TOP > 不動産売却の基礎知識 > 相続 > 相続登記の登録免許税免税の延長と対象追加
相続登記の登録免許税免税の延長と対象追加
相続登記の登録免許税免税の延長と対象追加
相続登記がなされないまま放置された土地が日本全国に広がっています。特に、評価額が低い田舎の土地や山林などは、相続登記を放置されるケースが後を絶ちません。利用価値がない安い土地に、登録免許税を支払ってまで登記をしたくない方が多くいるのだと思います。
しかし、相続登記がされないままだと所有者不明の土地となり公共事業の推進に支障をきたすことなどの問題があります。そのため土地の相続登記を促進する目的のために、所有者不明土地を円かつ適正に利用するための仕組み作りの1つとしてこの登録免許税の免税措置ができました。
目次
1. 相続登記の登録免許税の免税措置に関わる動向
2. 相続登記の免税措置の種類
(1) 相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合
(2) 市街化区域外の土地で法務大臣が指定した土地のうち評価額が10万円以下の場合
(3) 表題部所有者の相続人名義で土地の所有権保存登記をする場合
3. 免税措置の期限
4. 通常の免税措置が受けられない場合の登録免許税はいくらか?
まとめ
1.相続登記の登録免許税の免税措置に関わる動向
「民法等の一部を改正する法律」に関連し、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置が令和3年4月21日に成立し、その後3年以内に義務化され部分的に順次施行されることとなりました。
そして、所有者不明土地の登記の促進のために、もともと平成30年度の税制改正により、相続による土地の所有権の移転の登記について登録免許税の免税措置が設けられているのを、上記の令和3年度税制改正により免税措置の適用期限が令和4年(2022年)3月31日まで延長されることになりました。また、新たに、免税措置の適用の対象となる登記として、「表題部所有者の相続人が受ける所有権の保存の登記」が追加されました。
2.相続登記の免税措置の種類
令和3年度税制改正で、これまで「相続登記の登録免許税の免税措置」が受けられるケースが2つあったところ3つに増えました。以下、その概略と免税措置が設けられた背景・制度趣旨について説明します。なお、3種類のどれも「土地」の相続だけで、「建物」の相続について免税はありません。
(1) 相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合
①適用対象
相続登記が未了の土地について、さらに相続が発生している場合(数次相続や再転相続など)に適用があります。
個人が相続(相続人に対する遺贈を含む)により、土地を取得した場合において、その個人が相続登記を受ける前に死亡したときは、その死亡した個人名義にする相続登記は免税となります(租税特別措置法第84条の2の3第1項)。
*租税特別措置法第84条の2の3第1項
「個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成三十年四月一日から令和四年三月三十一日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。」
例えば、Aが平成20年に死亡して、土地は相続人Bに相続されました。しかし、AからBへの相続登記がされませんでした。加えて、Bもまた死亡した場合(数次相続と呼びます)、未了となっているAからBへの土地の相続登記について、登録免許税が免税となる措置です。
Bに名義変更するといっても、B自身は平成30年に死亡した場合は、実際にはこの相続登記はBの相続人であるCが行うことになります。その後BからCへ相続登記を行うことになりますが、こちらについては原則通り登録免許税がかかります。
死人名義に相続登記をすることになりますが、法律上は死人名義に名義変更をすることも認められています。
②背景
所有者不明土地が荒廃し近隣に迷惑を掛けている問題や、所有者不明土地について震災等復興対策などを施そうとしても所有者に連絡が付かないために対処ができなくなってしまう問題が増加していることがあります。
不動産登記簿上の所有者は死亡しているのに、その相続登記をせず放置していることが、この問題を生じさせる大きな原因の1つとされています。そこで、税制としても相続登記を促進するため、長期間相続登記が未了である土地への対策として制度が設けられました。
(2) 市街化区域外の土地で法務大臣が指定した土地のうち、評価額が10万円以下の場合
①適用対象
「市街化区域外の土地で法務大臣が指定した土地」は、かなり限定されます。さらに固定資産評価額が10万円以下の土地ですから、山林や田、畑などが主となります。
②背景
評価の安い土地については、登録免許税や司法書士への手数料など費用をかけて相続登記をすることが躊躇されるため、免税措置を設けることにより、相続登記未了の土地を発生させないようにするのが目的です。
根拠となる法律は以下です。
*租税特別措置法第84条の2の3第2項
「個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和四年三月三十一日までの間に、(中略)相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、当該土地がこれらの登記の促進を特に図る必要があるものとして政令で定めるものであり、かつ、これらの登記に係る登録免許税法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額が十万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない。」
注)所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日とは、平成30年11月15日
③適用要件
免税を受けるための3つの要件があります。
a. 土地の相続のケースで土地が市街化区域外であること
b. 上記の土地のうち、法務大臣が指定する土地であること
法務大臣が指定する土地は、各都道府県法務局のホームページに公示されています。
c. 不動産の固定資産評価額が10万円以下であること
この要件はどれか1つ満たしていればよいのではなく、3つすべてクリアしていなければなりません。
(3) 表題部所有者の相続人名義で土地の所有権保存登記をする場合
新たに加えられた部分です。
①適用対象
「表題部所有者」とは、登記簿(登記事項証明書)の「表題部」に「所有者」として記載されている人のことです。所有権保存の登記が免税となります。
表題部所有者がすでに亡くなっており、その相続人名義に「所有権保存登記」を行う場合で、固定資産税評価額が10万円以下であるときは、その登記にかかる登録免許税は免税となります(租税特別措置法第84条の2の3第2項)。令和3年度税制改正で新たに追加された項目です。
*租税特別措置法第84条の2の3第2項
「個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和四年三月三十一日までの間に、土地について所有権の保存の登記(中略)を受ける場合において、当該土地がこれらの登記の促進を特に図る必要があるものとして政令で定めるものであり、かつ、これらの登記に係る登録免許税法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額が十万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない。」
②背景
登記の促進を図る必要性があるため
③適用要件
免税を受けるための要件は、上記の「市街化区域外の土地で法務大臣が指定した土地のうち評価額が10万円以下の場合」と同じです。
3.免税措置の期限
現状では平成30年4月1日から令和4年3月31日までに申請する登記です。
なお、死亡した日がこの期間内である必要はありません。平成30年4月1日から令和4年3月31日までに「申請」をすれば免税になるという意味です。
4.通常の免税措置が受けられない場合の登録免許税はいくらか?
通常の免税措置が受けられない場合、土地の評価額に対して、0.4%(1000分の4)の税率の登録免許税がかかります。
まとめ
・相続による土地の所有権の移転の登記について登録免許税の免税措置の適用期限が令和4年(2022年)3月31日まで延長されることになりました。
・相続登記の免税措置の種類は次のものです。
①相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合
②市街化区域外の土地で法務大臣が指定した土地のうち評価額が10万円以下の場合
③表題部所有者の相続人名義で土地の所有権保存登記をする場合
・通常の免税措置が受けられない場合の登録免許税は、土地の評価額に対して、0.4%(1000分の4)の税率です。