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不動産における生前贈与と相続の違い PART1
不動産における生前贈与と相続の違い PART1
贈与と相続との2つはどちらも「財産を誰かに与える」方法です。もっとも大きな違いは、「財産を“いつ”与えるか」です。贈与は、財産を渡す人が存命の間に財産を渡す人の意思で行われます。一方、相続は、誰かが亡くなった場合、亡くなった人の財産が遺族などに引き継がれる形で発生します。財産を渡すタイミングによって贈与か相続かのどちらかとなり、渡す財産については、それぞれ贈与税、相続税が課せられることになります。また、贈与と相続とには各々独自のルールがあり、メリットが生まれる局面も異なっています。贈与と相続の細かな違い、メリット・デメリット、税制面などについて見ていきます。
目次
1.贈与と相続の相違
(1) 贈与とは
(2) 贈与の種類
(3) 相続とは
(4) 贈与と相続の基本的な相違点
2.生前贈与と相続の流れ・手続きの違い
(1) 生前贈与の流れ
(2) 相続の流れ
3.不動産の生前贈与のメリット・デメリット
(1) 不動産の生前贈与のメリット
(2) 不動産の生前贈与のデメリット
4.不動産の相続のメリット、デメリット
(1) 不動産の相続のメリット
(2) 不動産の相続のデメリット
5.税金対策
(1) 生前贈与は相続税対策に有効
(2) 贈与税率と相続税率
6.生前贈与をする際の注意点
(1) 財産が相続税の基礎控除未満の場合
(2) 相続発生から3年以内生前贈与加算には注意
(3) 土地・不動産の生前贈与は慎重に
まとめ
1.贈与と相続の相違
(1) 贈与とは
贈与とは、当事者の一方がある財産権を相手方に無償で移転する意思を表示し、相手方がそれを受諾する意思を表示し、双方の意思が合致することによって成立する契約のことです(民法第549条)。
贈与は受ける側の合意が必要です。
(2) 贈与の種類
贈与には、「生前贈与」「負担付贈与」「死因贈与」の大きく分けて3つがあります。
①生前贈与
生前贈与とは、贈与者(財産をあげる人)と受贈者(財産をもらう人)がお互い生きている間に効力が生じている贈与です。一般的な贈与です。
②負担付贈与
負担付贈与とは、受贈者(財産をもらう人)に一定の負担を課す贈与のことをいいます。例えば、「家をあげるから残りのローンを払ってほしい」などです。
③死因贈与
死因贈与とは、贈与者(財産をあげる人)の死亡により効力が生じる贈与です。
例えば、「私が死んだら、この家をあげましょう」「はい、もらいます。というような贈与です。
死因贈与については、一般的に民法や税法では、遺贈に関する規定が準用されます。遺贈と死因贈与の違いは、遺贈は遺言書に遺言者が一方的に相続させるという意思表示でできますが、死因贈与は、お互いの意思表示が必要です。贈与は、死因贈与も含めて、財産をもらう側の合意が必要です。
(3) 相続とは
相続とは、個人が死亡した場合に、その者の有していた財産上の権利義務をその者の配偶者や子など一定の身分関係にある者に承継させる制度のことです。また、相続は、被相続人の死亡によって開始されます(民法882)。
(4) 贈与と相続の基本的な相違点
贈与と相続の違いは、発生時期、合意の必要性、相手先、税金の種類などです。
生前贈与とは「生きているうちに財産を贈与すること」です。生前贈与をすることで相続時の財産が減るため、相続税の削減が可能です。ただし、生前贈与した財産が一定額を超えれば贈与税が発生します。贈与税は、相続時を除き、個人からもらった財産が年間110万円(控除額)を超えているときに贈与を受けた人が支払うべき税金です。
相続は、誰かが亡くなられた時に発生します。
相続をする際には基礎控除額を超えれば相続税が発生します。
*贈与と相続の相違比較
贈与 | 相続 | |
発生時期 | 本人の生前 | 本人の死後 |
合意 | 双方の合意で成立 | 双方の意思に関係なく成立 |
遺言書 | なくてもできる。 | 法定相続分と異なる場合は必要 |
相手先 | 自由 | 法定相続人
遺言によって法定相続人以外に譲渡される場合は「遺贈」という。 |
税金の種類 | 贈与税 | 相続税 |
2.生前贈与と相続の流れ・手続きの違い
生前贈与と相続では、流れと手続きが異なります。
(1) 生前贈与の流れ
通常、生前贈与は当事者間の合意で成立します。たとえ口頭による簡単な約束であっても成立はします。とはいえ、生前贈与を行う場合でも、贈与契約書など書面にして残すのが望ましいです。契約書を交わしておけば、財産・資産を渡したあとのトラブルを回避することができます。
(2) 相続の流れ
相続は、財産・資産を所有する人物が亡くなることで開始します。
生前贈与は贈与する側とされる側の合意がなければ成立しないのに対し、相続は相続する人の意思によらず発生します。もちろん、相続する側にも権利はあるので、相続放棄も可能です。相続放棄は、相続が発生した後でなければできません。
3.不動産の生前贈与のメリット・デメリット
節税対策において生前贈与について知っておくべきことがあります。ここで、土地など不動産を生前贈与するメリット・デメリットについて紹介します。
(1) 不動産の生前贈与のメリット
生前贈与のメリットは節税効果が期待できることです。
①暦年贈与
贈与税には年間110万円まで控除される暦年贈与という制度があります。これは不動産の譲渡でも活用できる制度です。
例えば、評価額1,100万円の土地で考えると、評価額の10分の1ずつ、10年間持分を生前贈与することで課税されずに財産を渡すことができます。
②財産を渡す相手を選べる。
相続が突然発生すれば、遺産分割で揉めてしまうことも多くなります。特に分け方が難しい不動産に関しては深刻になる場合があり仕方なく共有にし、問題を先送りする方法がとられることが多くあります。しかし、贈与であれば遺産を渡す相手を選べ、トラブル回避につながります。
(2) 不動産の生前贈与のデメリット
①税金がかかる場合もある。
不動産の生前贈与では「登録免許税」と「不動産取得税」が発生します。贈与税については場合によります。
②不動産の維持費がかかる場合もある。
不動産を贈与された人は、物件により不要であったり、継続的に維持費がかかるため、負担も考慮しなくてはいけません。
(PART2に続く)