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相続税がかからない非課税財産とは何か?
相続税がかからない非課税財産とは何か?
被相続人の財産に対して相続税のかかるものと、かからないものがあります。かからないものが非課税財産となります。非課税財産を正しく理解し非課税枠を使えば、相続発生前の段階であれば節税対策が行えます。生命保険の非課税枠の使用や墓地の生前購入についても比較的行いやすい節税対策と言えます。その他、非課税財産や非課税枠のある財産について知っておくことが重要です。これらを含めて意外と知られていない相続税のかからない非課税財産の内容について紹介します。
目次
1. 相続税がかからない非課税財産とは
2. 墓地、仏壇、仏具、祭具
3. 生命保険金等の一部
(1) 生命保険金等の非課税枠
(2) 相続放棄した者や相続人以外の者が取得した生命保険金
4. 死亡退職金等の一部
(1) 死亡退職金等の対象と非課税枠
(2) 退職金等とは
5. 国や地方公共団体へ寄付した財産
(1) 寄付先として認められているところ
(2) その他の要件
6. 公共事業用財産
7. 心身障害者共済制度の給付金を受ける権利
8. 個人経営の幼稚園事業等の財産
9. その他、実務上相続税がかからない財産
まとめ
1.相続税がかからない非課税財産とは
相続税では原則として、相続又は遺贈(死因贈与を含む)によって取得したすべての財産が課税の対象となります。しかし、その中には、性質、公益性、生活習慣などから課税が適当でないものがあることから非課税財産の対象を定めています。
相続税法第12条と措置法第70条で、そもそも相続税の計算の対象としないものとして、次の項目のものを定めています。
2.墓地、仏壇、仏具、祭具
墓地、仏壇、仏具、祭具など、日常の礼拝の対象とされている財産には相続税が課税されません。
お墓は非課税財産ですので、お墓のない人、あっても家のお墓に入れない人は、生前に自分のお墓を買っておくことで現金を減らせます。
ただし、仏具で金の仏像など純金製で極端に高価なものや、骨董品や投資商品として見なされるものは相続税の対象となる場合があります。
判断基準としては、換金性があります。換金性の高いと思われるものは、相続税の対象となる可能性があります。通常であれば、個人が日常礼拝をしているお墓や仏壇を、第三者がお金を出して買うことは想定できないため相続税の対象とはなりません。
3.生命保険金等の一部
(1) 生命保険金等の非課税枠
生命保険金等には非課税枠があり、「500万円×法定相続人の数」が非課税となります。法定相続人とは民法で定められた相続人のことです。
*相続税課税額=生命保険金―非課税額(500万円×法定相続人の数)
例えば、法定相続人が妻・長男・二男の3人の場合、生命保険金等の非課税額は500万円×3人で1,500万円となります。生命保険金が2,000万円の場合は2,000万円から非課税額である1,500万円を差し引き、500万円に対して相続税が課税されます。
相続税課税額 生命保険金2,000万円―非課税額(500万円×3)=500万円
なお、生命保険金が非課税額以下であれば生命保険金に対して相続税が課税されません。
(2) 相続放棄した者や相続人以外の者が取得した生命保険金
相続放棄した者や相続人以外の者が取得した生命保険金も、相続税の対象となります。
4.死亡退職金等の一部
(1) 死亡退職金等の対象と非課税枠
死亡退職金は相続税の対象となります。
弔慰金(業務上の死亡:被相続人の死亡当時の普通給与の3年分、業務外の死亡:被相続人の普通給与の半年分)は非課税となります。
死亡退職金等には非課税枠があり、「500万円×法定相続人の数」が非課税となります。
例えば、法定相続人が妻・長男の2人で死亡退職金が3,000万円の場合、死亡退職金等の非課税額は500万円×2人で1,000万円となります。死亡退職金3,000万円から非課税額である1,000万円を差し引き、2,000万円に対して相続税が課税されます。
なお、死亡退職金が非課税額以下であれば死亡退職金に対して相続税が課税されません。
(2) 退職金等とは
退職金等とは、受け取る名目にかかわらず実質的に被相続人の退職手当金等として支給される金品をいいます。したがって、現物で支給された場合も含まれます。
退職金等には次の要件があります。
➀死亡退職で、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
②生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
5.国や地方公共団体へ寄付した財産
相続税の申告期限までに相続により取得した財産を、国、地方公共団体、特定の公益法人などに寄付した場合、寄付した相続財産には相続税が課税されません。
ただし、寄付をする先に条件があります。
(1) 寄付先として認められているところ
国、地方公共団体(市区町村等)、公益を目的とする事業を行う法定の法人のいずれかです。公益を目的とする事業を行う法定の法人とは、具体的には、ユニセフや日本赤十字など、特殊法人、社会福祉法人、公益財団法人など定められたものです。
(2) その他の要件
➀申告期限
申告期限までに寄付された財産のみが非課税の対象ですので、申告期限後に寄付しても相続税の対象となります。
②相続開始前3年以内の贈与財産等の扱い
非課税の対象となる財産は、相続又は遺贈により取得した財産のみであるため、相続開始前3年以内の贈与財産や、相続時精算課税制度により贈与を受けた財産を寄付したとしても非課税の対象にはなりません。
6.公共事業用財産
宗教、慈善、学術など公益目的の事業をおこなう人が、公益事業のために使う相続財産については相続税が課税されません。
例えば、相続人がお寺の土地を相続した場合や、児童養護施設を相続した場合、お寺の土地や児童養護施設には相続税が課税されません。ただし、財産を取得してから2年が経過しても公益事業に使っていない場合はさかのぼって相続税が課税されます。
7.心身障害者共済制度の給付金を受ける権利
地方公共団体の条例によって故人が心身障害者共済制度の給付金を受けており、その給付金を受ける権利を相続する場合、給付金を受ける権利には相続税が課税されません。
この共済制度は、条例において精神又は身体に障害のある者を扶養する者を加入者とし、その加入者が地方公共団体に掛金を納付し、(掛金は加入者の毎年の所得税の計算で所得控除されます)その地方公共団体が心身障害者の扶養の為の給付金を定期に支給することを定めている一定の制度で、受給者はその障害者又はその扶養者です。
8.個人経営の幼稚園事業等の財産
個人経営の幼稚園、盲学校、ろう学校、養護学校の財産で一定の要件を満たすものには相続税が課税されません。ただし、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園などを経営することが条件となります。
9.その他、実務上相続税がかからない財産
相続税法第12条と措置法70条で定められもの以外で、実務上の相続税がかからない財産(非課税財産)には次のようなものがあります。
①通り抜け私道
不特定多数の者の通行の用に供されている私道については、相続税の対象にはなりません。
②歩道状空地
集合住宅の敷地の一部が歩道状となっており、居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されているものについては、最高裁平成29年2月28日判決により、「30%評価」又は「評価ゼロ」とすることができるようになりました。
③借家権
借家権とは、建物を借りている人が所有している賃借権をいいます。例えば、被相続人が賃貸マンションに住んでいて亡くなった場合に、その借家権を評価する必要があるかどうかですが、その権利が権利金等の名称をもって取引される慣行のない地域にあるものについては評価しません。日本のほとんどの地域で借家権の取引慣行がないでしょうから、借家権は相続税の対象にはならないことがほとんどです。
④配偶者短期居住権
配偶者短期居住権とは、配偶者が住んでいた居住用建物の遺産分割が決まるまでの間(遺産分割が6カ月以内に決まった場合には6カ月)、その居住用建物に住み続けることができる権利をいいます。この配偶者短期居住権については相続税の評価の対象にはなりません。なお、短期ではない配偶者居住権は相続税の評価対象になります。
⑤未支給年金
年金を受け取っていた人が亡くなった場合に、その死亡後に振り込まれる年金を未支給年金といいますが、この未支給年金は相続税の対象ではなく相続人の所得税(一時所得)の対象となります。
⑥還付加算金
被相続人の準確定申告等で税金が還付されることがありますが、その還付税金に付帯して還付加算金が入金されることもあります。この還付加算金は、相続税の対象とはならずに相続人の所得税(雑所得)の対象となります。
⑦香典
香典は被相続人の財産ではないために相続税の対象にはなりません。また、香典返しについても相続財産からマイナスできません。
まとめ