

 

(3) 同居する特定の相続人が、親の財産を使い込んでしまっているケース

 

相続人の兄弟姉妹のうち一人だけが親の財産を使い込んでしまっているケースです。

特に、親が認知症気味で判断能力が低下している場合に問題があります。親の死後他の兄弟姉妹が使い込んでいたお金の追求をする場合があります。

 

(4) 主な財産が自宅不動産ぐらいしかないケース

 

主な財産が自宅不動産ぐらいしかない場合で、配偶者や相続人である子供のうちの一人が同居していた場合などは、財産の分割をめぐってトラブルになる可能性が高くあります。

自宅不動産が唯一の住まいであれば簡単に売却するわけにはいかないためです。

 

不動産は、分割して分けることが難しく、換金希望とそうでない人の意見の相違、単独で取得してそのまま住み続けたい人とそうでない人などトラブルになりがちです。

 

(5) 被相続人が離婚・再婚しているケース

 

被相続人に離婚歴がある場合、前妻の子や後妻及びその子供との関係等で相続に大きな対立関係が生まれます。前妻の子供も法定相続人であり、遺産相続を受ける正当な権利があります。

被相続人が高齢になってからの再婚では、前妻の子は相続財産狙いの結婚だと思いトラブルになります。親の幸せを考えるよりも自分の遺産の配分の方が重要と考える場合です。また、結婚サギと思う場合もあります。

後妻に連れ子があり、養子縁組した場合は、法定相続人が増えることになるため、争いが避けられない場合が多くあります。

 

また、後妻の子が前妻の子の存在を知らされておらず、父の相続発生後に初めて前妻の子がいたことを知る場合もあります。

 

(6) 子供がいない夫婦のケース

 

相続は子供がいない夫婦の場合には、相続人の範囲が広くなり、相続トラブルに発展する可能性が高くなります。

夫婦間に子供がいない場合には、第二順位の親や祖父母が相続人となり、親や祖父母が他界している場合には、第三順位の兄弟姉妹が相続人となります。夫が亡くなった妻側からすると血縁関係がなく疎遠であることが多いため、夫の財産の一部が夫側の親族にわたることに納得がいかず争いに発展してしまうケースです。

 

(7) 受遺者に多額の贈与のあるケース

 

被相続人が遺言を残し、相続人以外の第三者に遺贈している場合も考えられます。遺贈の額がさほど多くなければ問題はなくても多額の場合は問題になる場合もあります。特に受贈された内縁者と残された配偶者との間では深刻です。

 

(8) 偏った内容の遺言書で、認知症である親に特定の相続人が書かせた疑いがあるケース

 

遺産相続において、遺言は被相続人の意思を実現するもので法定相続分よりも優先されます。ただし、特定の相続人のみに有利な内容に偏りがある遺言書の場合で、親が認知症の可能性がある場合、他の相続人は、認知症である親に特定の相続人が書かせたと思いトラブルに発展します。

 

2.遺産相続を争続にしないための対策

 

遺産相続をめぐる準備には個々の特殊性に対応したものもありますが普遍的に次のような予防の対策があります。

 

(1) 遺言書作成が相続トラブル予防の基本

 

すべての相続トラブルの予防策には遺言書の作成が重要です。遺言書の作成によってトラブルは未然に防げます。内容に不満はあっても被相続人の意思には従わざるをえません。

 

特に、下記のような場合は遺言が必要です。

・前妻、後妻の間にそれぞれ子供がおり、子供同士を争わせたくない。
・認知した子がいて、その子にも財産を残してあげたい。
・家業の承継と継続の希望があり特定の相続人に任せたい。
・世話になったので特別に財産を多く与えたい人がいる。
・夫婦間に子がいないので配偶者に全財産を相続させたい。
・遺産を与えたくない相続人がいる。
・遺産を特定の団体に寄付したい。

その他、遺産争いが生じる可能性がある場合です。

 

ただし、特定の相続人に法定相続分より多くの財産を取得させる場合は、他の相続人の遺留分を侵害しないように気を付ける必要があります。遺留分とは、一定の条件を満たす相続人に対して最低限の遺産相続分を保証する相続割合のことで、遺言書の内容に関わらず保障されるものです。

 

また、親に認知症の疑いがある場合では、遺言書の効力などを確認することがあります。

遺言書には、形式面の要件や作成時の判断能力、さらには作成時の状況などにより、訴えになった場合は、家庭裁判所が遺言書自体を無効とする場合があります。認知症の疑いがある場合は医師の意見書なども必要になります。

 

(2) 公正証書遺言の作成

 

遺言書は、自筆証書遺言で作成することもできますが、公証人が関与する公正証書で作成しておけば、遺言書が法定の要件を満たさないために無効になってしまうリスクはなくなります。また、公正証書遺言は公証人や第三者の証人が立会いのもと作成されるため、遺言内容が本人の意思によるものかをめぐって争いになる可能性も減ります。さらに、作成した遺言書の原本は公証役場で保管されるため、遺言書の紛失や、偽造・改ざんといったトラブルも回避できます。

 

(3) 特別寄与制度の利用―被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭要求が可能に

 

民法改正により、被相続人の生前にその財産の維持や増加に貢献した相続人には、寄与分が認められ、遺産分割において特別な考慮がされます。従来の民法では、寄与分が認められるのは相続人に限られ、内縁の妻や事実上の養子、相続放棄者、相続欠格・廃除を受けた者は、どんなに被相続人に対して貢献していたとしても、寄与分を主張する事はできませんでした。

しかし、近年の相続法改正により、同居家族で配偶者の妻など相続人以外の一定の親族であっても、被相続人に特別の寄与をした者に対しては、特別寄与料の請求が認められるようになりました。

 

(4) 公平な生前贈与

 

相続人等への生前贈与は、財産のスムーズな移転や節税対策としての効果も期待できるものです。ただし、生前贈与は公平に行わないとやはりトラブルになります。

生前贈与は特に相続対策を意識せず行われることも多いため、結婚資金や住宅の購入資金、孫の教育資金などの贈与の結果、大きな差が生まれる場合もあります。

 

(5) 不動産の生前処分と金融資産への転換

 

主な財産が自宅不動産のみであり、以前からそこで暮らしていた相続人がいる場合、遺産分割でもめる可能性が非常に高くなります。代償金の支払いで解決するという方法もありますがそのためには、まとまった資金が必要となります。

他に方法がない場合は、生前に不動産を処分して、金融資産に換えてしまうことがあります。

売却してお金に換金して分割する方法になります。

 

(6) 最も大事なコミュニケーション

 

相続人間で普段からコミュニケーションが取れていて、お互いの状況がよくわかっていればトラブル起こる可能性は低くなります。

 

まとめ

 

・遺産相続が争続になる代表的ケースは次のようなものです。

①特定の相続人(又はその配偶者)が被相続人の介護・世話をしていたケース

②特定の相続人(又はその家族)が被相続人から多くの資金援助を受けていたケース

③同居する特定の相続人が親の財産を使い込んでしまっている相続人がいるケース

④主な財産が自宅不動産ぐらいしかないケース

⑤被相続人が離婚・再婚しているケース

⑥子供がいない夫婦のケース

⑦受遺者に多額の贈与のあるケース

⑧偏った内容の遺言書で、認知症である親に特定の相続人が書かせた疑いがあるケース

・遺産相続を争続にしないための対策では、何よりも遺言書作成が相続トラブル予防の基本となります。

・遺言書では、公正証書遺言がトラブルを避けるためには有効です。

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