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借地権の評価額とは
借地権の評価額とは
借地権は、特に相続の場合を中心に財産的価値があるために課税対象となります。借地権にはどのような種類があり、借地権はどのような税の対象となり、それぞれどのような税評価になるのかを知っておく必要があります。また、土地の利用権では相続税の対象とならないものもあります。これらの内容について紹介します。
目次
1. 借地権と税の評価とは
(1) 借地権とは
(2) 税の対象
(3) 借地権が相続税等の課税対象財産とされる理由
(4) 相続税法上の借地権には該当しない土地利用権
2. 借地権の種類
(1) 普通借地権
(2) 定期借地権
(3) 事業用定期借地権等
(4) 建物譲渡特約付借地権
(5) 一時使用目的の借地権
3. 借地権の評価額
(1) 普通借地権の評価額
(2) 定期借地権等の評価額
(3) 一時使用目的の借地権の評価額
まとめ
1.借地権と税の評価とは
(1) 借地権とは
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます。
*(借地借家法第2条一項) 。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
借地権は根拠とする法律によってその範囲を異にしますが、相続税法にいう借地権と借地借家法上の借地権とは基本的には同義となります。
(2) 税の対象
借地権は、相続税や贈与税の課税対象になります。
(3) 借地権が相続税等の課税対象財産とされる理由
借地権が相続税の課税対象財産とされる理由は「借地権には財産的価値が認められるため」ですが、この借地権の財産的価値は大きく次の➀から③までの3つから構成されています。
相続税の借地権評価においては、以下の➀の物権的価値と②の利用権的価値を基本とした評価となっていますが、一定の借地契約については③の経済的価値の考え方を反映して借地権価格を算出することとしています。
➀物権的価値(法的側面からの価値)
借地権の物権的価値とは、その土地を借地借家法の下において使用収益又は処分をすることができる権利としての価値をいいます。
借地借家法により保護される借地権は、建物が存続する限り半永久的に土地を使用収益することができ、また、地主の承諾若しくは裁判所の許可により、借地権を第三者に売却することができ、実質的に物権的な価値があります。
②利用権的価値(市場性の面からの価値)
借地権の利用権的価値とは、その土地に対する需要を基礎とした土地の利用価値をいいます。
例えば、駅近接の土地は、住宅や店舗などの多様な需要があり、土地を借りてでもその土地を利用したいという人が多く、利用することができること自体に価値があります。
③経済的価値(インセンティブ価値)
借地権の経済的価値とは、いわゆる賃料の「借り得」を基礎とした価値のことをいいます。この借り得とは、現在の支払地代とその地域における一般的な支払地代との差額のことをいいます。
(4) 相続税法上の借地権には該当しない土地利用権
次の土地利用権は相続税法上の借地権には該当しません。
➀無償による土地利用権
無償による利用は「使用貸借」に該当するため、借地借家法の適用がなく、したがって相続税法上の借地権に該当しません。
②固定資産税相当額の支払いによる土地利用権
固定資産税相当額の支払いによる賃借は、実質的に「使用貸借」に該当するため、借地借家法の適用がなく、相続税法上の借地権に該当しません。
③構築物の所有を目的とした借地権
構築物の所有を目的とした土地利用権は、借地借家法による保護がなく、相続税法上の借地権に該当しません。
④資材置き場としての土地利用権
資材置き場としての土地利用権は、借地借家法による保護がなく、相続税法上の借地権に該当しません。
⑤駐車場利用のための土地利用権
駐車場利用としての土地利用権は、借地借家法による保護がなく、相続税法上の借地権に該当しません。
ただし、車庫を建てるために土地を賃借しているような場合には、当該車庫の所有者にとっての土地利用権は「建物の所有を目的とした土地の賃借権」に該当するため、原則として相続税法上の借地権に該当します。
2.借地権の種類
借地権を契約期限などの内容で分けると、古くからある「旧借地権」と、現在の借地借家法で定められた「普通借地権」と「定期借地権」、および、「一時使用目的の借地権」があります。
旧借地権は、現在の借地借家法が制定される以前の法律が適用される借地権です。1992年7月31日までに契約が成立していたものは、旧借地権が適用されます。旧借地権は、堅固建物(コンクリートやレンガ造など)と非堅固建物(木造など)で契約の存続期間が別に定められています。
また、借地権の存続期間はあるものの、旧法は賃借人保護が重視されていたため、土地所有者の正当な理由が認められない場合は更新の拒絶はできないとされています。
以下、旧借地権を除き現状の借地権には、次のとおりのものがあります。
(1) 普通借地権(以下の(2)から(5)までを除くもの)
普通借地権とは、現法の借地借家法に定めのある借地権で、定期借地権などに該当しないものをいいます。存続期間は30年以上で、旧借地権と同じように契約の更新が可能です。更新は、1回目の更新は20年以上、2回目以降は10年以上で設定します。
正当な理由がない限り、土地所有者の一方的な契約解除はできません。ただし、建物の滅失等があった場合において賃借人が、土地所有者の承諾なしに契約期間を超過して存続するような建物を再建したり、火災や朽廃で建物が消失して土地を借りる必要がなくなったりしたときは、土地の所有者は契約解除を申し出ることができます。
(2) 定期借地権(借地借家法第22条)
(3) 事業用定期借地権等(借地借家法第23条)
(4) 建物譲渡特約付借地権(借地借家法第24条)
定期借地権は、旧法で指摘されていた所有者への土地の返還の問題を改め、土地所有者が安心して土地を貸せるように創設されました。一般の定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3つがあります。
(5) 一時使用目的の借地権(借地借家法第25条)
一時使用目的の借地権とは、工事の仮設事務所やプレハブ倉庫等で、一時的に土地を借りるものです。
3.借地権の評価額
(1) 普通借地権の評価額
借地権の価額は、借地権の目的となっている宅地が権利の付着していない「自用地」としての価額に借地権割合を乗じて求めます。
「自用地」とは、他人の権利の目的となっていない場合の土地で、いわゆる更地をいいます。
「借地権割合」は、自用地としての価額に対する借地権の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した借地権の価額の割合が、おおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める割合のことをいいます。国税庁の路線価図や評価倍率表に表示されています。
路線価図や評価倍率表は、国税庁ホームページで閲覧できます。
借地権の価額は次の計算式になります。
*普通借地権の評価額=自用地としての価額×借地権割合
(2) 定期借地権等の評価額
上記の(2)(3)(4)が該当します。
定期借地権の評価方法は複雑になります。原則として相続時に借りていた被相続人に帰属する経済的利益とその存続期間をもとにして評定した価格によって決まるとされています。
経済的利益は、適正地代と支払っている地代との差額で計算します。
*定期借地権の評価額=課税時期による自用地の評価額×(A/B)×(C/D)
A:定期借地権等の設定時における借地権者に帰属する経済的利益の総額
B:定期借地権等の設定時におけるその宅地の通常の取引価額
C:課税時期におけるその定期借地等の残存期間年数に応じる基準年利率による複利年金現価率
D:定期借地権等の設定期間年数に応じる基準年利率による複利年金現価率
*残存期間年数とは、定期借地権の期間のうち残っている年数
*基準年利率・複利年金原価率は国税庁ホームページより確認できます。
(3) 一時使用目的の借地権の評価額
一時使用のための借地権の価額は、通常の借地権の価額と同様にその借地権の所在する地域について定められた借地権割合を自用地としての価額に乗じて評価することは適当ではありませんので、雑種地の賃借権の評価方法と同じように評価します。
雑種地の賃借権の価額は、原則として、その賃貸借契約の内容、利用の状況等を勘案して、次のように評価することができます。
➀地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権
例えば、賃借権の登記がされているもの、設定の対価として権利金や一時金の支払のあるもの、堅固な構築物の所有を目的とするものなどが該当します。
*一時使用目的の借地権の評価額=雑種地の自用地としての価額×法定地上権割合と借地権割合とのいずれか低い割合
②➀以外の賃借権
*一時使用目的の借地権の評価額=雑種地の自用地としての価額×法定地上権割合×1/2
(注)法定地上権割合とは、その賃借権が地上権であるとした場合に適用される相続税法第23条に規定する割合をいいます。
*国税庁「借地権の評価」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4611.htm
まとめ