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「相続空き家」を売却した時の3,000万円特別控除の特例
「相続空き家」を売却した時の3,000万円特別控除の特例
住宅の売却では、譲渡益に関する「3,000万円控除」という節税効果が高い特例があります。
被相続人の居住用財産の相続で得た空き家(以下、「相続空き家」と略)にも、要件を満たすと3000万円控除の利用が可能です。相続空き家の3,000万円特別控除は、2016年度改正により導入された比較的新しい特例です。そのためあまり知られていないとともに、適用要件も厳しいため、あまり利用されていない特例です。しかし、節税効果が大きい制度でメリットがあり紹介します。
目次
1. 相続空き家売却の3,000万円控除の特例が生まれた背景
2. 相続空き家制度の概要
3. 相続空き家の3,000万円特別控除の特例を受けるための適用要件
(1) 家屋に関する要件
(2) 敷地に関する要件
(3) 譲渡に関する要件
(4) 適用される期限の要件
(5) その他の要件
4. 適用を受けるための手続
まとめ
1.相続空き家売却の3,000万円控除の特例が生まれた背景
現在、木造戸建て住宅の空き家が増えており社会問題化しています。放置された空き家は、倒壊や老朽化による事故、景観悪化、治安上の不安の拡大などを生み出し、地域社会に悪影響を及ぼしています。空き家の発生の原因の多くは相続によるものと思われます。
そのため、国として戸建ての空き家を処分しやすくするために、この相続空き家の3,000万円特別控除を制定しました。
相続空き家の3,000万円特別控除の制度の趣旨は、戸建て住宅の空き家をなくすことであり、所有者に空き家を取壊してもらうことを意図して作られています。適用要件はその設定理由を理解すると内容が分かります。そのため、マンションは適用対象にはなっていません。
2.相続空き家制度の概要
相続空き家売却の3,000万円控除の正式名称は、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」と言います。
具体的には、相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は敷地等を、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
「相続空き家の3,000万円特別控除」を利用した場合の譲渡所得の計算式は、以下の通りです。
*譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-3,000万円
節税効果は高くほとんどのケースで譲渡所得はゼロもしくはマイナスとなり、税金は発生しません。
3.相続空き家の3,000万円特別控除の特例を受けるための適用要件
この3,000万円特別控除を利用するには、以下の要件を「全て」満たす必要があります。
(1) 家屋に関する要件
①相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること
②昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること
この日は耐震基準が改訂された日で、これ以前に建築確認申請を行った建物は現在の耐震基準を満たしていない可能性があり、倒壊のリスクが高い建物ということになります。
③区分所有建築物(マンション等)ではないこと
マンションはこの特別控除を利用できません。
④相続の開始直前においてその被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
⑤相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
なお、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなどの場合は被相続人居住用家屋に該当します。
(2) 敷地に関する要件
特例の対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」とは、相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地又はその土地の上に存する権利をいいます。
①被相続人居住用家屋の敷地面積の計算
相続の開始の直前においてその土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母屋と離れなど)のある一団の土地であった場合には、主として居住の用に供している建築物(母屋)のみが控除の対象となります。
その土地の面積に、2以上の建築物がある場合は、床面積の合計より、母屋の床面積の占める割合を乗じて計算した面積の土地の部分に限ります。
土地全体が800平方メートルあり、母屋が300平方メートルで離れが200平方メートルの場合は、建築物の面積の合計が500平方メートルですから
被相続人居住用家屋の敷地等=800平方メートル×300平方メートル÷500平方メートル
となります。
②土地について相続の時からその譲渡の時まで、事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと。
駐車場などとして貸していると控除が使えません。
(3) 譲渡に関する要件
空き家の3,000万円特別控除を利用する場合、不動産の譲渡にも要件があります。
要件は次のとおりです。
①譲渡価格が1億円以下であること
被相続人居住用家屋と一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合、1億円以下であるかどうかの判定は、分割して売却したものも含めた売却代金になります。
②家屋を譲渡する場合、譲渡時において、その家屋が現行の耐震基準に適合するものであること
(4) 適用される期限の要件
①制度自体の期限
この控除を適用するためには、制度自体に期限があります。適用期限は、平成28年(2016年)4月1日から令和5年(2023年)12月31日までの間です。
②相続開始からの期限
相続が開始された日から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限があります。令和2年(2020)1月2日以降に相続が始まった場合、期間の延長がなければ令和5年12月31日までに売却すれば控除を使うことができます。
(5) その他の要件
①売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
②同一の被相続人から相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。
③親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
4.適用を受けるための手続
この特例の適用を受けるためには、次に掲げる場合の区分に応じて、それぞれ次に掲げる書類を添えて確定申告をすることが必要です。
①譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)〔土地・建物用〕
②売った資産の登記事項証明書等で次の3つの事項を明らかにするもの
(イ)売った人が被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を被相続人から相続又は遺贈により取得したこと
(ロ)被相続人居住用家屋が、昭和56年5月31日以前に建築されたこと
(ハ)被相続人居住用家屋が、区分所有建物登記がされている建物でないこと
③売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」
④耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し
⑤売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの
*国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
まとめ
・相続空き家の3,000万円特別控除の制度の趣旨は、戸建て住宅の空き家をなくすことです。
・マンションは対象外です。
・相続空き家売却の3,000万円控除の正式名称は、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」と言います。
・特例の内容は、相続等により取得した、被相続人の居住用家屋・敷地等を、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができるものです。
・要件では、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること、昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること、譲渡価格が1億円以下であることなど複数の要件があります。