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遺言書の種類と効力 PART2
遺言書の種類と効力 PART2
(PART1より続く)
目次
1.遺言書とは
(1) 遺言書とは
(2) 法定相続よりも遺言による相続が優先される。
2.遺言書の種類
(1) 自筆証書遺言
(2) 公正証書遺言
(3) 秘密証書遺言
3.遺言書が持つ効力
(1) 受遺者を指定できる。
(2) 法定相続とは異なる分割を指定できる。
(3) 相続権の排除が可能
(4) 遺言執行者を指定できる。
(5) 非嫡出子の認知が可能
4.遺言書作成の留意点
(1) 相続人の遺留分に注意する。
(2) 「付言事項」で気持ちを伝える。
まとめ
2.遺言書の種類
(3) 秘密証書遺言
➀ 秘密証書遺言とは
遺言の内容を誰にも知られたくない場合に利用されるのが、秘密証書遺言です。
遺言者が自作した遺言書を公証役場に持参し、遺言書の存在を公証役場で記録してもらうものですが、積極的に活用されている制度ではありません。
秘密証書遺言は、自作ではあるものの、遺言者の直筆に限らず代書やパソコンでの作成も認められています。自筆の署名・押印さえあれば有効なので、身体が不自由な方でも活用できる方法です。
作成した遺言書を封筒に入れて封印し、証人2人とともに公証役場で申述して、封筒に日付と遺言者・証人2人が署名押印することで手続きが完了します。
公証人による確認がないため体裁の不備や法的に無効な内容を残していてもチェックを受けられません。
また、証人2人が必要であり公正証書遺言と同等の手間がかかるだけでなく、遺言書は遺言者本人が保管することになるので紛失のリスクもあります。
開封の際は家庭裁判所の検認が必要です。
②秘密証書遺言のメリット・デメリット
a. メリット
・遺言書が本人のものである事を明確にできる。
・代筆やワープロでの作成も可能
・遺言の内容を秘密にできる。
・改ざんされる心配がない。
・公証役場に記録は残る。
b. デメリット
・公証人も遺言内容を確認していないので、不備が残る可能性がある。
・家庭裁判所の検認が必要
・手数料として11,000円がかかる。
・紛失のリスクがある。
・公正証書遺言と同等の手間がかかる。
3.遺言書が持つ効力
相続人は遺言書に従って遺産相続するため、遺言書には次に紹介する効力が備わっています。
(1) 受遺者を指定できる。
遺言書では受遺者(財産を譲る人)を指定できるため、法定相続人以外の人にも財産承継が可能です。世話になった人や団体への遺贈や寄付の場合にも有効です。
(2) 法定相続とは異なる分割を指定できる。
法定相続分とは異なる分割を指定でき、特定の者に多く分割できます。
(3) 相続権の廃除が可能
遺言者への虐待や侮辱などの行為があれば受遺者に指定せず、相続権の排除も可能です。法定相続人の中に財産の承継者として相応しくない人物がいる場合、遺言書の効力があります。
被相続人の生前に手続きを行う場合もありますが、死後に手続きする場合は遺言廃除となります。
ただしその際には必ず、被相続人自身が、この人物を相続廃除したいという意思と具体的な理由を、遺言書などの正式な書面に遺しておく必要があります。
また、遺言廃除の場合、廃除の申し立ては遺言執行者が行います。
そのため、被相続人は一般的には生前に遺言執行者を選んで依頼しておく必要があります。
さらに、自由に廃除できるわけではなく、家庭裁判所の審判を経る必要があります。
記載する事項は次のような点です。
・遺言執行者が誰であるか(被相続人が生前に相手の承諾をもらっておくのが望ましい)
・推定相続人のうち誰を相続廃除するという意思
・相続廃除の具体的な理由(虐待や暴言、非行などの具体的な内容)
(4) 遺言執行者を指定できる。
確実に遺言内容を実行させるため、遺言書によって遺言執行者も指定できます。破産者や未成年者以外であれば家族も遺言執行者になれますが、相続手続きに関する知識も必要であり、他の相続人との利害関係もあります。遺言執行者を指定する場合、弁護士や司法書士などの専門家を選ぶ場合もあります。
(5) 非嫡出子の認知が可能
法律上の婚姻関係にない男女間の子を非嫡出子といい、認知されていない隠し子は遺言書によって認知可能であり、第1順位の法定相続人になれます。
4.遺言書作成の留意点
(1) 相続人の遺留分に注意する。
法定相続人には一定割合の財産を取得できる権利が保障されています。各相続人に最低限保障されている相続分が「遺留分」であり、遺留分よりも少ない金額しか遺産配分されていない場合は、取得財産の多い相続人に対し、遺留分を請求できます。遺留分の請求を「遺留分侵害額請求」といい、行使できるのは被相続人の配偶者と子、父母などの直系尊属です。
遺留分侵害請求があった場合、請求者への返還は現金になることにも注意が必要です。
(2) 「付言事項」で気持ちを伝える。
遺言書の付言事項を使い、遺言者の気持ちが伝わるようにします。遺贈をした趣旨などの説明にも使えます。感謝や逆に不満を感ずる相続人などへの配慮の場合もあります。
配偶者に自宅を譲る場合、相続人である子供への以下のような場合もあります。
(付言事項例)
本遺言書は、私に長年連れ添い、晩年は献身的な介護をしてくれた妻○○への感謝をあらわしたものです。妻○○も高齢となり、現在の自宅で穏やかに暮らしてほしいとの願いから家屋と土地を妻○○へ譲るものです。子供達には十分な財産を残せませんが、私の気持ちを汲み取り、遺言書どおりに相続されることを願っています。
まとめ